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ユーザーの声が直接聞ける現代、成果に大きく影響する「顧客ロイヤリティ」とは?
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さまざまなメディアで登場する「顧客ロイヤリティ」という言葉は主にマーケティング分野で使われており、なんとなく聞いた経験があるでしょう。 しかし、その意味を問われたら、正確に答えられる人は少ないかもしれません。似たような言葉に「顧客満足度」という言葉もあります。これらの用語は 売り上げやブランド力の向上に非常に重要です。 本記事では顧客ロイヤリティの意味やメリット、向上させるためのポイントについて解説します。
※本記事は2022年7月に作成されました。掲載されている内容は作成時点の情報です。
顧客ロイヤリティとは?
顧客ロイヤリティとは顧客が商品やサービス に対して感じる信頼や愛着のことです。
ロイヤリティとは日本語で「忠誠心」のことで、そこから派生して企業と顧客の関係性の良好さを顧客ロイヤリティと呼ぶようになりました。
顧客ロイヤリティが高まると顧客はそのブランドの商品やサービスに満足するだけではなく、そのブランドの発展と普及を心から願い、友人や知人などに推奨するようになります。昨今のSNS時代において、この顧客の行動は企業やブランドにとって極めて価値が高いといえます。
顧客ロイヤリティの種類
顧客ロイヤリティには「心理面でのロイヤリティ」と「行動面でのロイヤリティ」の二種類があります。
心理面でのロイヤリティとは、顧客が商品やサービスに対して愛着と信頼を感じ、そのブランドの商品を利用している事実を幸せに感じている状態のことです。これは単に機能的要件を満たしているというだけではなく、顧客が類似する他ブランドの商品との違いを感じていたり、その事業領域の代表的なブランドであると感じていたり、その企業の価値観やポリシーが自分の価値観と似ていると感じているケースも含みます。
行動面でのロイヤリティとは、顧客がそのブランドの商品を継続して利用し、友人や知人など周囲の人に対して商品やサービスを積極的に推奨している状態のことです。こちらも機能的要件の満足だけが理由ではなく、そのブランドの商品を利用するのが習慣になっていたり、店舗に行くまでの交通の便が良いといった外的要因の影響も含みます。
顧客ロイヤリティの重要性
顧客ロイヤリティが重要なのは、成果に直結するからです。顧客ロイヤリティの高い顧客と低い顧客を比べた場合、一人あたりの単価やリピート率に明確な差が出ます。また、先にも触れたとおり、顧客ロイヤリティが高い顧客は友人や知人など周りの人にその商品やサービスを積極的に勧める傾向にあります。これは現実社会での関係者のみに限らず、SNSにおけるフォロワーなども含みます。昨今のSNS時代では、顧客ロイヤリティを高めれば高めるほど、ネット上に自社ブランドのポジティブな口コミが増えていくのです。
顧客満足度との違い
顧客ロイヤリティとよく似た言葉に「顧客満足度」があります。一見すると同じような意味に思えますが、この2つ言葉には明確な違いがあります。顧客満足度は、顧客が商品やサービスに満足している度合いを意味します。多くの場合、アンケートなどで調査して測ります。
しかし、 顧客満足度が高いからといって、必ずしも顧客はリピートするわけではないという点が顧客ロイヤリティと異なります。 顧客には「商品には満足したが、他ブランドの商品も使ってみたい」といった需要も存在します。そのため、顧客満足度だけでは顧客をつなぎ止められません。
また、商品に満足していないのに顧客ロイヤリティが高い場合もあり得ます。例えば、他社に比べて機能的価値で劣る商品でも「経営者の理念に感銘を受けた」「消費者のことを考えてくれているのが伝わる」「企業の姿勢が信用できる」といった理由で何度もその商品をリピートする場合もあります。この場合、顧客は商品に対する顧客満足度は低いが、顧客ロイヤリティは高い状態にあるといえます。
顧客ロイヤリティを高めるためには、企業がきめ細やかな顧客対応をする必要があり、そのためには精度の高い顧客データを保有する必要があります。
顧客ロイヤリティを向上させることで得られるメリット
ここで改めて、顧客ロイヤリティを向上させることで得られるメリットについて考えてみましょう。
リピート率がアップし、顧客離れが減少する
