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DX戦略の進め方とは?役立つフレームワークと3つの成功ポイントを解説
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DXの重要性は理解していても、「具体的に何から着手すべきか」「どのように進めればよいのか」に悩む企業は少なくありません。DXによって組織に効果的な変革を起こすには、事前の戦略設計が重要です。本記事では、DX戦略の進め方と便利なフレームワーク、成功ポイントなどをわかりやすく解説します。
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DX戦略とは
DX戦略とは、デジタル技術やデータを活用し、企業のビジネスモデルや価値提供の仕組みを抜本的に見直す中長期的な戦略です。
近年のDX推進においては、従来の事業運営では対応しきれない市場変化や顧客ニーズへの柔軟な対応が求められています。
こうした背景のもと、DX戦略は新たな事業機会の創出や顧客体験の向上、変化への対応力の強化といった競争力の確保を目的としています。
また、DX戦略は単独で成り立つものではなく、企業の経営戦略と一体となって設計されなければなりません。
経営層の意思と現場を連携させるためにも、全社横断的な取り組みとして推進体制を整備し、継続的な変革を支える基盤を構築することが重要です。
DX戦略の重要性
DXの効果を最大化するためには、事前に戦略を策定し、明確な方向性を示すことが欠かせません。
担当部門やプロジェクト単位で進めるだけでは限界があり、企業全体としての意思統一と組織的な推進体制が求められます。戦略を持たずにツールやシステムを導入してしまうと、投資対効果(ROI)が不明瞭になり、経営層の理解を得にくくなるほか、予算確保にも支障が出る可能性があります。
そのため、DXに取り組む際は、まずどのような変化を起こしたいのかを明文化し、全社に共有する、といった対策が必要になります。
具体的なビジョンと戦略を持ち、関係者が同じ方向に向かってDXを推進するための土台を整えましょう。
DX戦略とIT戦略の違い
DX戦略とIT戦略は混同されがちですが、その目的やスコープ(対象範囲)には明確な違いがあります。
IT戦略は、既存の業務プロセスやシステムを対象に、効率化や最適化を図ることを主な目的とした施策です。
業務フローの自動化やシステム導入による業務改善など、現状の延長線上での改善に位置づけられます。
一方で、DX戦略はより根本的な企業変革を目的とする取り組みです。
データやデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや顧客価値の提供方法そのものを再設計し、変化の激しい環境に柔軟に対応できる企業体制を構築することを目指します。単なるIT化にとどまらず、新たな価値の創出や収益源の確保といった経営レベルの課題解決が主な目的です。
そして両者は相互補完的な関係にあります。
たとえば、「業務の効率化」はIT戦略の役割、「顧客データを活用した新サービス展開」はDX戦略の領域といえます。
IT戦略で築いた効率的な業務基盤を土台にしつつ、DX戦略によって企業の将来像を描くことで、持続的な競争優位の実現につながります。
DX戦略の進め方7ステップ

