• コンプライアンス

反社とは?定義や企業の心構え、とるべき対策を解説

反社とは?定義や企業の心構え、とるべき対策を解説

反社会的勢力、通称「反社」とは、法律や社会規範に反する行動をとり、組織的に不正や犯罪活動に従事する集団を指します。企業にとって、これらの勢力との関わりは法的リスクや社会的信用の失墜を招くため、厳格な対策と明確な心構えが求められます。

企業は、反社との一切の関係を避け、定期的なチェックや従業員教育を徹底することが不可欠です。

本記事では、反社の見分け方・調べ方を解説するほか、企業がとるべき行動・対策についても紹介します。

一般に「反社」と呼ばれる集団は、暴力団や詐欺集団、総会屋をはじめとする多種多様な組織から構成されています。具体的にどういった集団のことを指すのか、詳しく解説します。

反社会的勢力とは

反社会的勢力とは、一般的な社会秩序や公共の平和を脅かす行為を行う集団や個人の総称です。

暴力・詐欺・恐喝などの犯罪行為によって不正な利益を追求し、企業や一般市民に対して多大な害を及ぼすことがあります。

反社の活動は、企業に直接的な金銭的損失をもたらすだけでなく、企業の信用や社会的評価にも悪影響を与えかねません。企業は反社会的勢力から自社を守るために、適切なリスク管理と対策を講じる必要があります。

従来の反社は、「ゆすり・たかり・みかじめ」といった直接的な手口が横行していました。しかし現在は、資金獲得目的で経営を行うフロント企業や、複数の企業を挟み間接的に関わりを持つ反社関係の企業の存在なども増えています。そのため、知らぬ間に反社会的勢力との関わりを持ってしまうケースも少なくありません。

また、近年はオンラインシフトの加速により相手の姿が見えづらくなったことも、企業にとってのリスクを高める要因の一つです。オンライン上でのコミュニケーションのみで業務委託契約を締結した相手が、反社会的勢力との関わりのある企業だったために情報漏洩につながった、といった被害も少なくありません。さらには、SNSによるブランド毀損も反社の被害の一つに加わるなど、反社会的勢力はこの数年で形を変えており、あらゆる角度からの対策が企業に求められます。

具体的な反社会的勢力について下記に挙げますので、順番に確認しましょう。

暴力団

暴力団は、組織的もしくは暴力的な不法行為を通じて金品を得て、生活資金としている集団です。日本における暴力団対策法では、以下のように定義されています。

その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む。)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体をいう。

引用元:第一章 総則(定義)第二条 二 暴力団|暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)

指定暴力団として知られる団体は、その影響力と組織的な構造から、警察や社会によって厳しく監視されています。

暴力団準構成員

暴力団準構成員は、暴力団に直接所属していないものの、その活動を支援し、維持や運営に協力する者を指します。これらの個人は、暴力団の威力や影響力を利用して不法行為を行い、資金や武器を提供することで、暴力団の活動を間接的に支えている点が特徴です。

暴力団準構成員は、2021年時点で約1万1900人いると推定されています。

暴力団の関係企業

暴力団の関係企業とは、暴力団に資金を提供したり、事業の遂行において暴力団を利用している企業のことです。こういった企業は「フロント企業」や「企業舎弟」とも称され、表面上は正規のビジネスを営んでいるように見えますが、実際には暴力団の資金源となっていることがあります。

一般的な企業との見分けがつきにくいため、取引を行う際は、入念な反社チェックの実施が重要です。これにより、意図せず反社会的勢力と関わりを持つリスクを回避できるでしょう。

総会屋

総会屋は、株主の権利を濫用し、不当に利益を得ることを生業(なりわい)とする者です。こうした人物や集団は、株主総会の議事進行を意図的に妨害し、企業に金銭を要求することで協力を約束することが一般的です。

「特殊株主」とも呼ばれ、日本特有の存在といわれています。企業が総会屋の対応に苦慮する背景には、企業側の過度な「ことなかれ主義」や、株主総会の運営に関する問題が影響していると考えられます。

社会運動標ぼうゴロ

社会運動標ぼうゴロ、または政治活動標ぼうゴロとは、社会運動や政治活動を装って、企業や個人から不当に利益を得ようとする集団や個人のことです。右翼政治活動や同和運動などの社会的な運動に偽装し、企業に対して寄付金を強要したり、機関紙を押しつけて高額な購読料を要求したりする手法を用います。