顧客ロイヤリティが高ければ、顧客は繰り返し同じブランドの商品を利用する傾向にあります。なぜなら、ロイヤリティの高い顧客は商品やサービスに対して信頼と愛着があり、それが失墜しないかぎりそのブランドを応援したいと思っているからです。同様の理由で顧客離れも起こしにくくなります。例え他社に優れた新商品が出たとしても、乗り換えることなく現在使っているブランドの商品を使い続ける傾向にあります。
顧客単価のアップ
顧客ロイヤリティの高い顧客と低い顧客を比較すると、高い顧客の単価の方が高くなる傾向にあります。一般的に商品が高額になるほど、それが欲しいモノであっても購入に対する心理的なハードルは高くなるでしょう。しかし、顧客ロイヤリティが高ければモノに対する愛着や企業理念への共感などから購入の動機が強まることから、相対的に値段への心理的ハードルが下がる傾向にあります。
また、顧客ロイヤリティが高い人はその商品やサービスに対する顧客の信頼性が高いため、勧められた商品を買ってくれやすい傾向にあります。そのため、一人あたりがそのブランドに使う金額は大きくなります。
口コミによるブランドイメージの向上
顧客ロイヤリティが高ければ、顧客は積極的に周りの人にその商品やサービスを勧め、SNSなどでポジティブな意見を発信してくれます。SNS社会の現代では消費者の自発的な発信や口コミが商品のイメージを大きく左右するため、マーケティング上の大きなメリットにもなります。高い評価の口コミが優勢になるとより多くの消費者に利用してもらえるようになるため、顧客ロイヤリティを向上させることが重要です。
顧客ロイヤリティの指標とその測定方法
顧客ロイヤリティは売り上げやブランド力向上において重要な概念です。愛着や信頼など顧客からの評価は定性的な傾向がありますが、顧客ロイヤリティを向上させる施策を打ち出すためには定性評価を定量的に測定できなければなりません。ここでは顧客ロイヤリティを測るためのいくつかの指標を紹介します。
顧客満足度は顧客ロイヤリティの指標になる
先述したように顧客ロイヤリティは顧客満足度とは異なる概念です。しかし、顧客ロイヤリティを測るための参考になる指標の一つとして顧客満足度を利用することができます。
ですが、顧客満足度はあくまで単発的に満足の度合いを示したものにすぎません。一時的に満足しているといっても他ブランドの商品に乗り換える可能性も含んでいるため、継続的な利用可能性を考慮する顧客ロイヤリティの指標としては顧客満足度だけでは不十分です。顧客がどれだけ継続的に商品やサービスを利用しているかを示す顧客継続率や、顧客一人当たりの生涯売り上げを示すLTV(ライフタイムバリュー)といった他の指標と合わせて総合的に判断する必要があるでしょう。
未来も予測できる「NPS®」
顧客満足度のような従来型の指標では十分に顧客ロイヤリティを測定できないため、最近になって出てきた新しい指標が「NPS®」です。
NPS®(Net Promoter Score)とは、そのブランドをどれだけ親しい人に勧めたいかを割合で示したものです。アンケートの対象者には、商品やサービスを0~10の11段階から点数をつけて評価してもらいます。0~6点で評価した人を批判者、9・10点で評価した人を推奨者、7・8点で評価した人を中立者とします。被験者のうち推奨者の割合から、批判者の割合をマイナスした数字がNPS®となります。NPS®が優れている点は、将来的な顧客がどれだけ増えるかを推奨者の多さによって予測できる点にあります。「人に勧めたいか」と問うことで、そこに未来の要素が入るのです。先述したように、顧客満足度は利用の継続性に対する評価が不十分であるため指標がリピート率につながらないこともありますが、NPS®はリピート率の高い推奨者を捕捉できる指標であるため、業績との連動性が高いです。
また、NPS®はリレーションシップNPS®調査とトランザクショナルNPS®調査の2種類があります。リレーションシップNPS®調査では、商品やサービスに対するロイヤリティを調べるのに対して、トランザクショナル NPS®調査では接客や営業、サポート担当者への評価を把握できます。商品やサービス自体の改善や競合との比較分析には前者を、商品やサービスと顧客のタッチポイントを改善するには後者を利用するなど、目的に合わせて使い分けるといいでしょう。
顧客ロイヤリティを向上させる方法
では、顧客ロイヤリティを向上させるにはどうすればよいのでしょうか。主に三つの方法が考えられます。