DXを着実に推進するには、計画的なステップを踏むことが欠かせません。場当たり的な施策ではなく、組織全体で共通のゴールに向かうための枠組みとして、DX戦略の全体像をあらかじめ設計しておく必要があります。
以下で、DX戦略を進めていくための7つのステップを紹介します。
1.ビジョンとゴールを明確にする
DX推進の第一歩は、経営層主導でDXに関する明確なビジョンとゴールを設定することです。
たとえば「3年後にデジタル経由の売り上げを現状比20%アップ」「2年以内に業務プロセスの50%をデジタル化する」など、達成基準を明確にしましょう。経営層が方向性を明確に示すことで、組織全体の納得感を生み出します。
ゴールが曖昧なままでは、途中で頓挫するリスクが高まるため、必ず具体的かつ計測可能な目標を設定しましょう。
2.現状の把握と課題の抽出
次に、DX推進の土台となる現状分析を行います。
「既存システムが老朽化し、データ連携が不十分」「業務プロセスが複雑化、属人化している」など、具体的な課題を部門別に整理することが大切です。
たとえば、現場担当者へのヒアリングやアンケートを実施すると、現場が感じている課題をより正確に抽出できます。経営層が認識している課題と現場が感じている課題のギャップを明確に把握し、調整することが重要になります。
3.外部環境と市場動向を分析する
DX戦略を検討する際、社内の課題分析だけでなく外部環境の把握も並行して進める必要があります。
具体的には「PEST分析(政治・経済・社会・技術)」「3C分析(顧客・競合・自社)」などのフレームワークを活用します。
たとえば、競合企業がどのようなデジタル戦略で市場を獲得しているのか、顧客のデジタル化への期待や利用状況がどう変化しているのかなど、具体的な情報収集を行います。外部環境を正しく読み解くことで、自社のDXが的外れな施策になるリスクを回避し、市場に受け入れられる価値設計が可能になります。
4.改革方針と重点施策を策定する
これまでの分析結果をもとに、具体的なDX戦略を策定します。
戦略には以下のような要素を明記しましょう。
- 対象とする業務プロセス
- 導入する技術やツール
- 必要な人材や予算
- 実施期間
- 期待される効果(ROI)
たとえば「顧客サポート業務をチャットボットで自動化し、顧客対応の効率を30%向上させる」「営業活動にCRMを導入し、商談成約率を10%向上させる」といった、具体的かつ明快な計画を立てることが大切です。
明確な戦略が策定できれば、計画を評価する際もスムーズに行えます。
5.推進体制と役割分担を整備する
戦略を実現するには、それを推進するための体制づくりが不可欠です。
DX推進専任のチームを立ち上げ、役割と責任を明確にすることで、プロジェクトの停滞を防ぎ、意思決定と実行をスムーズに進められるようになります。
このとき、経営層が積極的に関与することが、組織全体の納得感やスピード感につながります。現場部門との連携も重視し、トップダウンとボトムアップの両方を活用した推進体制を築くことも大切です。
自社にない知見や技術が必要な場合は、外部の専門家やパートナー企業と連携する選択肢も検討しましょう。内製と外部パートナーとの協業を適切に組み合わせることで、実行可能性を高められます。
6.実行計画を策定しロードマップを描く
戦略と施策が決まったら、次は実行フェーズへの具体的な落とし込みが必要です。
ここでは、各施策をアクションプランに分解し、実行スケジュールや担当部門、必要リソースを明確にしていきます。
また、KPIやマイルストーンを設定しておくと、進捗状況の把握と成果の可視化が可能になります。定期的なモニタリングにより、計画と現実のズレを早期に発見し、柔軟に軌道修正できるよう備えることも大切です。
ロードマップは長期にわたる計画であるほど、一定の柔軟性を持たせる必要があります。市場環境や組織の変化に応じて、実行内容や順序を見直せる設計とすることで、変化への対応力を確保できます。
7.実行・評価・改善を継続する
DXは一度実行して終わりではなく、継続的な改善が求められる取り組みです。
PDCAサイクルを組み込み、施策ごとに実行結果を評価し、必要に応じて方針や内容の見直しを行いましょう。施策の成果だけでなく、成功要因やつまずいたポイントも丁寧に振り返ることで、次の改善に生かせます。こうした学びの積み重ねが、組織全体の変革力を高める土台となるでしょう。
また、変化のスピードが速い市場環境においては、計画の柔軟なアップデートも不可欠です。
「DXは常に進行中のプロセスである」という意識を社内全体に浸透させ、変革を日常の一部として捉える文化を育てていくことが重要です。
DX戦略に役立つフレームワーク

DX戦略を策定する際は、感覚的な判断ではなく論理的かつ網羅的に現状と方向性を整理することが求められます。
そこで有効なのが、各種のビジネスフレームワークです。
フレームワークを上手に活用することで、戦略設計に必要な情報を体系的に整理し、意思決定の精度を高めることができます。
以下では、DX戦略の立案や見直しに活用できる代表的な4つのフレームワークを紹介します。
DXフレームワーク
経済産業省が公表した「DXレポート2」では、企業のDX推進を体系的に捉えるためのフレームワークが提示されています。
このフレームワークでは、DXの取組領域を以下の6つに分類しています。
- 製品・サービス
- プラットフォーム
- ビジネスモデル
- 業務プロセス
- DX推進体制
- 顧客接点
これらの領域ごとに、「デジタイゼーション(アナログ情報のデジタル化)」「デジタライゼーション(業務プロセスのデジタル活用)」「デジタルトランスフォーメーション(企業変革)」という3段階の進化レベルで整理されています。
企業はこのフレームワークを用いて、自社が今どの段階にあり、どこを目指すべきかを可視化することが可能です。
また、あるべき姿から逆算して、重点的に取り組むべき領域やアクションを具体化する際の指針としても活用できます。
SWOT分析

SWOT分析は、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を整理する基本的なフレームワークです。
内部環境と外部環境の両面から情報を洗い出すことで、DX推進の前提となる現状理解を深められるでしょう。DX戦略においては、自社のデジタル人材の有無、既存のIT資産、データ活用力といった内的要素を「強み・弱み」として整理します。
同時に、業界全体のデジタル化動向や規制変化、競合の取り組みなどを「機会・脅威」として捉えることで、リスクとチャンスを定量的に把握できます。
戦略立案の初期段階でSWOTを活用することで、重点的に取り組むべきテーマや、投資リソースの最適な配分方針を明確にできるでしょう。
3C分析

