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人材育成でよくある課題とは?具体的な解決策とあわせて解説

人材育成でよくある課題とは?具体的な解決策とあわせて解説

人材育成は、企業の経営目標を達成し、業績を上げるために欠かせません。

しかし、「部下の成長が思うように進まない」「現在の育成方法に自信がない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、人材育成におけるよくある課題とその解決策をわかりやすく解説します。

組織全体の営業力強化を後押しする

人材育成とは

人材育成とは、企業の発展や経営目標の達成を目的に、企業に貢献できる人材を育成するプロセスです。個人のスキルや知識を向上させることによって、組織全体のパフォーマンスや競争力を高め、業績の向上につながります。

人材育成が必要とされる背景

人材育成が必要とされる背景には、経済や社会の変化が大きく影響しています。具体的な理由は以下の通りです。

人的資本に関する情報開示の義務化

人的資本とは、人材の能力や資格などを資本として扱うことを指します。近年、企業による人材育成や管理に関する情報を開示する動きが盛んになっており、令和5年3月期以降の有価証券報告書では、人的資本開示の義務化が決定されました。

人的資本の開示対象となるのは、有価証券を発行している企業のうち、大手企業に該当する約4,000社です。対象企業は、次の情報について開示しなければなりません。

  • 従業員の状況(人材投資費用、従業員満足度、採用人数や離職率、労働環境など)
  • 男女間賃金格差
  • 男性の育児休業取得率
  • 女性管理職比率

このような情報を開示することで、ステークホルダーは企業の将来性を評価します。

ステークホルダーからの信頼性を高めるためにも、人材育成へ注力することが欠かせません。

少子高齢化による人手不足

少子高齢化によって労働力人口が減少しており、人手不足が生じています。その結果、従業員一人当たりの業務量が増加しているため、企業は人材一人ひとりの生産性向上に努める必要があることから、人材育成が必要とされています。

競争力の源泉の確保

企業が競争力の源泉を確保するためにも、優れた人材を育成する必要があります。テクノロジーが進化していくにつれ、製品やサービス自体での差別化は難しくなっており、優れたスキルを持つ人材が競争力の鍵となるためです。

他社との差をつけるアイデアを生み出すためにも、人材育成が求められています。

優秀な人材の流出防止

優秀な人材の流出防止は、組織の発展にとって重要な課題です。人材流出は、組織の知的資産や経験の喪失を意味し、長期的な成長を妨げるリスクも少なくありません。

人材流出を防ぐためには、人材育成によって個人の成長やスキルアップの機会を提供し、組織へのエンゲージメントを高めることが求められるでしょう。

キャリア観の多様化

近年では、これまでの終身雇用・年功序列といった働き方は昔ほど多くなく、キャリア観は多様化しています。企業は、個々の価値観やニーズに応じた社員教育を提供し、従業員満足度を高める必要があるでしょう。

人材育成を重視する理由と目的

企業にとって人材育成が重要な理由・目的は、次の4点にまとめられます。

  • 経営戦略の達成:企業のビジョンや経営目標を達成するためには、優れたスキルを持った人材を育成・確保する必要があります。
  • 業績の向上: 社員一人ひとりの能力を高めることで、企業の業績を向上させることが求められています。
  • 生産性の向上:人材の成長により、組織全体のパフォーマンス向上を実現します。
  • 企業の競争力向上:優れた能力を持つ人材へと育成することで、企業の持続的な成長へとつなげます。

人材育成は、企業が長期的な視点で成長していくために欠かせないプロセスと言えるでしょう。

人材育成でよくある課題5つ

人材育成を進める際、「予算が足りない」「人材育成に割く時間がない」などと悩む企業は少なくありません。ここからは、人材育成ならではのよくある課題5つを紹介します。

1.人材育成に充てる時間の不足

従業員が日常業務で多忙なため、人材育成に充てる時間を確保できないパターンは少なくありません。
とりわけ、短期的視点での業務効率を優先し、長期的視点での人材育成・投資を軽視しがちな企業では、人材育成に割ける時間が不足しがちです。

時間不足を解決するには、業務の優先順位について見直し、スケジュール管理を徹底することが求められるでしょう。

2.指導者の知識・スキル不足

育成担当者の知識やスキルが不足している場合、十分に時間を設けても、効果的な人材育成が難しい場合があります。
まずは指導者向けの研修やトレーニングを実施し、指導者陣のスキルアップをかなえる必要があるでしょう。

