- ビジネス全般
PDCAサイクルとは?メリットや効果的に回すコツ、よくある失敗と対策を解説
公開日:
更新日:
PDCAは仮説と検証のプロセスを循環させるフレームワークであり、業務改善や品質向上などの目的を達成するため、多くの企業や組織で導入されています。しかし、PDCAサイクルが形骸化し、効果的な運用ができていないケースも少なくありません。
本記事では、PDCAの意味や目的と、似た概念である「OODA」との違いを整理し、PDCAを実施するメリットや効果的な活用方法について解説します。PDCAにおけるよくある失敗と対策もご紹介していますので、取り組む際の参考にしてみてください。
PDCAとは
PDCAは一般的に用いられるフレームワークですが、どのような意味や目的で使用されるのでしょうか。ここでは、PDCAの概念と、混同されやすい「OODA(ウーダ)」との違いも交えて解説します。
PDCAの意味や目的
PDCAは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(測定・評価)」「Action(対策・改善)」の頭文字をとった、業務改善のためのフレームワークです。
1950年代、米国の統計学者ウォルター・シューハート氏とウィリアム・エドワーズ・デミング氏によって提唱され、世界で広く普及しました。
PDCAサイクルでは4つのプロセスを繰り返し行い、各段階で修正や改善を加えながら次の計画に反映させることで、業務効率化や精度向上をめざすものです。
PDCAの手法は、品質管理における国際標準化機構「ISO認証」の規格にも取り入れられており、業界や業種に関係なく、セルフマネジメントの基礎として広く利用されています。たとえば、ISO14001では、PDCAサイクルが基本構造の土台となっており、ISO9001では、認証を受ける際にPDCAサイクルの運用が求められます。
PDCAの目的は、継続的な業務改善や品質向上を通じて、事業やプロジェクトを発展させることです。ビジネスに限らず、個人の目標達成にも活用でき、自己評価や目標設定、計画策定の際に役立ちます。
OODAとの違い
PDCAとOODAは、どちらも問題解決や意思決定のための手法ですが、アプローチ方法が異なります。
まず、PDCAは先述の4つのステップからなるサイクルであり、このプロセスを繰り返すことで、問題解決や目標達成をめざします。
一方で、OODAは以下の4つのステップからなるサイクルです。
- Observe(観察):現状を観察し、競合や自社の状況を把握する
- Orient(方向づけ):収集した情報を基に、方向性を明確にする
- Decide(決定):現状を踏まえて具体的な行動計画を立てる
- Act(行動):計画に沿って実行する
PDCAは計画から始まりますが、OODAは現状の観察から始まります。OODAは現場が起点となっていることから、臨機応変な対応や調整を行いやすいという特徴があります。
どちらの手法も、問題解決や意思決定に役立つものですが、状況や目的に応じて使い分けることが重要です。PDCAは計画性や具体性を重視する場合に適しており、OODAは迅速な意思決定や行動が求められる状況で特に有効です。
PDCAサイクルにおける4つのプロセス
PDCAは4つのプロセスから成り立ちますが、各プロセスの意義を理解していなければPDCAサイクルは回せません。ここでは、PDCAサイクルの4つのプロセスについて、それぞれ詳しく解説します。
Plan(計画)
「Plan(計画)」は、PDCAサイクルの最初のステップであり、計画を立てることです。計画を立てる際には、目標や目的を明確に定めることが不可欠です。具体的で実現可能な目標設定を行うことで、PDCAサイクル全体の効果を最大化できます。
また、リソースの適切な配分や期限の設定などの具体的な計画書を、数値を基に作成することも重要です。計画を策定する際には、「誰が(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「いくらで(How much)」という「5W2H」の考え方を意識すると良いでしょう。
PDCAサイクルのPlan(計画)フェーズを確実に進めることで、効果的な業務改善やプロジェクト管理が可能になります。計画を立てる際には、チーム全体での共有やフィードバックを活用し、より良い計画を作成することがポイントです。
Do(実行)
「Do(実行)」の段階では、立てた計画に基づいて行動し、問題解決や目標達成に向けて作業を進めます。必要な情報や資源を適切に整理し、実施に必要な条件を整えましょう。