「えせ右翼」や「えせ同和行為」などが、その代表例です。社会的な正義や理念を装いながら、実際には、経済的な利益を目的とした悪質な行為を行っています。

特殊知能暴力集団

特殊知能暴力集団とは、暴力団と関係を持ちながら、その威力や資金的なパイプを利用して、構造的に不正の中核を成している集団もしくは個人のことです。法律や金融関連の専門知識を駆使して、インサイダー取引や株価操縦などによって利益を得ている点が特徴です。

こうした者は、暴力団員や準構成員にも含まれていないため、企業がこれらの勢力を単独で見極めることは難しいとされています。

特殊知能暴力集団は、専門的な知識や技術を悪用し、社会的な損害を引き起こすことがあるため、企業は十分に警戒しなければなりません。

その他

上記以外の反社会的勢力には、次のような者が含まれます。

  • 会社ゴロ(新聞ゴロ):企業の不正やスキャンダルを利用して脅迫などを行う者
  • 共生者:暴力団の維持・運営に、間接的に協力する者
  • 密接交際者:反社会的勢力に協力的な立場をとる者

こうした存在は、企業や社会に対する潜在的な脅威となるため、適切な警戒と対策が求められます。

政府による定義

2007年、政府の方針として「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」が発表されました。この中で政府は、反社会勢力を次のように定義しています。

暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である

引用元:(別紙)企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針|法務省

この政府指針により、違法な手段で利益を得ようとする集団や個人の総称として「反社会的勢力」の用語が、広く使われるようになりました。

しかし、2019年の答弁書では、政府は反社会的勢力の形態の多様性と変容性を下記の通り指摘し、一元的な定義は困難との見解を示しています。

政府としては、「反社会的勢力」については、その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得るものであることから、あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難であると考えている。

引用元:衆議院議員初鹿明博君提出反社会的勢力の定義に関する質問に対する答弁書

警視庁による定義

警視庁は「東京都暴力団排除条例」に基づき、反社会的勢力を定義しています。この定義では、「暴力的不法行為等」「暴力団」「暴力団員」「暴力団関係者」といった用語が使われているのが特徴です。

ここでいう「暴力団関係者」とは主に、以下のような人たちを指します。

  • 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
  • 暴力団員を雇用している者
  • 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
  • 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
  • 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者

引用元:暴力団関係者等 Q6

地方自治体による定義

地方自治体による反社会的勢力の定義は、地域によって若干の違いがあります。しかし、排除措置に該当するものとして、対象者を細かく規定している点は共通です。

東京都の場合は、先述した「暴力団排除条例」に基づき、暴力団、そのメンバー、関係者を含む広範な定義を採用しています。この条例は、暴力的不法行為や社会的に非難されるべき関係を有する者を明確に対象としており、地域社会の安全と秩序の保持を目的としています。

反社に対して国や地方自治体が行っている対策

国や地方自治体は、反社会的勢力に関して広範囲にわたる対策を講じています。実施している対策について詳しく解説します。

法的な整備

日本では、反社会的勢力に対する法的な対策が、段階的に進化してきました。

まず、暴力行為・覚せい剤の取引・恐喝・賭博などを取り締まることを目的に「暴力団対策法」が1991年に制定されました。

しかし、これだけでは暴力団の根絶には至らなかったため、2003年には反社会的勢力の資金源を断つための「本人確認法」を施行します。さらに2007年、本人確認法を組み込んだ「犯罪収益移転防止法」が成立(同時に本人確認法は廃止)しました。

この法律は、取引時の確認や本人確認などを行う金融業務の従事者にとって、必須知識の一つです。犯罪収益の洗浄を防ぐことを目的としており、反社会的勢力の資金の流れが、より明確化されるようになりました。

企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針

厚生労働省は、2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しています。

指針では、暴力団の活動がより隠蔽(いんぺい)されている現状を踏まえ、知らずに暴力団関係者と取引してしまうリスクに対処するための基本原則と、具体的な対応策が提案されています。

基本原則は、以下の通りです。

  • 組織としての対応
  • 外部専門機関との連携
  • 取引を含めた一切の関係遮断
  • 有事における民事と刑事の法的対応
  • 裏取引や資金提供の禁止

引用元:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針

各都道府県の暴力団排除条例

2009年に佐賀県で「佐賀県暴力団事務所等の開設の防止に関する条例」が制定されたことを契機に、2011年には全都道府県で、暴力団排除条例(暴排条例)が設けられました。

