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NPS®(ネットプロモータースコア)とは?顧客満足度調査との違いやマーケティングでの活用方法を紹介

NPS®(ネットプロモータースコア)とは?顧客満足度調査との違いやマーケティングでの活用方法を紹介

NPS®(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客ロイヤリティを測定する重要な指標です。企業の成長と顧客満足度を数値化し、具体的な改善施策につなげることが可能です。

本記事では、NPS®の基本的な概念から計算方法、メリット・デメリットまで詳しく解説します。具体的な導入手順や実践的な内容を簡単かつわかりやすくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

NPS®(ネットプロモータースコア)とは?

NPSの説明とアンケート形式の図

NPS®は顧客がサービスや商品を他者へ推奨する可能性を数値化した指標です。顧客の声を0から10点で評価し、推奨者・中立者・批判者の3つに分類して分析します。

NPS®の重要性

顧客ロイヤリティを数値化すれば、企業の成長可能性を予測することが可能です。顧客の推奨意向を測定すれば、実際の購買行動との相関関係を把握できます。

また、NPS®は顧客維持率の向上や新規顧客の獲得コスト削減において、直接的な影響を与える指標として活用できます。経営判断における客観的な基準として、具体的な施策立案にも役立てられるのです。

NPSと顧客満足度調査の違い

顧客満足度調査が現在の満足度を測定するのに対し、NPS®は将来の推奨意向を測定します。満足度調査が一時点の評価なのに対し、NPS®は継続的な関係性を重視した指標です。

顧客満足度は個別の要素に対する評価が中心ですが、NPS®は総合的な評価を行います。企業の成長予測において、NPS®はより実践的な指標として活用できます。

NPS®とeNPS®の違い

NPS®が顧客の推奨意向を測定するのに対し、eNPS®は従業員の推奨意向を測定します。従業員満足度が、顧客満足度に影響を与えるという考えに基づいた指標です。

組織の健全性を測る指標として、eNPS®は内部からの改善活動に活用できます。両指標を組み合わせれば、より細かい分析ができるため、企業価値の向上が期待できます。

NPS®の計算方法と評価基準

NPS®は顧客の推奨意向を0から10点の11段階で評価し、数値化する手法です。推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPS®スコアとなり、-100から+100の範囲で表示されます。

ここでは、具体的な計算方法と評価基準について解説します。

基本的な計算方法

NPS®の計算には、最低400以上のサンプル数が必要です。11段階評価で得られた回答から、推奨者と批判者の割合を明確にしましょう。

具体的な計算手順は以下のとおりです。

  1. 推奨者(9-10点)の割合を算出
  2. 批判者(0-6点)の割合を算出
  3. 推奨者の割合から批判者の割合を引く
  4. 結果は-100から+100の範囲で表示