計画の実行中に必要な修正や調整が発生した場合は、迅速に対応し、適切な措置を講じることが重要です。
またチームメンバー間の情報共有や、円滑なコミュニケーションを意識して行うことで、計画の実行を円滑に進めやすくなります。
Check(測定・評価)
「Check(測定・評価)」は、結果を評価し、目標の進捗状況を確認する重要なステップです。この段階でPDCAサイクル全体を通して有益な情報を収集することで、組織の方向性を維持し、必要に応じて戦略を修正することにつながります。
Checkでは、適切な尺度を用いてデータを収集し、客観的に評価を行うことが重要です。また、目標を達成するために必要な施策が機能しているかどうかを確認することも大切です。これにより、課題を特定し、次の段階への改善点を見つけられます。
Action(対策・改善)
「Action(対策・改善)」はCheckの分析結果を基に、改善すべき点を検討するプロセスです。複数の改善策が提示された場合は、優先順位をつけて優先度の高いものから実施していきましょう。
結果につながっていない場合は、計画の変更や組み直しだけでなく、計画の中止や延期も検討したほうが良いケースもあります。
Actionが完了し、次に向けた対策や改善策が明確になったら、再度Planのステップへ戻り、PDCAサイクルをくり返していきましょう。
PDCAを取り入れるメリット
PDCAは業務改善を行うために必要なフレームワークであり、導入することで多くのメリットがあります。ここでは、PDCAを取り入れる3つのメリットについて解説します。
目標・やるべきこと・改善点が明確になる
PDCAを用いることで、目標や行動計画が明確になります。それらを基に継続的な改善を行うことで、より良い成果を得ることができます。
目標や実行すべきことが不透明な場合、本来めざすべき目標との乖離(かいり)を引き起こすことや、具体的な戦略を立てにくいことが懸念されます。PDCAによって、数値的指標を用いた明確な目標設定を行うことで、目標達成や問題解決に向けた具体的な戦略を立てやすくなります。
重要度の高い業務に集中して取り組める
二つ目のメリットは、重要な業務に焦点を絞り、効果的に取り組みやすくなることです。PDCAの計画段階で目標やアクションプランを定義するため、達成するための行動が明確になり、業務に集中して取り組みやすくなります。
最短経路で目標に向かえるだけでなく、優先すべき業務も明確になります。これにより、チームメンバー一人ひとりが自身の役割を理解し、業務改善に積極的に取り組めるようになるでしょう。
目標やアクションプランへの理解は、行動や作業への集中力に大きな影響を与えます。計画段階で策定した目標や計画に向かって集中力を高めることで、生産性の向上も期待できます。
目標を達成するためのスキルが高まる
PDCAサイクルの継続的な活用は、計画能力・実践力・検証力・改善力などのスキル習得にも寄与します。
組織にPDCAサイクルの考え方が浸透し定着することで、再現性のある目標達成が可能になります。そのため、目標を達成できなかった場合でも、外部要因ではなく自己責任として受け止めることができるようになるでしょう。
こうした目標達成に必要なスキルは、時代や市場の変化に対応するために欠かせない能力です。これらのスキルを磨くことで、企業だけでなく、従業員の成長にもつながるでしょう。
PDCAサイクルを効果的に回すコツ
PDCAサイクルを効果的に回すためには、いくつか意識すべきコツがあります。
ここでは、PDCAを回す際の3つのコツをご紹介します。
明確で実現可能な目標を設定する
Planで目標を設定する際には、具体的な数値を使用することがポイントです。
「売り上げを向上させる」「チームに貢献する」といった曖昧な目標では、実際に行動に移すことが難しくなり、従業員のモチベーション低下にもつながりかねないため、「半年以内に売り上げを2倍にする」など、できるだけ具体的な目標を設定することが重要です。
ただし、極端に高い目標を設定すると、実現不可能な状況に陥る可能性があるため、現実的かつ達成可能な目標を設定する必要があります。
サイクルを回すスケジュール感を決めておく
PDCAサイクルの回転が滞ると、改善のスピードが遅くなるため、あらかじめ目安となるスケジュールを決めておくことも重要です。
チームの管理担当者は、スケジュールを設定するだけでなく、Planの進捗状況を定期的にチェックし、次の改善策を提案するように意識するようにしましょう。進捗を定期的に確認するために、特定の曜日と時間を決めて実施することや、チーム全体でタスクやスケジュールを共有し、お互いにチェックする方法もおすすめです。
