- ビジネス全般
名刺管理のセキュリティーとは?確認するべきポイントを徹底解説
公開日:
更新日:

名刺管理のデジタル化は、ビジネスの効率化に欠かせません。しかし、名刺には取引先の個人情報が含まれており、その取り扱いには十分な注意が必要です。本記事では、名刺管理におけるセキュリティーリスクと、安全なツール選択のポイントについて解説します。
名刺管理から始める営業DX
名刺管理のセキュリティーが重要な理由
DXが加速する昨今、企業における名刺管理のあり方は大きな転換点を迎えています。特に、ハイブリッドワークの普及により、従来の紙ベースの管理からデジタル管理への移行が急速に進んでいるのです。この変化に伴い、名刺情報の安全管理は、企業の重要課題として浮上してきました。以下の3点が名刺管理のセキュリティーが重要な主な理由です。
1.情報漏えい事故と企業リスクの増加
企業における名刺情報の漏えいは、単なる個人情報の流出以上の深刻な影響をもたらします。名刺データには、企業間の取引関係や組織体制といった機密性の高い情報が含まれており、その流出は営業活動に直接的な影響を与えるのです。
【名刺情報に含まれる機密情報の種類】
- 取引先キーパーソンの連絡先
- 部署・役職情報
- 社内の人事情報
- 組織体制情報
こうした機密性の高い情報が流出した場合、事業継続に関わる深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、取引先との信頼関係が損なわれることで、長期的な事業展開に支障をきたすリスクが高まるでしょう。
2.法規制強化への対応
2022年4月の個人情報保護法改正により、企業の名刺管理におけるセキュリティー対策は、法令遵守の観点からも重要性が増しています。
改正法で強化された要件 | 名刺管理における影響 |
---|---|
個人データの漏えい報告の義務化 | 事業者は個人データの漏えい等が発生した場合、個人情報保護委員会への報告が必要 |
保有個人データの開示方法の拡充 | 本人からの開示請求に対し、電磁的記録の提供が必要 |
外国企業への個人データ移転規制 | 海外拠点との名刺情報共有に制限 |
このような法規制の強化により、企業は名刺情報の取り扱いに関して、より厳格な管理体制の構築が求められています。特に、デジタル化された名刺データの管理については、技術的・組織的な安全管理措置の実装が不可欠と言えるでしょう。
3.スマートフォンの紛失の可能性
モバイルワークの普及により、スマートフォンでの名刺情報の取り扱いが一般化しています。これにより、端末紛失時の情報漏えいリスクが新たな課題となっているのです。
リスク区分 | セキュリティー要件 |
---|---|
データ保護 | 端末内の名刺データの暗号化 |
アクセス制御 | 生体認証等による端末ロック |
遠隔対策 | リモートワイプ機能の実装 |
このようなモバイル環境特有のリスクに対しては、技術的な対策に加えて、利用者への教育と明確な運用ルールの策定が重要となります。
名刺管理の方法別のメリット・デメリット

DXの進展に伴い、名刺管理の手法は大きく変化しています。従来の紙による管理からデジタル化への移行が進む中、セキュリティーの観点から各手法の特徴を正しく理解することが重要です。
以下の4つの方法と、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
1.アナログ名刺管理
従来型の紙の名刺をファイリングする方式は、サイバー攻撃のリスクがないという特徴があります。しかし、物理的な管理には固有の課題が存在してしまうのです。
管理項目 | 物理的な影響 | 必要な対策 |
---|---|---|
保管場所の安全性 | 自然災害による損失リスク | 耐火金庫での保管 |
情報の劣化 | 経年による視認性低下 | 定期的な点検と複製 |
アクセス管理 | 物理的な持ち出しリスク | 施錠管理と利用記録 |
多くの企業では「物理的な管理が安全」という認識のもと、重要取引先の名刺を紙で保管していますが、実際には情報共有の非効率さや災害時のリスクといった課題を抱えています。
2.無料名刺管理ツール
無料の名刺管理アプリケーションは、導入の手軽さから多くの企業で利用されていますが、セキュリティー面では重大な課題が存在します。
セキュリティー観点 | 想定されるリスク | 対策の可否 |
---|---|---|
データ保管場所 | サーバー所在地が不明確 | 制御不可能 |
アクセス権限 | 詳細な権限設定が不可能 | 一部制限のみ |
データバックアップ | 自動バックアップ体制が不明確 | 手動対応必要 |
このようなツールでは、特に重要な取引先の名刺情報を管理することは推奨されません。企業としての管理責任を果たすことが困難だからです。
3.名刺管理ツール
名刺管理ツールは、効率的なデジタル化を実現する一方で、セキュリティ対策のレベルはツールによって大きく異なります。企業の規模や取り扱う情報の重要度に応じて、適切なツールを選定することが重要です。
セキュリティ観点 | 確認すべきポイント | 選定時の注意点 |
---|---|---|
データ保管場所 | サーバーの所在地と管理体制 | 国内/海外の法規制対応 |
アクセス権限 | 権限設定の柔軟性 | 部門/役職に応じた制御 |
データバックアップ | バックアップ体制の確実性 | 復旧手順の明確さ |
ツール選定の際は、まず自社の情報セキュリティ要件を明確にしましょう。取引先の重要度や、社内のセキュリティポリシーに基づいて、必要な対策レベルを定義します。その上で、コストと機能のバランスを考慮しながら、要件に合致するツールを選択することが大切です。
4.名刺管理ツール以外のサービス
一般的なビジネスツールを名刺管理に転用するケースも多く見られます。しかし、この方法にも固有のリスクが存在します。
利用ツール | 主なセキュリティー課題 | 業務への影響 |
---|---|---|
Excel | ファイル共有に手間がかかる | 工数増大 |
スプレッドシート | アカウント乗っ取りによる全情報流出 | 取引先情報の流出 |
社内データベース | 柔軟な閲覧制限が困難 | 準備の手間 |
これらのツールを利用している企業は多いです。しかし、それぞれ固有の問題を抱えており、業務への支障が考えられます。
5.個人所有デバイスでの管理における問題
個人所有デバイス環境下での名刺情報の管理は、特に慎重な対応が必要です。
リスク要因 | 発生しうる問題 | 対策の方向性 |
---|---|---|
私物端末の紛失 | 企業情報の流出 | データの暗号化必須 |
退職時の情報移管 | データの持ち出し | アクセス権限の厳格管理 |
個人アプリとの混在 | セキュリティーレベルの低下 | 業務用領域の分離 |
費用面の問題から、個人所有のデバイスで名刺管理を行っている企業も多くあるでしょう。しかし、それは上記のリスクがあり推奨されません。他社の重要情報を持っている状態であることを意識し、適切なツール導入を検討してください。
セキュリティーが担保された名刺管理の方法

