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人材開発とは?人材育成との違い・必要なスキル・助成金についても解説

人材開発とは?人材育成との違い・必要なスキル・助成金についても解説

人材開発とは、企業にとっての貴重な経営資源である人材のスキルを開発し、組織全体の成長とパフォーマンスの向上を実現する取り組みです。近年では、キャリア観の変化、デジタル人材の需要増加、人材の流出防止などを背景に、人材開発への取り組みはさらに必要性を増しています。
しかし、「人材育成との違いがわからない」「具体的にどのように進めたらいいの?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、人材育成との違いもあわせ、人材開発とは何かを基本からわかりやすく解説します。

組織全体の営業力強化を後押しする

人材開発とは

人材開発とは、企業がもつ経営資源である「人材」のスキルを伸ばし、組織全体の成長、ならびにパフォーマンス向上へとつなげるプロセスです。

OJTやOFF-JT、コーチングなどのさまざまな手法を通じ、従業員の知識やスキルを高めて個人の成長と組織の発展へ同時にアプローチします。

人材開発と人材育成の違い

人材開発と人材育成の違いを説明する図

人材開発と人材育成は、どちらも企業の人材に関する取り組みです。しかし、目的や対象者は大きく異なります。
まず、人材開発の目的は組織のパフォーマンス向上です。人材のスキルを伸ばし、組織全体の生産性をあげることで、経営戦略の実現を目指します。

一方で人材育成は、個人のスキルアップにフォーカスしたものです。特定の業務に必要な、専門的スキルの向上を目的としています。
そのため、人材育成の対象者は、新入社員や若手社員、管理職といった特定の人材であり、人材開発のように全従業員が対象ではありません。

人材開発が求められる理由

人材開発が求められる理由はさまざまですが、ここでは主な5つの理由について解説します。

働き方やキャリア観の変化

人材開発が求められる背景には、人々の働き方やキャリア観の変化がみられます。終身雇用、年功序列といった従来の働き方は、現代においてあまり主流ではありません。一社に長期間所属するのではなく、「転職も選択肢としながらキャリアアップしたい」と考える若手社員は増えています。

より個人の主体性が高まっている中、もしも人材開発を行わなければ、人材の流出・競争力の低下は免れません。

デジタル人材の需要増加

経済産業省の調査によると、IT人材の不足は2030年までに約79万人にのぼるとされています(※)。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が求められる中、ITスキルを持ったデジタル人材は企業にとって欠かせない存在です。
DXでは、業務改革とソフトウエアの企画・導入を同時進行で行うため、現場についての深い理解や分析が求められます。そのため、従来のようなシステム開発の外注はおすすめできません。

競争力を高めるためには、外部人材に依存するのではなく、人材開発によってデジタル人材を育成しましょう。

時代の変化への対応

現代は、「VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity:予測不能で複雑な状況を意味する)」と呼ばれる時代です。複雑な時代を切り抜けるために、企業はさまざまな変化に対応しなければなりません。

技術の急速な発展により、顧客ニーズの変化や市場競争はますます激しくなっています。そのため、変化に対応できる柔軟性と、高い学習意欲を持つ人材が求められています。

このような適応力にたけた人材を確保するには、人材開発によるスキルの向上が欠かせません。

経営戦略の実現

企業の経営戦略を実現するためには、社員一人ひとりが成長し、組織全体のパフォーマンスを向上させる必要があります。
持続的に成長し続けられる組織となるべく、人材開発によりおのおののスキルを伸ばすことが重要です。

人材開発を行えば、従業員のスキルだけでなくモチベーションを保つことにもつながるため、生産性の向上や経営目標の達成へも寄与します。
人材開発は全従業員を対象に行われるので、会社のビジョンや経営戦略、事業計画などを浸透させる機会としても役立つでしょう。

人材の流出防止

人材開発は、従業員のスキルアップやキャリア形成をサポートし、働きやすさや満足度を高めることで、離職を防ぐ効果もあります。
また、従業員がスムーズに職場になじむためのオンボーディングの実施や、日々のフィードバック文化を促進させることで、従業員の仕事への意欲やエンゲージメントを強められるでしょう。