指標を用いて顧客層を分けて方法を考える
まずは現在、どれくらいの顧客ロイヤリティがあるのか測定する必要があります。先述したNPSなどの指標を用いて顧客の声を可視化します。NPS®のアンケートに回答した顧客たちはそれぞれ「推奨者」「中立者」「批判者」に分かれます。顧客ロイヤリティを上昇させるには、推奨者には推奨者向けの、批判者には批判者向けのサービス提供方法やプロモーション方法を、といったように三つの顧客層を分けて考えなければなりません。
CX(顧客体験価値)を向上させる
顧客が商品を認知してから購入・使用し、その後のアフターサービスまで含めた一連の体験をCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験価値)といいます。CXでは、商品やサービスの価格や機能といった「合理的な価値」に加え、購入までの高揚感や購入後のアフターサービスなど商品が持つ実質的な価値以外の「感情的な価値」も重要視されます。CXの概念を提唱したアメリカの経営学者バーンド・H・シュミット氏によれば、感情的な価値 を「Sense(感覚的価値)」「Feel(情緒的価値)」「Think(知的価値)」「Act(行動、ライフスタイルにかかわる価値)」「Relate(社会的経験価値)」の五つに分類しており、これらを高めていくことで顧客ロイヤリティの向上に繋げられるとしています。
CXを高めるには認知、興味関心、購入、使用、アフターサービス、問い合わせ対応などの各フェーズにおいて顧客にネガティブな体験をさせている要因を顧客が購入までに辿るプロセスを示したカスタマージャーニーマップなどによって洗い出し、一つひとつそのネガティブ要因を潰していく必要があります。これは主に批判者に対して有効な対策で、顧客がストレスを感じるポイントを潰していくことでCXを高められます。顧客は商品やサービスから満足を得るだけでなく、「感情的な価値」の体験を通して企業の誠意なども感じとるはずです。それゆえ顧客と企業の間にある信頼関係がより強固になり、顧客ロイヤリティの向上に繋げられるのです。
カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、購入まで、あるいは購入後にわたるプロセスで変化する顧客の行動や心理を示した指標です。プロセスは認知・興味関心・検討・購入・購入後のように細かく分解されます。分解された個別の過程で顧客分析を行うことによって各タッチポイントの課題をより精緻に把握しつつ、購入プロセス全体を網羅したCX改善ができます。
顧客データを細かく管理する
顧客ロイヤリティを高めるには、顧客管理の質を高める必要があります。顧客の基本的な情報だけではなく、どのように自社と接点を持ってきたのかを細かくデータにし、全社的に共有する必要があります。例えば担当する営業スタッフごとに対応がバラバラであるような状態はサービス提供の質にムラが生じて不信感をもたらすため、顧客ロイヤリティの低下をもたらします。顧客管理の質を高めるためには、顧客データの管理を細かく厳密に行う必要があります。
顧客ロイヤリティの向上は顧客管理の見直しから
顧客ロイヤリティの向上は企業にとって継続的で安定した利益構造をもたらします。なぜなら、顧客ロイヤリティの高い顧客は繰り返し商品やサービスを購入し、積極的に周りに勧め、将来の収益の増加をもたらすからです。
顧客ロイヤリティを向上させるために必要な顧客データの厳密な管理には、業務のデジタル化と正確な顧客データの蓄積が求められます。昨今ではビジネスコミュニケーションのオンライン化が加速していることもあり、マーケティング・営業活動のデジタルシフトが急務です。
また、業務のデジタル化によって顧客データを得られても、マーケティング・営業に活用できるように正確に蓄積されていなければなりません。正確に蓄積できていなければ、営業担当者の顧客データが全社的に共有されず、他の担当者が行う顧客ロイヤリティ測定に必要なデータとして収集することも難しいでしょう。正確にデータが集計できなければ、分析結果の正確性にも欠けます。顧客ロイヤリティ向上に不可欠な顧客データの正確な蓄積と業務のデジタル化については、ぜひ取り組みましょう。
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ライター
営業DX Handbook 編集部