企業における名刺管理のセキュリティー対策は、システム・運用・体制の三位一体での取り組みが不可欠です。ここでは、実務担当者が具体的に取り組むべき対策について解説していきます。
クラウド型名刺管理システムの活用
名刺管理をクラウドシステムで実現する場合、セキュリティー面で重要となるのが、データの保管場所とアクセス制御の問題です。
クラウドシステムは、データの一元管理と統合的なセキュリティー対策を実現しますが、サービスによって提供される機能や対策レベルは異なります。システムの選定時には、以下のような点の確認が必要です。
セキュリティ要件 | 確認すべきポイント |
---|---|
データ保管場所 |
|
アクセス権限 |
|
バックアップ体制 |
|
監査対応 |
|
システムの選定時には、データセンターの所在地や認証基盤との連携など、自社のセキュリティ要件との適合性を慎重に確認することが重要です。
社内ルールの整備
セキュリティー対策の実効性を高めるには、明確な社内ルールの整備が不可欠です。特に重要となるのが、名刺情報の取り扱いに関する具体的な指針の策定です。
規定項目 | 整備すべき内容 | 想定される課題 | 対応方針 |
---|---|---|---|
データ更新プロセス | 更新頻度と確認体制 | 鮮度維持の困難さ | 定期的な棚卸しの実施 |
アクセス権限管理 | 部門別・役職別の設定 | 人事異動時の更新漏れ | 人事システムとの連携 |
インシデント対応 | 報告・対応フロー | 初動対応の遅延 | 対応手順の文書化 |
実際の運用では、これらのルールを形骸化させないことが重要です。定期的な監査や従業員教育を通じて、ルールの実効性を維持していく必要があります。特に、情報セキュリティー部門と法務部門が連携し、最新の法令動向も踏まえたルールの見直しを行うことが必要でしょう。
運用体制の構築
セキュリティー対策の実効性を担保するには、適切な運用体制の構築が不可欠です。具体的には、管理者と利用者の役割を明確化し、日常的な運用から緊急時の対応まで、包括的な体制を整える必要があります。
役割 | 責任範囲 | 必要なスキル | 主な業務内容 |
---|---|---|---|
システム管理者 | 基盤運用全般 | ITインフラ知識 | アクセス権限管理・監査ログ確認 |
情報管理責任者 | セキュリティー監督 | リスク管理能力 | インシデント対応・ポリシー策定 |
部門管理者 | 現場での運用管理 | マネジメント力 | 利用状況確認・教育実施 |
このように責任の所在をしっかりと決めておくことが、セキュリティー対策を実施する際に重要です。
有料の名刺管理ツールに搭載されている主なセキュリティー機能