こういった取り組みによって、従業員が成長を実感しやすくなり、離職意欲の低下へとつなげられます。

人材開発の手法

人材開発では、いくつかの手法を活用して社員の能力を高めます。ここからは、主な手法5つについて解説します。

1.OJT

OJTとは、実際の業務を通じて行われる職業訓練方法です。新入社員や若手社員に対し、業務を行う中で直接指導します。

「やってみせる(Show)」「説明する(Tell)」「やらせてみる(Do)」「確認、追加指導(Check)」の基本的な流れにのっとって進めることで、業務で役立つナレッジやスキルを習得可能です。

即戦力を育成したい場合にもっとも効果的と考えられます。

2.Off-JT

eラーニング、研修会社による集合研修、セミナーへの参加など、実際の業務から離れて行われる教育訓練方法をOFF-JTと呼びます。

業界全体に関する知識、ビジネスにおける理論など、業務では習得が難しい内容について体系的に学習可能です。

3.タフアサインメント

人材の成長を促進させるために、能力以上の業務へ挑戦させることをタフアサインメントと呼びます。

難易度が高い仕事や役割をあえて任せることにより、潜在能力の成長や、新たなスキル開発が期待できる方法です。

難易度の高さゆえに失敗してしまう、社員のストレスになってしまうといった点には注意してください。

4.コーチング

社員への質問や傾聴を通じ、部下自らが気づいて行動するよう促すことをコーチングと呼びます。

一方的に指示を出すのではなく、社員が主体的となって行動を取れるように、対話を通じて行動変容をサポートします。

5.自己啓発

自主的にスキル開発、学習へと取り組むのを自己啓発と呼びます。自己啓発を進める場合は、オンライン講座やセミナーへの参加、書籍など、さまざまな媒体から学習可能です。

企業に求められる対応としては、以下のような内容があげられます。

  • eラーニングを導入し、社員が自分のペースで学習できる環境を整備
  • 資格取得にかかる費用の一部または全額の負担
  • スキルアップに関する書籍購入補助
  • 社内で勉強会を開催するほか、企業独自の学習プラットフォームの提供
  • 社外で開催される専門的なセミナーや講座への参加費用の負担

人材開発の流れ

人材開発は、基本的に以下の流れで進められます。

経営戦略の把握

人材開発を進めるには、まず経営戦略について把握しなければなりません。企業のミッションや中長期経営計画について理解し、組織にとってどのような人材・能力が必要か明確にしましょう。

人材開発ビジョンの明確化

経営戦略の把握、必要な人材像・能力の明確化が完了したら、人材開発ビジョンを定めます。

「自律的・主体的に学習し、組織の変革をリードできる人材を開発する」「多様性について理解・尊重し、グローバルな活躍が期待できる人材を育成する」など、人材開発の方向性を策定しましょう。

ビジョンを明確に定めることによって、社員、そして組織全体のモチベーションにもつながります。

人材開発計画の作成

策定された人材開発のビジョンに基づき、具体的な人材開発計画を立てましょう。

現段階における社員のスキル、潜在能力などについて確認し、階層別・職種別の育成プログラムを適切に設計します。OJTやタフアサインメント、コーチングのほか、外部研修の活用など、さまざまな手法を検討しましょう。
育成プログラムの設計に加え、評価制度について整備することも忘れないでください。

従業員への周知

人材開発計画が策定されたら、全従業員に対してもれなく周知します。単なる情報伝達に止まらず、人材開発が必要な理由や行う意義、目的などを丁寧に共有し、従業員からの理解を得ましょう。

従業員からの意見、フィードバックがあった際には誠実に受け止め、計画の改善へとつなげましょう。

人材開発の実施

計画に基づいて、人材開発を実施します。各種育成プログラムを進めるとともに、キャリア開発のサポート、自己啓発へのバックアップなど、さまざまなアプローチで成長を促進させましょう。

分析・改善

人材開発で成果をあげるには、PDCAサイクルを回し継続的に改善していく必要があります。各従業員のスキル向上度、組織としてのパフォーマンスの変化などを多角的に分析し、効果を測定しましょう。

測定結果に基づき、育成プログラムの変更や支援の強化など具体的な改善策を講じます。場合によっては、計画自体の見直しまで行う必要もあるでしょう。

人材開発に必要なスキル

人材開発を進めるにあたり、従業員の育成に努めるにはさまざまなスキルが必要です。主なスキルについて表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。