これらの条例では、各都道府県に事業所をおく事業者に対して、反社会的勢力への利益供与や利益の受け取りを禁じており、違反した場合には勧告や公表が行われます。

また、事業者には取引相手が反社会的勢力ではないことの確認や、契約に暴力団排除条項を含めることが、努力義務として課されています。

企業が反社の排除に取り組むべき理由

反社会的勢力との関わりが企業にマイナスな影響を及ぼすことはわかっているものの、実際にどういった実害があるかまで詳細に理解している企業は少ないかもしれません。反社を排除すべき理由について、具体的に紹介します。

反社会勢力に資金が流れるのを防ぐため

企業が反社会的勢力の排除に取り組むべき主な理由は、反社への資金源を断つことにあります。反社は資金調達を目的に企業に近づき、さまざまな手口で接触を図ります。

意図せずに企業が反社会的勢力に資金を提供することは、その活動を間接的に支援し、助長することにつながりかねません。

このため、警察は国や地方公共団体と連携し、産業廃棄物処理業・貸金業・建設業などの業界から、暴力団を排除するための活動を推進しています。

企業の社会的評価のため

企業が反社会的勢力の排除に取り組むことは、企業の社会的評価を維持し、向上させるうえで極めて重要です。コンプライアンスの徹底は、企業価値を守り、信用を失墜させないためにも欠かせません。

反社会的勢力とのつながりがあると指摘された場合、企業の評判は著しく損なわれ、消費者や取引先からの信頼を失うことになります。その結果、販売機会の喪失やビジネス関係の断絶につながる恐れがあるため、反社との関わりを断つことは企業にとって不可欠です。

企業を存続させるため

企業が反社会的勢力と取引することは、暴力団排除条例違反に該当し、罰則や行政指導の対象となるケースがあります。

このような違反は、金融機関からの融資停止や上場廃止といった深刻な結果を招く可能性があるため、留意が必要です。際に、反社会的勢力との取引が原因で上場廃止に至った企業も存在します。

たとえ無意識に反社と取引した場合でもリスクは存在するため、企業は常に警戒し、適切な対策を講じなければなりません。

従業員が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため

企業が反社会的勢力との関わりを避けるべきもう一つの重要な理由は、従業員が犯罪に巻き込まれるのを防ぐためです。反社との関係を持つことで、従業員が不当な要求に直面し、場合によっては犯罪の巻き添えになるリスクが生じます。

例えば、反社会的勢力との関わりを公にすると脅されて金銭を要求されるなど、従業員が直面する可能性のある危険は多岐にわたります。

一度関わりを持ってしまうと、その関係を断ち切ることが難しいケースが大半です。そのため、企業は最初から、反社会的勢力との接触を避ける方針を徹底する必要があります。

反社の見分け方・調べ方

反社会的勢力の見分け方や調べ方には、いくつかのポイントがあります。

見分け方

反社会的勢力を見分ける際は、具体的な手法や活動の特徴を理解することが重要です。これらには、暴力団やその関連組織、特殊知能暴力集団など、さまざまな形態の反社会的勢力が含まれます。

彼らは暴力や恐喝、詐欺などの不法行為を行うことで知られており、企業や一般市民を標的にして、経済的な利益を追求します。

個人

反社会的勢力に関わる個人を見分ける方法には、いくつかの特徴があります。

まず、反社に属する個人は、銀行口座の開設やクレジットカードの作成が難しい場合が大半です。これは、金融機関が反社との取引を避けるために、口座開設時の本人確認を厳格に行っているためです。その結果、反社の場合、高額な取引を現金で行うことが多くなり、領収書を発行しない(受け取らない)ケースもあります。

また、反社会的勢力に属する個人は、特有の隠語を使用することがあります。日常会話の中で不自然な言葉遣いや、一般的ではない専門用語を使っている場合、注意が必要です。

ただし、反社会的勢力に関わる個人がこうした特徴をすべて持っているわけではないため、状況を総合的に判断して見極める必要があります。

組織

組織を評価する際は、以下のような特徴を持つ組織に注意が必要です。

  • 企業のブランディングやPRなどの広報活動、特に人脈や実績の強調が過剰な会社
  • インターネットや新聞記事などを調べて、悪い評判が目立つような会社
  • 契約書の暴力団排除条項について修正を求めたり、暴力団排除条項を理由として取引の中止を申し出たりする会社