目標や進捗を数値化し記録する
目標や進捗について、具体的な数字を記録することもコツの一つです。たとえば、「法人営業部全体の売り上げを、1年以内に2倍にする」といった目標を設定した場合、売り上げを伸ばした担当者やその時期を明確に記録するべきです。
数字が未記録の場合、成功や失敗の要因を適切に分析することが困難になりますが、成功や失敗の要因を数値化しておくことで、改善点も見つけやすくなるでしょう。
PDCAのよくある失敗と対策
PDCAサイクルが適切に機能しない場合、さまざまな原因が考えられます。ここでは、PDCAの各段階でよくある失敗と対策をご紹介しますので、自社の課題と照らし合わせながら参考にしてみてください。
Plan:計画立案に時間をかけすぎてしまう
PDCAにおけるPlanの段階での失敗として、完璧な計画を追求するために時間をかけすぎてしまい、実行に移すことができないことがあげられます。
計画を立てる過程で時間を過度に費やすと、現状とのギャップが生じる恐れがあるため、計画作成に過剰な時間を費やすことは避けましょう。
また、計画を立てたらすぐに実行に移すことも重要です。Plan(計画)の段階では、「現時点で適切と考えられる計画を立て、即座に行動する」という意識が必要です。
PDCAの目的は、計画を策定しながら実行・評価・改善することです。失敗から学び、改善することがPDCAの本質と認識し、計画策定時には、慎重さとスピード感のバランスを保ちながら進めましょう。
Do:計画通り実行できていない
Doにおけるよくある失敗は、計画通り実行できていないことです。要因として、計画が実行可能なレベルで立てられていないことが考えられます。具体的な行動計画が不足している場合は、Planの段階に立ち戻り、計画を再検討する必要があります。
計画に沿って実行できない要因には、失敗を恐れて実行に踏み出せないといったケースもあるでしょう。リスクを取ることや失敗することへの恐れが実行を妨げることがありますが、PDCAのフレームワークでは「失敗は学びの機会」ととらえ、失敗を恐れずに実行に移し、必要に応じて計画を修正していくことが重要です。
Check:実行後の効果検証が滞っている
Check(評価)におけるよくある失敗は、実行後の効果検証が滞ってしまうことです。具体的な要因として、次の2つがあげられます。
まず、十分な評価を行わずに、改善を急いでしまうことです。成果を急ぎたいときほど、焦って次に進みがちですが、PDCAサイクルでは、特にCheckの段階で時間を十分に取ることが重要です。
効果的な改善策を導くためには、個々の問題や課題を詳細に分析することが必要であるため、評価した結果を丁寧に検討し、そこから得た知見を次の施策に生かしていくことを意識しましょう。
また、形式的な評価しか行わないことも要因の一つです。チームで活動する場合、PDCAサイクルを回すための定例会議や振り返りが重要ですが、具体的な数値目標やアクションプランが不明確なまま行うと、有意義な振り返りができません。
この場合の対策として、定量目標を設定し、PDCAサイクルを回すための具体的な計画を立てることが重要です。評価できるような計画を作成するためには、Planの段階に戻り、あらためて計画を精査する必要があります。
Action:改善案が適切でない
Actionにおける失敗として、改善策が適切でなかったという誤りもあります。
例えば、ある企業が売り上げを増やすために新しいマーケティング戦略を導入することを決定したとしましょう。しかし、その戦略が顧客に受け入れられず、売り上げが伸びなかった場合、改善策が適切でなかったと判断できます。
Actionが機能していない場合は、目標の達成が困難であるか、優先すべき課題が異なっているか、あるいは課題の解決策や具体的な行動項目が適切でないか、といった点を見極めることが重要です。
まとめ
PDCAは、業務改善や品質向上などの目的を達成するための、仮説と検証のプロセスを循環させるフレームワークです。PDCAを取り入れることで、目標・やるべきこと・改善点が明確になり、重要度の高い業務に集中して取り組みやすくなります。
ただし、PDCAサイクルはやみくもに実行するだけでは成果につながらないこともあります。対策として、実現可能な目標やスケジュールを立て、進捗を数字で記録していくことで、PDCAサイクルが効果的に回り、業務改善に役立つでしょう。
3分でわかる Sansan
営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。
ライター
営業DX Handbook 編集部