3C分析は、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から市場環境を分析する手法です。
マーケティング戦略でよく用いられますが、DX戦略の設計にも応用できます。
顧客については、現在の期待や行動の変化、新たな価値へのニーズを探ります。競合については、同業他社がどのようなDXを進めているか、先行事例や失敗事例を参考にすることが重要です。
自社については、現時点での技術基盤や業務課題を洗い出し、他社と比べた際の優位性や改善ポイントを整理します。
このように3つの視点を組み合わせて分析することで、自社が差別化を図るべき分野や、DX投資の優先エリアを見極めることができます。
PEST分析

PEST分析は、「政治(Political)」「経済(Economic)」「社会(Social)」「技術(Technological)」の4つのマクロ環境要因を整理する手法です。
企業の外部環境を構造的に理解し、将来起こり得る変化への対応力を高める目的で活用されます。
DX推進においては、たとえば以下のような観点があげられます。
- 政治:DX関連の政策や規制動向(例:インボイス制度、電子帳簿保存法)
- 経済:景気や業界の成長性、投資環境
- 社会:消費者行動の変化、リモートワークの定着
- 技術:AI、クラウド、IoTなど新技術の普及状況
これらを体系的に整理することで、変化に柔軟に対応できるDX戦略の構築が可能です。
中長期的な視点で技術投資や組織体制の見直しを行う際にも、PEST分析は有効な判断材料となります。
DX戦略を成功させる3つのポイント

DX戦略を立てるだけでは変革は進みません。実行フェーズでの推進力や柔軟性、顧客との接点に根ざした視点があってこそ、成果につながるDXが実現します。
ここでは、DXを成功に導くうえで特に重要な3つのポイントを紹介します。
1.DX戦略チームを立ち上げる
DXを社内に定着させるには、戦略の立案から実行までを担う専門チームの設置が不可欠です。専任のDX推進チームは、経営層と現場の中間に立ち、戦略を具体的な業務へと橋渡しする役割を果たします。
経営戦略に精通した人材に加えて、デジタル技術や業務オペレーションに詳しいメンバーを配置することで、多角的な視点からの議論と意思決定が可能になります。
DXは単なる業務効率化に留まらず、経営戦略・業務プロセス・組織文化を横断的に変革するのが特徴です。そのため、一元的に推進・調整する専門チームの存在がDX成功の鍵となります。
また、部門間で情報が共有され、連携が生まれる体制づくりも重要です。
特定部門に閉じた取り組みではなく、組織全体を巻き込む体制こそが、DXを一過性の施策ではなく継続的な企業活動へと昇華させる基盤になります。
2.段階的にDXを進めていく
DXは一気に完了するものではなく、段階的に進めていくのが現実的かつ効果的です。
すべての業務を一度に変えようとすると、現場の負担や抵抗が大きくなり、定着に失敗する可能性が高まります。まずは、優先度と効果が高い領域から着手し、スモールスタートで進めるのが有効です。小規模でも成果が可視化されれば、社内の理解と協力が得やすくなり、DXの取り組みを組織全体に広げやすくなります。
また、実行中も常に改善の余地を探り、柔軟に方向性を見直す姿勢が不可欠です。
計画に固執せず、変化に応じて進化し続けるマインドセットが成功への近道となります。
3.戦略に顧客ニーズを取り入れる
DX戦略は企業内部の効率化にとどまらず、顧客にとっての価値向上を実現するためのものでもあります。社内都合だけで構想された戦略は、期待された成果につながりにくく、実行段階での課題も多くなってしまうでしょう。
そのため、顧客の声やニーズを起点にDXの方向性を設計することが欠かせません。
たとえば、サービス利用時の課題や要望をデータとして蓄積・分析することで、業務改善や新サービス創出のヒントが得られます。
こうした顧客視点を戦略全体に組み込むことで、企業の競争力は一段と高まります。顧客体験価値を向上させる意識を持ちながら取り組むことが、持続的な成長を支えるDX戦略の実現につながります。
まとめ
DXを成功させるには、単にデジタル技術を導入するのではなく、企業のビジネスモデルや価値提供のあり方を見直し、全社で変革を進めていくことが重要です。
そのためには、ビジョンの明確化、現状把握、外部環境の分析、重点施策の策定といった段階的なアプローチが求められます。
また、DXを実行段階で定着させるためには、専任チームの設置や段階的な推進、顧客視点を組み込むなどといった工夫も必要です。環境変化に柔軟に対応しながら、継続的に改善していく姿勢が、戦略の実効性を高めます。
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ライター
営業DX Handbook 編集部