自社のブランディングやPRに関して、過剰に強調する企業には警戒が必要です。外見上の印象を利用して信頼を得ようとする場合があります。また、インターネットや新聞記事などで悪評が目立つ企業も問題がある可能性が高いため、事前のリサーチが欠かせません。

暴力団排除条項は、契約相手が反社会的勢力と関わりがないことを保証するためのものであり、これを問題視する企業は、反社会的勢力との関連が疑われます。

なお、各都道府県で施行されている暴力団排除条例により、契約書には暴力団排除条項が設けられることが一般的です。

万が一、違反行為が発覚した場合には、取引を解除することが可能です。こうした制度を利用して、企業は自身を守ることができます。

調べ方

反社会的勢力か否かを調べることは、企業や個人が安全なビジネス環境を維持するうえで不可欠です。このプロセスには、以下のような複数のステップが含まれます。

  • 法的定義の理解
  • 警察や専門機関への相談
  • 取引先の背景調査
  • 契約書における暴力団排除条項の確認など

適切な知識とツールを用いることで、反社会的勢力との不本意な関わりを避け、自身の事業や生活を守ることができます。具体的な方法を下記に紹介しますので、一つずつ見ていきましょう。

反社チェックツールを活用する

反社チェック作業は複雑で時間がかかることが多いため、反社チェックツールの活用が効率的です。

ツールを用いることで、チェック対象の個人や企業を一括で検索し、関連する情報を迅速に把握できます。

さらに、調査に必要な情報を絞り込む機能も備えているため、作業の時間短縮にもつながるでしょう。

多くの反社チェックツールでは、機能や利便性を試せる「無料トライアル期間」を設けています。トライアル期間を利用することで、自社のニーズに合ったツールを見つけられます。

トライアル期間を活用してツールの操作性や検索精度、結果の詳細度などを確認し、最適な反社チェックツールを選定すると良いでしょう。

インターネットで調べる

インターネット検索を利用した反社会的勢力の調査では、Webニュースや新聞記事、専門のデータベースなどの情報源を活用することが可能です。これらの情報源は無料でアクセスできるものが多く、手軽に広範囲の情報を収集できます。

ただし、インターネット上の情報は出典が不明瞭なものも存在するため、得られた情報の正確性や信頼性を慎重に評価する必要があります。情報の確認には、複数の情報源を照らし合わせることや、公式な情報提供元からの情報を優先するなどの対策が有効です。

専門機関へ依頼する

自社での反社チェックに不安がある場合や、特定の個人や企業について怪しいと感じたときは、専門機関に調査を依頼するのが最適です。

これらの専門機関は、内部調査や独自のデータベースを用いた詳細なチェックを提供しており、より深い洞察を得ることが可能です。簡単な調査から、特定の個人や企業の背景に関する詳細な情報収集まで、幅広いサービスがあります。

専門機関に依頼する際は、調査の範囲や内容のほか、それらにともなう費用を事前に検討することが重要です。特に、費用面は調査範囲によって大きく変動するため、事前に見積もりを取得し、予算内で最適な調査プランを選択することが欠かせません。

また、顧問弁護士がいる場合は、調査を依頼する前に相談し、法的観点からも適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

行政機関に問い合わせる

反社会的勢力に関する問題に直面した際は、各都道府県に設置されている「暴力追放運動推進センター」への問い合わせが有効です。

これらのセンターでは、反社会的勢力に関する相談を受け付けており、弁護士や少年指導委員、保護司、警察OBなど、専門的な知識と経験を持つ「暴力追放相談委員」が対応方針やアドバイスを提供しています。

しかしながら、相談する際は一部で一定の条件があるため、留意が必要です。例えば、暴力追放運動推進センターが有するデータベースへのアクセスには、年会費を支払って「賛助会員」となる必要があります。東京都の場合は1口5万円、各都道府県によって年会費(賛助金)の額は異なりますが、いずれもセンターが提供するサービスの質を保つための措置です。

一方で、警察署への相談には制限があり、反社会的勢力の疑いに根拠がない限り、情報提供を受けることはできません。また、外部の専門調査機関に調査を依頼した場合、結果が出るまでに時間がかかることがあります。自社での調査や暴追センターの利用には手間や費用がかかるため、これらの点を考慮して最適な対応策を選択することが重要です。