スキルの種類

概要

現状把握スキル

課題や状況を正確に把握し、適切な対応を検討する能力

目標設定スキル

達成可能で具体的な目標を設定し、進捗を管理する能力

仕組み化スキル

業務やプロセスを効率化し、再現性のある仕組みを構築する能力

人材配置スキル

適材適所に人材を配置し、チームのパフォーマンスを最大化する能力

コミュニケーションスキル

円滑な情報共有と信頼関係を構築するための対話能力

ロジカルシンキング

論理的に物事を考え、課題を解決する能力

リーダーシップ

チームを率いて目標達成に導く能力

マネジメントスキル

チームやプロジェクトを効果的に管理する能力

コーチングスキル

相手の気づきを促し、成長を支援する能力

ティーチングスキル

知識やスキルを効果的に教える能力

人材開発で申請できる助成金とは

人材開発にかかるコストでお悩みの場合は、人材開発支援助成金の活用をおすすめします。

人材開発支援助成金とは、職務関連の専門知識・技能を習得に向け職業訓練を計画的に実施する場合、訓練にかかった経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。

コース名

対象内容

助成額

人材育成支援コース

職業訓練(OFF-JTやOJT)を実施

訓練経費:〜75%

賃金助成:1時間あたり800円~1000円(大企業は400円~500円)

教育訓練休暇等付与コース

有給教育休暇を利用したスキルアップ研修

1日あたり最大30万円

人への投資促進コース

デジタル人材育成や新規事業展開に必要なスキル取得

訓練経費・賃金の一部を定額で助成

事業展開等リスキリング支援コース

新規事業進出や職務転換のためのスキルアップ

訓練経費・賃金の一部を定額で助成

助成金を受けるにはさまざまな支給要件を満たす必要があるため、詳しくはこちらよりご確認ください。

人材開発支援助成金|厚生労働省

人材開発で失敗しないためのポイント

人材開発で失敗しないためには、次の5つのポイントを押さえておきましょう。

1.目的と目標を明確にする

人材開発で失敗しないためには、企業のビジョンと連動した具体的な目的・目標設定をかかげましょう。

部門や職種別の育成指標を設定するなど、従業員の成長、組織としての発展を同時に実現する目標を定めてください。

従業員のモチベーションを高めるために、あまりにも挑戦的な目標設定は避け、ある程度は現実的な数値とすることをおすすめします。

2.コミュニケーションの時間を十分に設ける

人材開発を成功させるには、部下との定期的な面談、フィードバックなどの時間を十分に設けて、成長をサポートしましょう。

部下とのコミュニケーションを密接にすることで、上司・部下間の信頼関係の構築や、組織へのエンゲージメント向上を期待できます。

また、上司から部下への一方的な指示出しではなく、インタラクティブなコミュニケーションをとることを意識するとよいでしょう。

3.キャリア形成をサポートする

人材開発を成功させるために、従業員の適正・希望・スキルの3つを把握した上で、キャリアパスを設計しましょう。キャリア形成を組織としてバックアップすることは、人材開発において重要なポイントです。

また、従業員のスキルアップが企業の発展につながることを周知し、一人ひとりのやる気を高めることも肝要です。従業員の自己実現をサポートしつつ、組織の成長を促進させましょう。

4.人材配置を適切に行う

従業員のスキルを最大限に引き出すには、適切な人材配置が求められます。スキル・経験・志向などを考慮し、最適な部署・役割へと配置しましょう。

また、人材配置は定期的に見直すことが重要です。従業員からの意見、定量的なデータのどちらもふまえた上で、公正公平な人材配置を行ってください。

5.学習環境を整備する

人材開発を効果的に進めるには、継続して学習できる環境が必要です。ラーニング・エコシステムを構築し、従業員が主体的に学べる環境を整えましょう。

その中でも欠かせないのがeラーニングシステム/LMS(学習管理システム)の活用です。LMSとは、eラーニングや集合研修などの学習状況を管理するシステムのことを指します。

ただ学習環境を整えるだけでなく、実際にどの程度活用されているか、進められているかをモニタリングしながら人材開発につながる取り組みにブラッシュアップしていくことが重要です。

まとめ

組織の継続的成長を促すには、従業員一人ひとりの能力開発が求められます。市場競争の激化に対応するためには、新たな技術の活用やDXの推進にくわえて、人材開発が重要な手段です。

また、人材開発で成果をあげるためには、適切なフィードバックや評価が必要です。

Sansanの案件管理機能を活用すると、各メンバーの営業活動の確認がスムーズに行えるため、フィードバックに役立てられます。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。