計算結果の信頼性を高めるためには、十分なサンプル数の確保が重要です。また、継続して測定することで、時系列での変化を把握できます。

11段階に分けた評価基準

NPS®の評価基準は、顧客からの回答を明確な基準で分類します。11段階評価による回答は、以下の3つのカテゴリーに分類されます。

カテゴリー

評価点数

特徴

推奨者

9-10点

積極的な推奨意向を持つ層

中立者

7-8点

満足しているが競合流出リスクあり

批判者

0-6点

改善が必要な不満層

上記の分類により、顧客層ごとの特性を理解してそれぞれに適した施策を展開できるため、顧客満足度の向上につながります。

NPS®を導入するメリット

NPS®導入は、企業の顧客戦略における方向性を示す重要な指標です。顧客の声を定量的に把握すれば、経営判断の基準として活用できます。

ここでは、具体的なメリットについて解説します。

顧客ロイヤリティを数値化して定量的に把握できる

顧客の推奨意向を11段階で評価し、明確な数値指標として把握できます。推奨者と批判者の割合から算出される数値は、経営判断の客観的な基準です。

企業の現状把握だけでなく、将来予測にも活用できる指標として機能します。定期的な測定により、施策の効果を数値で確認できます。

競合他社との客観的な比較がしやすい

NPS®を導入すれば、業界内での自社の立ち位置を明確に把握できます。統一された評価基準により、競合他社との差別化ポイントが明確になる点もメリットです。

また、市場における自社の強みと弱みを客観的に分析できます。競合分析に基づいた具体的な改善策の立案が可能になります。

顧客動向の変化を早期に察知できる

定期的な測定により、顧客の評価変化をリアルタイムで把握できるため、数値の変動から、施策の効果や市場の変化を読み取れます。

予測分析により、将来的な顧客動向の予測が可能です。早期の対策立案により、問題の未然防止につながります。

顧客セグメント別の詳細な分析が実施できる

属性別の分析により、各顧客層の特徴を明確に把握できます。セグメントごとの評価傾向から、効果的な施策を立案することも可能です。

また、顧客特性に応じた個別のアプローチが実現します。優先順位をつけた施策展開により、効率的な改善が期待できる点もメリットです。

中長期的な経営戦略の立案に活用できる

NPS®を導入すれば、データに基づく具体的な目標設定ができるため、数値目標の達成度から、戦略の有効性を評価することが可能です。

また、長期的な顧客価値の向上に向けた施策を立案できます。継続的な測定により、戦略の軌道修正が適切に行えます。

NPS®を導入する際に注意すべき点

NPS®導入には、実務面での課題と運用面での注意点があります。信頼性の高い結果を得るためには、適切な準備と継続的な取り組みが必要です。

ここでは、NPS®を導入する際に注意すべき点について解説します。

十分なサンプル数の確保が必要になる

統計的に信頼できる結果を得るためには、最低400以上の一定数のサンプル数が必要です。誤差を±2%以内に抑えるためには、2,000以上のサンプルが求められます。

アンケート設計の工夫や回答の設定により、必要なサンプル数を確保することが可能です。定期的な測定を行うことで、時系列での変化を把握できます。

顧客の特性や評価傾向を考慮した判断が必要

日本の顧客は評価の際に中間的な回答を選ぶ傾向があり、海外と比較してスコアが低くなります。そのため、文化的な背景を考慮した評価基準の設定が重要です。

業界平均値や時系列での変化に注目し、自社の改善度合いを測れば、より実態に即した分析が可能になります。顧客の評価傾向を理解すれば、適切な目標設定ができます。

調査設計や実施に専門的なノウハウが求められる

質問設計から分析手法まで、専門的な知識が必要です。アンケートの実施タイミングや質問数の設定により、回答品質が大きく変化します。

外部専門家との連携や社内での知識共有により、効果的な運用体制を構築できます。継続的な改善活動を通じて、組織全体のスキル向上を図ることが可能です。

調査・分析にかかるコストと工数が大きい

調査設計から結果分析まで、一定の予算と人員が必要です。導入初期には外部支援を含めた投資計画の策定が重要です。

デジタルツールの活用や業務フローの最適化により、運用コストを削減できます。定期的な効果測定を行い、投資対効果を検証すれば、持続可能な運用が可能になります。

顧客の回答タイミングによって結果が変わる恐れがある

サービス利用直後の調査は、顧客の感情が新鮮なため極端な評価になりやすい特徴があります。商品購入直後は強い魅力を感じている状態のため、既存顧客と比べて高い評価になる傾向にあります。

定期的な利用者アンケートや一定期間経過後のフォローアップ調査など、適切なタイミングでの実施が重要です。顧客が商品やサービスを認知して購入に至るまでの流れに沿った調査設計により、より正確な顧客の声を収集できます。

NPS®を実施するための5つの手順

NPS®の導入には、実施手順を明確にすることが大切です。顧客の声を効果的に収集し、分析するための準備から改善施策の立案まで、段階的な取り組みが重要です。

ここでは、NPS®を実施するための5つの手順について詳しく解説します。

1. 調査目的を明確にする

NPS®を実施するためには、顧客ロイヤリティの向上に向けた具体的な目標設定が必要です。企業全体の評価を測定するリレーショナル調査か、特定の接点を評価するトランザクショナル調査かを決定しましょう。