反社の対策として企業が意識すべきこと

企業が行う反社会的勢力への対策として重要なのは、次のポイントです。

  • 反社会的勢力を顧客にしない
  • 契約自由の原則にのっとって判断する
  • 不当要求をされるような要因を作らない
  • 断固として譲歩しない

それぞれのポイントについて以下で解説します。

反社会的勢力を顧客にしない

企業が反社会的勢力を顧客としないためには、社内全体での意思統一が不可欠です。反社の定義を理解し、共有することから始まりますが、それだけでは不十分です。どのような顧客を受け入れるか・排除するかについての基準も社内で共有し、明確にする必要があるでしょう。

企業にとっての顧客は、経済的利益をもたらし、保護すべき対象です。

しかし、企業に不利益をもたらしたり、恐怖を与えるような存在、すなわち反社会的勢力に対しては、同様の保護意識を持つ必要はありません。

むしろ、そうした勢力を顧客として受け入れないことが、企業の安全性と信頼性を保つうえで重要です。企業は、経済的利益だけでなく、社会的責任や倫理的な基準にも配慮した顧客管理が求められます。

契約自由の原則にのっとって判断する

企業は、契約するかどうかを自由に決めることができます。これは「契約自由の原則」に基づくもので、企業が自己の判断によって、取引を行うか否かを選択する権利を意味します。反社会的勢力との取引に関しては、この原則が特に重要です。

反社からの申し出に対しては、断固として退けるべきです。断る際は、相手に攻撃の口実を与えないよう、特定の理由を述べずに断ることが推奨されます。理由を述べると、それがもとで反発を招いたりさらなる要求の根拠となる可能性があるため、シンプルに契約を拒否する姿勢を保つことが欠かせません。

不当要求をされるような要因を作らない

企業は業務を遂行する中で、サービスの質や行動に関して細心の注意を払うことが必要です。サービスの質が悪いと評価されたり、役員の不祥事やスキャンダルが発生したりすると、これらを口実に反社会的勢力から不当な金銭要求を受ける可能性があります。また、反社による過剰な情報拡散が行われるケースも考えられます。

このような不当要求に直面しないためには、日頃から適切な管理体制を整備し、企業の信頼性を維持することが大切です。具体的には、サービスの質を常に高め、企業倫理を順守し、役員や従業員の行動規範を厳格にすることが求められます。

万が一、不当要求に直面した場合に迅速に対処できるよう、暴力団対策法に基づき「不当要求防止責任者」を設置することが推奨されています。不当要求への対応方針を明確にし、社内での統一された対応を担保する役割を持つ点が特徴です。これにより、企業は反社会的勢力による不当な要求から、自身を守ることが可能となるでしょう。

断固として譲歩しない

反社会的勢力に対しては、いかなる状況下でも、譲歩の姿勢を見せてはなりません。反社会的勢力との交渉は、一見対話が可能な場合であっても、譲歩したり情報を提供したりすると、のちに攻撃の手がかりとして利用される危険性があります。一度譲歩してしまうと、それがさらなる不当要求を呼び込むことになりかねません。

反社からの要求や圧力に直面した場合は、警察や専門機関に相談することが最も大切です。警察等に相談している事実を相手に伝えることで、法的に対応中という現状を明確に示すこともできます。

反社と遭遇した際に企業がとるべき行動

反社会的勢力と遭遇した際、企業は次のような行動をとる必要があります。

  • 相手の情報を確認する
  • 用件が何か明確にする
  • 弁護士や警察に相談する

いずれも重要ですので、一つずつ詳細を見ていきましょう。

相手の情報を確認する

反社会的勢力へ適切に対応するためには、相手の情報を確実に把握することが欠かせません。所属団体名や担当者の氏名を明確にすることが必須であり、相手が曖昧な態度を取る場合には、毅然(きぜん)とした態度で対応することが重要です。

状況によっては、反社ではないかと疑わしい場合でも、気が動転してしまい、相手の情報を十分に確認できないことがあります。そのため、来客があった際は「来訪者カードに記名してもらう」「名刺を交換する」などして、相手の情報を残す工夫が効果的です。

これらの対策により、のちのトラブルを避けるための証拠を残すことができます。

用件が何か明確にする

反社会的勢力との接触時は、用件を明確にすることが非常に大切です。具体的には、相手方から目的をはっきりと言葉に出させ、その内容を文書などにして記録すると良いでしょう。これにより、トラブルを避けるための証拠を残すことが可能となります。

