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データクレンジングとは?必要な理由や手法、注意点をわかりやすく解説
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近年のビジネスシーンでは、顧客情報をはじめとするさまざまなデータを積極的に活用することが求められています。特に、営業活動やマーケティング活動の成果を最大化するためには、精度の高いデータ分析が欠かせません。
しかし、データの誤入力や重複などで正確なデータ分析が行われない場合、顧客へ適切な提案ができないことや、業務効率の低下を引き起こす懸念があります。
そのため、企業はデータの品質管理に注意を払い、定期的なデータクレンジングや品質チェックを実施し、データの信頼性を確保する必要があります。
本記事では、データクレンジングの概要や必要性、具体的な手法と進め方、データクレンジングを行う際の注意点について詳しく解説します。
データクレンジングとは
まずは、データクレンジングの基礎を確認しておきましょう。ここでは、データクレンジングの意味や目的、具体例、類似する言葉との違いを詳しく解説します。
データクレンジングの意味・目的
データクレンジングとは、データベースやデータセット内における不正確・不完全・不適切なデータを識別し、修正または削除するプロセスを意味します。「データベース」とは特定の規則に基づき整理され、検索や蓄積を容易にできるようにした情報の集まりであり、「データセット」は特定の目的で収集されたデータの集合体を指します。
データクレンジングの目的は、データセットから未入力や誤入力、重複といった不備を修正し、データの正確性と一貫性を向上させることです。
誤ったデータが含まれていたり情報が不足したりすると、分析結果が不正確になり、ビジネス判断の精度が低下する恐れがあるため、適切なデータクレンジングを実施する必要があります。
データクレンジングの具体例
データクレンジングには、以下のような作業が含まれます。
- データの型やフォーマットの不揃いの修正
- データ不足や重複の修正
データクレンジングの具体例として、仮の顧客情報リストを見てみましょう。
【データクレンジング実施前のデータ】
【修正点】
- 「(株)」と「株式会社」の不統一
- 番地の漢字とハイフンの混在
- 半角と全角の混在
- ハイフンの有無
- 市外局番の有無
- 氏名のスペースの有無
- 氏名の漢字・ローマ字表記の不統一
【データクレンジング実施後のデータ】
データクレンジングを実施することで、分析に適した形にデータを整えることが可能です。データ分析の前段階や、データを格納する前の準備作業として有用です。
データクリーニングとの違い
データクリーニングはデータクレンジングと同義で用いられることが多く、どちらも「データをきれいにする」ことを目的としています。
「クレンジング(cleansing)」には「洗浄」、「クリーニング(cleaning)」には「掃除」という意味がありますが、データ処理の文脈ではほぼ同じ意味で使われます。また、
「データスクラビング(data scrubbing)」もこれらと同義で使用されることがあります。
名寄せとの違い
「名寄せ」は、データベース内の情報から名前・住所・電話番号などの情報を使用して同一人物や企業を特定し、重複しているデータを一つにまとめる作業です。同一のIDを付与することで、データを統合し、分散している顧客情報をまとめることが可能です。
例えば、各部署のデータベースに同一の顧客情報が登録されている場合であっても、名寄せを実施することで、重複したアプローチ(EメールやDMの送付など)を避けられます。
一方で、データクレンジングは不正確なデータや重複を修正・削除することに加えて、データの一貫性や正確性を確保するための、前処理作業も含む点に違いがあります。データクレンジングは、名寄せ作業を含むより広範なデータ整理プロセスであるといえます。
データクレンジングが必要な理由
データクレンジングは、正確で信頼性の高いデータ分析を実現し、ビジネスの効率化と成長を支える不可欠なプロセスです。ここでは、データクレンジングが必要な理由を詳しく見ていきましょう。
データの品質や精度が向上する
データクレンジングの役割は、入力ミスを修正するだけにとどまりません。異なる部署で使用される複数のデータ形式を統一し、社内のデータの定義を一貫させることで、データの品質と精度を向上させることが可能です。
これにより、大規模なデータ分析や高精度な分析を実現できます。くわえて、マーケティング活動で活用できるデータ量も増え、営業活動やマーケティング活動の最適化につながります。
マーケティングで使うデータは、そもそもデータクレンジングを行わないと活用できないケースも少なくありません。例えば、メールの配信対象が実際のデータ量に対して少なくなってしまう、といったことが起こりがちです。
データクレンジングによりデータの品質を高めることは、意思決定の精度の向上やビジネスチャンスの拡大につながり、競争力の強化にも貢献するといえます。
業務効率化につながる
データの重複や表記ゆれを手入力で都度修正する作業には、手間と時間がかかります。データクレンジングによってデータを常に整理・統合しておくことで、データ修正に費やしていた時間を削減し、人件費の節約や生産性の向上が期待できます。
業務効率化を果たすことで、従業員の働きやすさを向上させ、企業全体のパフォーマンス向上にも寄与します。
データ管理にかかるコストの削減
データ管理にはデータベースの運用コストがかかりますが、不備のあるデータが増えると、それだけサーバー容量が無駄に消費され、管理コストが増大します。