目標に応じた評価基準を設定し、具体的な数値目標を定めれば、組織全体で共有できる指標となります。定期的な測定と評価により、施策の効果を確認できます。

2. アンケートの作成を行う

推奨度を問う質問を最初に配置し、回答時間を5分以内に抑えた設計が重要です。質問数は7問以内に制限し、回答者の負担を軽減しましょう。

質問文は簡潔でわかりやすい表現を使用し、具体的な改善につながる情報が得られる設計にすることが大切です。自由記述欄を設ければ、詳細な顧客の声を収集できます。

3. 実施方法を選ぶ

オンラインかオフラインか、実施のタイミングと頻度を決定しましょう。最低400以上のサンプル数を確保できる方法を選択し、統計的な信頼性を担保します。

顧客との接点に応じて、メール配信やWebサイト上での調査など、適切な手法を選択することが大切です。回答率を高めるため、工夫を取り入れた実施計画を立案します。

4. データ収集と分析を実施する

NPS®を実施する際には、定量的なスコア分析と定性的な自由回答分析を組み合わせて実施します。推奨者・中立者・批判者の割合から、具体的な改善ポイントを特定しましょう。

競合他社との比較分析や時系列での変化を追跡し、改善の方向性を明確にします。分析結果は全社で共有すれば、部門ごとのやり取りがスムーズになります。

5. 具体的な改善施策の立案を徹底する

分析結果から優先的に取り組むべき課題を特定し、具体的な改善計画を立案します。部門ごとの役割と責任を明確にし、実行可能な施策に落とし込みましょう。

改善施策の実施後は効果測定を行い、次の改善計画に反映します。継続的な改善活動を通じて、顧客ロイヤリティの向上が期待できます。

NPS®で効果を出すためのポイント

NPS®調査の効果を最大化するには、アンケート設計の基本原則を押さえることが重要です。質問の順序や内容、回答時間に配慮した設計により、正確な顧客の声を収集できます。

ここでは、NPS®で効果を出すためのポイントについて詳しく解説します。

推奨度スコアはアンケートの最初に配置する

推奨度スコアを最初に質問することで、バイアスのない率直な評価を得られます。他の質問を先に行うと、回答者の感情に影響を与え、本来の評価と異なる結果になる可能性があるため注意しましょう。

質問の順序によって回答傾向が変化するため、推奨度質問を冒頭に配置し、純粋な第一印象を捉えることが重要です。自由回答欄は後半に設置し、具体的な理由を収集します。

回答者がイメージしやすい質問にする

質問文は具体的な場面や状況を示し、回答者が明確にイメージできる表現を使用します。専門用語や抽象的な表現を避け、日常的な言葉で質問を構成します。

質問の意図が明確に伝わるよう、シンプルで簡潔な文章を心がけましょう。必要に応じて具体例を示し、回答者の理解を助ける工夫を加えることが大切です。

回答時間を5分以内に設計する

アンケート全体の回答時間を5分以内に収めることで、回答率と回答品質を向上させます。質問数を7問以内に制限し、各質問の回答にかかる時間を考慮した設計が必要です。

質問文は簡潔に保ち、選択肢は必要最小限に抑えましょう。自由回答欄は1〜2問程度に制限し、回答者の負担を最小限に抑えます。

まとめ

NPS®は顧客ロイヤリティを測定する重要な指標として、企業の成長戦略に不可欠な要素です。顧客の声を定量的に把握し、具体的な改善活動につなげることで、持続的な成長が実現できます。

適切な調査設計と継続的な測定により、顧客満足度の向上と収益拡大の両立が可能です。全社的な取り組みとして位置づけ、PDCAサイクルを確立することで、効果的な改善活動を推進できます。

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営業DX Handbook 編集部

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営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。