また、相手の要求が理不尽な言いがかりである場合や、用件が明確に確認できない場合には、勇気をもって「お引き取りください」と、明確に要求することが重要です。

こうした対応を徹底することで、企業は自身を守りつつ、反社会的勢力による不当な要求から距離を置くことができます。

弁護士や警察に相談する

反社会的勢力への適切な対応には、専門的な知識が必要であり、実際に対処するのは困難な場合があります。そのため、弁護士や警察、暴力団追放運動推進センターなど、専門機関への相談が推奨されます。

民事問題において「警察は民事不介入」との認識があるかもしれませんが、犯罪の未然防止は警察の重要な役割の一つであるため、実際には相談に応じてくれる場合が多いです。

また、弁護士に相談すれば、適切な法的アドバイスを得られるだけでなく、警察への取り次ぎも含めたサポートを受けることができます。

専門家の助けを借りることで、企業は反社会的勢力への適切な対応策を講じられるでしょう。

反社に対して企業がとるべき対策

反社会的勢力に対して、企業が行う必要がある主な対策は、次の通りです。

  • 反社に対するマニュアルなど体制の整備
  • 契約書には反社会的勢力排除条項を入れる
  • 外部の専門機関と連携して対処する

どの対策も欠かせないため、順番に内容を確認しましょう。

反社に対するマニュアルなど体制の整備

企業が反社会的勢力に対してまず取るべき対策は、反社に対処するための明確な「マニュアル」や「社内体制」を整備することです

マニュアルでは、以下の要点を定めて、社内の共通認識とすると良いでしょう。

  • 策定の目的
  • 反社会的勢力の定義
  • 適用範囲
  • 対応方法

これにより、従業員全員が反社会的勢力との適切な対応方法を理解し、一貫した行動を取ることができます。

契約書には反社会的勢力排除条項を入れる

取引先との契約書に「反社会的勢力排除条項」を設置することは、企業にとって多くの利点をもたらします代表的なメリットは、以下の通りです。

  • 自社が反社会的勢力ではないことを明示できる
  • 取引前の段階で相手企業に反社との関わりが判明した場合、拒絶しやすくなる
  • 取引後に相手企業と反社との関わりが判明した場合、理由を告げる必要なく取引の解消ができる
  • 反社会的勢力排除条項に対する相手企業の反応を確認して、契約前に取引先が反社であるか見極める手段に利用できる

なお、契約書の記載内容の詳細については、警察庁ホームページにある「売買契約書のモデル条項例の解説」を参考にしてください。

外部の専門機関と連携して対処する

企業が反社会的勢力の問題に直面した場合、自社だけですべてを対処しようとするには限界があります。このため、反社チェックや従業員教育、さらには相手が反社だと判明した際の具体的な対処法など、専門的な知識や経験を有する外部の専門機関と協力することが極めて重要です

専門機関には、法律事務所・セキュリティー会社・コンサルティングファームなどがあり、企業を反社から守るための戦略立案や対応策の提供、従業員への教育プログラムの実施など、多方面でサポートします。

こうした専門機関と連携することで、企業は反社会的勢力による被害を未然に防ぐことができるでしょう。それだけでなく、問題が発生した場合でも被害を最小限に抑え、迅速かつ適切に対応することが可能になります。

まとめ

反社会的勢力への対策は、あらゆる企業が取り組むべき重要な課題です。企業は、反社と遭遇した場合に備えて、社内体制の整備や対処法の策定を事前に行う必要があります。

例えば、反社チェックや従業員教育の強化などがありますが、これらを企業単独で実施するのは困難な場合が多いものです。そのため、反社チェックツールの導入や、法律事務所・セキュリティー会社など外部の専門機関と連携することが大切です。ツールの使用や専門機関の活用は、反社会的勢力の識別、リスクの評価、適切な対応策の提案など、企業が反社との関わりを避けるために必要な支援を提供します。

営業DXサービスの「Sansan」であれば、顧客情報を取り込むだけで、潜んでいる取引リスクを自動で検知することが可能です。反社会的勢力との関わりだけでなく、マネーロンダリング(資金洗浄)や人権侵害、組織犯罪への関与といった、さまざまなリスクの検知にも対応しています。全社のリスクマネジメント強化のために、ぜひ導入をご検討ください。

リスクチェック powered by LSEG/KYCCリスクチェックのサービスについて、ご利用の流れや導入後のメリットについて説明した資料です。

リスクチェック powered by LSEG/KYCC

リスクチェックのサービスについて、ご利用の流れや導入後のメリットについて説明した資料です。

営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。