名刺管理のデジタル化普及に伴い、セキュリティー機能の重要性はますます高まっています。有料の名刺管理ツールには、企業のセキュリティー要件に応えるさまざまな機能が実装されています。以下の機能を正しく理解し、活用することで、より安全な名刺情報の管理が実現できます。
アクセス制御と認証
システムへのアクセス制御は、情報セキュリティーの基本です。特に名刺管理においては、取引先情報という機密性の高いデータを扱うため、より厳格な制御が求められます。
機能分類 | 実装内容 | 運用における効果 | 注意すべきポイント |
---|---|---|---|
多要素認証 | パスワード+生体認証・ワンタイムパスワードなど | 不正アクセスの防止 | 利用者の運用負荷 |
シングルサインオン | 社内認証基盤との連携 | アカウント管理の効率化 | 認証基盤の信頼性 |
IPアドレス制限 | アクセス元の制限 | 社外からの不正アクセス防止 | リモートワーク対応 |
多要素認証の導入は、セキュリティー強化の基本となります。特に、スマートフォンでの利用が一般的な名刺管理ツールでは、生体認証との組み合わせが有効でしょう。また、シングルサインオンの導入により、パスワード管理の負荷を軽減しつつ、セキュリティーレベルを維持することが可能です。
データ保護対策
名刺情報の保護には、保管時と通信時の両面での対策が必要です。特に、クラウドサービスを利用する場合、データの暗号化は必須の要件となります。
保護レベル | 技術要件 | 実務上の影響 | 導入時の考慮点 |
---|---|---|---|
通信経路の保護 | TLS1.3による暗号化など | 通信速度への影響小 | 証明書の管理 |
保管データの保護 | AES-256による暗号化など | バックアップ時の負荷 | 鍵管理の重要性 |
端末内データの保護 | コンテナ化による分離など | オフライン利用制限 | 使用感の浸透 |
データの暗号化に加えて、重要なのがバックアップ体制の整備です。地理的に分散された複数のデータセンターでの管理により、災害時のデータ保全が可能となります。
監査とログ管理
セキュリティーインシデントの早期発見と、事後の原因分析のためには、適切なログ管理が不可欠です。
監査項目 | 記録内容 | 活用方法 |
---|---|---|
アクセスログ | ユーザー・時刻・操作内容 | 不正アクセスの検知 |
操作ログ | データの参照・更新履歴 | 情報漏えいの追跡 |
エクスポートログ | データ出力の記録 | 持ち出し状況の把握 |
これらのログ情報は、定期的な監査において重要な判断材料です。特に、大量のデータアクセスや、通常とは異なる時間帯のアクセスなど、不審な動作を検知するための基礎データとして活用されます。
安全な名刺管理ツールを選ぶポイント

名刺管理ツールの選定は、企業のセキュリティー体制を左右する重要な意思決定です。特に、デジタル化が進む現代においては、運営企業の信頼性やサービスの継続性、セキュリティー対策の実効性など、多角的な評価が必要となります。以下の3つの要素を参考にしましょう。
1.運営会社の概要や評判
名刺管理ツールの信頼性は、運営企業の実績と直結します。特に、機密性の高い企業情報を預けることになるため、運営企業の事業継続性や情報管理体制の評価が重要です。
評価項目 | 確認ポイント | 判断基準 | 確認方法 |
---|---|---|---|
事業基盤 | 資本金・従業員数 | 安定した経営規模 | 公式サイト |
セキュリティー体制 | 第三者認証取得状況 | ISMAP取得 | 公式サイト・公開情報 |
開発体制 | エンジニアの質 | 自社開発の有無 | 採用情報・企業情報 |
サポート品質 | 対応時間・方法 | 24時間365日体制 | サービス仕様の確認 |
特に重要なのが、インシデント発生時の対応力です。過去のインシデント対応実績や、事業内容なども、選定の重要な判断材料となります。
2.導入実績
同業他社での導入実績は、サービスを選ぶ上での重要な判断材料となります。「同じような事業を展開している企業で活用されているなら、自社でも使えそうだ」という判断は、極めて現実的なアプローチだからです。
特に注目したいのは、業界ごとの特性に合わせた活用方法です。例えば営業部門が多い企業での情報共有の手法や、製造業での技術部門との連携方法など、同業他社の活用実績を参考にすることで、自社での具体的な運用イメージを描きやすくなります。
ツール選定時は、ベンダーのウェブサイトや公開資料で、業界別の導入事例を確認することをお勧めします。具体的な活用シーンや得られた効果を知ることで、自社での導入検討がより具体的になるはずです。
3.プライバシーマークの有無
個人情報保護への取り組みを示すプライバシーマークの取得は、名刺管理ツールを提供する企業にとって必須の要件です。
認証区分 | 審査のポイント | 企業における意義 | 更新要件 |
---|---|---|---|
Pマーク | 個人情報保護体制 | 信頼性の証明 | 2年ごとの更新 |
ISMS | 情報セキュリティー管理 | 運用品質の保証 | 3年ごとの更新 |
SOC2 | 内部統制の有効性 | グローバル展開時の要件 | 年次監査 |
これらの認証は、定期的な更新審査が必要となるため、企業の継続的な取り組みを評価する指標としても有効です。
まとめ
名刺管理のセキュリティー対策は、もはや一部の大企業だけの課題ではありません。デジタル化が進む現代において、適切なツールの選定と運用体制の整備は、すべての企業にとって重要な経営課題となっています。
Sansanは、政府機関のセキュリティー評価制度であるISMAPへも対応しており、高度なセキュリティー機能を備えています。
安全管理に徹底した名刺管理ツールをご検討されている方は、ぜひSansanをご検討ください。

3分でわかる Sansan
営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。

ライター
営業DX Handbook 編集部