外部の専門家によるセミナー、ワークショップなどを活用することも効果的です。

3.社内の人材育成への積極性の違い

人材育成を積極的に行う雰囲気が社内全体で醸成されていない場合、モチベーションにズレが生じてしまい、育成効果の低下につながりかねません。
全社的な理解のもとで人材育成を行うには、その効果や重要性についてトップダウンで伝える必要があるでしょう。

4.人材育成に対する目標の欠如

育成計画が曖昧で具体的な目標が定まっていない場合、人材育成への積極性・モチベーションの低下につながります。
人材育成を成果につなげるためには、「何のスキルを」「いつまでに」「どのように」習得するのかを整理し、定期的な進捗管理とフィードバックを行うことが欠かせません。

5.人材育成に必要な予算の制約

育成に必要な予算が十分に確保されておらず、人材育成を妨げるパターンも見られます。
この問題を解決するには、人材育成の長期的なメリットについて社内全体で理解し、優先順位を再評価する必要があるでしょう。

人材育成の課題を解決するためのポイント

人材育成を妨げる課題の数々へと対処するには、次の6点を押さえることが重要です。

1.スキルマップで現状を把握する

スキルマップを活用することで、従業員の保有スキルを可視化します。
これにより、組織全体のスキルレベルや、不足している能力を把握でき、適切な育成計画の立案が可能となります。

2.明確な目標設定で方向性を定める

企業のビジョンや事業戦略に沿った人材育成目標を設定することで、効果的な育成を実現できるようになります。
目標設定を明確に行うことによって、育成の方向性が定まり、組織全体が一体となって取り組めます。

3.育成業務を効率化し学習できる時間を確保する

育成業務の効率化を進めることで、人材育成に割く時間を十分に確保しましょう。

例えば、eラーニングシステムを導入することによって、隙間時間を活用しながら学習できる環境を整備できます。

4.階層別育成を実施してプログラムのミスマッチをなくす

新卒・若手層、中堅層、管理職層といった、それぞれの階層に応じた育成プログラムを実施することで、教育内容のミスマッチが減り、効果的な人材育成につながります。

例えば、新卒者には基礎的なビジネススキルに関するプログラムを、中堅層にはリーダーシップやマネジメントスキルを育てるプログラムを提供するなど、階層に応じてカスタマイズしましょう。

5.評価制度の整備を進めモチベーションを高める

人事評価の体制を定期的に見直し、育成成果を評価・フィードバックすることで、社員のモチベーション向上につなげましょう。
評価制度を適切に整備することで、従業員は自らの成長を確認でき、さらなる成長を目指せます。

また、成長が見られた従業員に対して、昇進・報酬増加といったインセンティブを与えることも効果的です。

6.定期的なフィードバックを欠かさない

育成の進捗状況や取り組み状況について定期的に振り返ることも、育成プログラムの効果改善には重要です。
進捗状況だけでなく、育成対象者にとって負担が大きすぎないかも確認し、必要に応じて目標や育成内容を調整することも欠かせません。
フィードバック時にはオープンなコミュニケーションを意識し、育成対象者が自分の意見や懸念を自由に伝えられる環境を整えましょう。

役職・社歴別にみる人材育成における課題

ここからは、役職・社歴別にみる人材育成における課題について解説します。

管理職層における課題

管理職層の人材育成では、次のような課題が見られます。

育成意識と育成スキルにバラつきがある

管理職ごとに、部下の育成に対する重要性の認識度や指導方法が異なることが多々あります。
育成ノウハウの標準化が追いついておらず、育成経験の有無によって指導力の格差があることも少なくありません。

研修への出席率が低い

管理職は、業務の忙しさから研修に対する優先度が低く、研修へなかなか参加できない傾向にあります。
自己啓発の時間を十分に確保しづらく、研修スケジュールと業務スケジュールの調整が困難なケースもあります。

マネジメントスキル、リーダーシップが不足している

管理職自身のマネジメントスキルやリーダーシップが不足しており、部下のモチベーション管理や、人材育成に関する戦略立案が適切に行えないケースも見られます。

中堅社員層における課題

中堅社員層の人材育成における課題は次の通りです。

育成時間の確保が困難

中間層の人材育成においても、日常業務が多忙であることから、自己啓発やスキルアップのための時間を確保できないケースが見られます
また、若手社員の指導・育成に割く時間的余裕を生み出すことも難しい場合が多いでしょう。