データクレンジングを通じて不要なデータを削除することで、サーバーの負担が軽減され、データ管理コストの削減が期待できます。効率的なデータ管理は、長期的な視点で企業の運用コスト削減に貢献するでしょう。
顧客満足度や企業としての信頼性が向上する
誤ったデータに基づく顧客への提案やサービス提供は、顧客満足度を下げる原因となります。特に、顧客情報や個人情報を不適切に取り扱った場合、企業の社会的信頼を損ないかねません。
データクレンジングを通じて、データの正確性を維持することで、顧客からの信頼を築き、企業のブランド価値を高めることにもつながるでしょう。信頼性の高いデータ管理は、顧客満足度の向上と直結し、長期的な顧客関係の構築に貢献すると考えられます。
データクレンジングの手法・進め方
データクレンジングを効果的に進めるためには、正しい手順を踏むことが必要です。ここでは、データクレンジングを行う際の4つのステップを紹介します。
Step1. データ活用の目的や必要なデータ品質を決める
データクレンジングを始める前に、まずはデータ分析の目的と具体的なユースケースを、明確に定義することが重要です。これにより、どのデータが分析に必要であり、どのレベルのデータ品質が求められるかを特定できます。
目的以上の高いデータ品質を求めすぎると、不要な部分までデータクレンジングを行うことになり、無駄な工数や費用が発生する恐れがあります。目的に応じたデータ品質を設定することでコスト削減につながります。
Step2. 必要なデータを選定・収集する
次に、分析目的に合わせて必要なデータの選定・収集を行います。このステップでは、データエンジニアが主導し、社内のデータベースから直接データを収集します。必要に応じて複数のデータベースや部署に分散しているデータを一元化しましょう。
例えば、マーケティングや商品開発に役立てるために顧客情報とアンケート結果を活用したい場合は、購入履歴や顧客情報、アンケート結果など、業務目的に適したデータを取り込むことが重要です。
データクレンジングに取りかかる前にデータを集約することで、データ間の相関関係を確認しやすくなり、後続のクレンジング作業を効率化できます。
Step3. クレンジングを実行する
データ収集の完了後、クレンジング作業を実施します。クレンジングでは、表記ゆれ(半角/全角、日本語/英語など)の修正、重複データの統一、誤ったデータの削除や修正、不足しているデータの追加などを行います。
Step4. データを整理する
クレンジングされたデータは、最終的な目的に応じて整理します。抽出したデータは、活用の目的に適した形で整理やリスト化を行います。
これにより、営業活動やマーケティング活動などでデータを活用できるようになります。
データクレンジングを行う際の注意点
データクレンジングの効果を最大化し、継続的なデータ品質の向上を図るためには、いくつかの注意点があります。これらの注意点を踏まえることで、データクレンジングのプロセスをより効率的かつ効果的に実施することが可能です。
ここでは、データクレンジングを行う際の主要な注意点について解説します。
クレンジングの運用を仕組み化する
データクレンジングの効率的な運用には、クレンジング基準のルール化やプロセスの標準化が必要です。運用を仕組み化することで、クレンジング作業の属人化を防ぎ、新たなデータ追加の際にも一貫した品質で修正を行うことができます。
また、プロセスを標準化することで、クレンジング作業の透明性と再現性の確保にもつながります。
データクレンジングに特化したツールで自動化する
データクレンジングの作業工数を削減し、精度を向上させるためには、データクレンジングに特化したツールを利用して作業を自動化することがおすすめです。特に、AIが搭載されたデータクレンジングツールを活用することで、機械学習による自動化が実現できます。
ただし、ツールの設定ミスにより意図しないクレンジング結果が生じる可能性もあるため、適切なツール選択と正確な設定が求められます。
定期的に実行し分析を行う
企業のデータは日々変化しており、新たな不備が生じる可能性があるため、定期的なクレンジングと品質チェックが不可欠です。そのため、データクレンジングは一度きりの作業ではなく、定期的に実施しデータ品質を維持する必要があります。
定期的なデータの更新や変更点の確認、クレンジングプロセスの改善などを行うことで、データ品質の持続的な向上を図ることが可能です。
まとめ
本記事では、データクレンジングの必要性や手法、データクレンジングを実施する際の注意点について解説しました。データクレンジングにはデータ品質を向上させる役割があり、正確なデータ分析とビジネス上の意思決定のために、欠かせないプロセスといえます。
データクレンジングを効果的に進めるには、適切な手順を踏むことに加え、クレンジングの仕組み化や適切なツール導入が欠かせません。
「Sansan Data Hub」は、顧客データの自動クレンジングによって登録された顧客データを整理・統合できるのはもちろん、法人番号の付記や帝国データバンクの企業情報の自動付与、役職ランク・部署分類といった人物の属性情報の付与など、単にデータを整理・統合できるだけでなく、顧客情報を進化させるあらゆる機能が搭載されています。
また、CRM・SFA、MAツールとも連携できるため、社内に蓄積されたあらゆるデータを連携・活用し、最新の顧客データベースを構築できます。
データドリブンなマーケティング活動をサポートするSansan Data Hubを、ぜひご活用ください。
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ライター
営業DX Handbook 編集部