日々の業務に追われてスキルアップの機会を得られず、「部下の育成と自身の業務のバランスが取れない」と悩むことも少なくありません。

上位層の育成能力不足の影響を受ける

上位層の育成能力が不足していたことから、上司による適切な指導・フィードバックを得られていないパターンも見られます。
管理職のマネジメントスキルが不足していると、キャリアパスが不明確になってしまうだけでなく、体系的な育成プログラムが欠如してしまうリスクもあります。
また、ロールモデルとなる上司がいなければ、成長の方向性が見えづらいでしょう。

マンネリ、モチベーションの低下などが見られる

中間層の人材育成では、マンネリやモチベーションの低下が見られる点も大きな課題です。

勤続年数が長くなる中、同じような業務を繰り返していると、仕事に単調さを感じてしまうかもしれません。チャレンジングな経験が不足していると、仕事への意欲が高まりづらくなる場合もあります。

将来のキャリアパスが不明確である、評価や報酬へ不満があるといった点も、モチベーションの低下に影響するでしょう。

若手・新人層における課題

若手や新卒社員の人材育成では、次のような課題が見られます。

基礎的な知識やスキル、技術の向上が必要

若手や新卒社員は、業界や職種に関する基礎的な知識・スキルが不足していることが多く、業務に必要となるITツールやソフトウェアの操作スキルも未熟な場合が少なくありません。

また、基本的なビジネスマナーへの理解が不十分で、ビジネス文書の作成能力、プレゼンテーションスキルの向上も求められます。
こういった基礎的なスキルを体系的に学び、実践することが重要です。

慣れない業務に対するモチベーション維持が困難

若手社員や新入社員は、新たに直面する慣れない業務に対し、不安や戸惑いを感じることがあります。
「業務に失敗したくない」といった恐れが行動を妨げ、上司からの期待と実際の成果とのギャップから、焦りを感じることも多いでしょう。

不安や焦りがストレスとなり、モチベーション低下につながる点は懸念すべきポイントです。

コミュニケーション能力の向上が必要

若手社員や新入社員の育成では、コミュニケーション能力の向上が欠かせません。
若手社員の場合、上司や先輩への報連相が適切に行えないことも多いでしょう。加えて、顧客や取引先とのコミュニケーションにおいても、電話対応やメール作成といった基本的なスキルが未熟な場合があります。

円滑に業務を進めるためにも、コミュニケーションスキルを学び、実践することが重要です。

役職・社歴別にみる人材育成の課題を解決するアプローチ

ここからは、管理職・中堅社員・若手社員のそれぞれの人材育成において、課題を解決するための効果的なアプローチを確認していきましょう。

管理職層へのアプローチ

管理職層へのアプローチにおいては、プレーヤーから管理職のマインドへと切り替えることが求められます。

経営戦略研修や組織マネジメント研修、リーダーシップ研修、リスクマネジメント研修などの研修を通じて、管理職として必要な思考やスキルを得ることが重要でしょう。

中堅社員層へのアプローチ

中堅社員層へのアプローチでは、定期的な面談や目標管理制度を実施することで、社員のモチベーションを維持することが必須です。

一人ひとりの目標と組織の目標とを一致させ、社員が自らの役割を理解できることにより、業務へのマンネリ化や意欲低下を防止できます。

また、次世代リーダーを育成するためのサポートも重要です。リーダーシップスキルやプロジェクトマネジメントスキルを習得し、リーダーとして部下をリードする準備を整えましょう。

若手・新人層へのアプローチ

若手・新人層へのアプローチでは、社会人のマインドへ切り替えることに加え、「思っていたのと違った」といったリアリティーショックへの対策が求められます。学生から社会人への変化に適応できるように、適切なサポートが必要でしょう。

また、基礎的なビジネスマナーやスキルの教育も重要です。コミュニケーションスキルや時間管理、ITスキルなどを習得する必要があります。

現場で実際に業務を行いながら学ぶことのできるOJTを通じ、実際のプロジェクトやタスクを行うことで、スキルを身につけていきましょう。

まとめ

人材育成は、企業の成長や経営目標の達成には欠かせません。しかし、指導者のスキル不足や時間・予算の不足、明確な目標の欠如など、さまざまな課題が存在します。

これらの人材育成の課題に対処するには、eラーニングシステムによる育成の効率化や、スキルマップの作成、評価制度の整備などのアプローチが効果的です。

「人材育成でなかなか結果が出ない」とお悩みの場合、まずは人材育成や投資の重要性を再評価し、組織全体で育成に取り組めるよう体制づくりから始めてみましょう。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。