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カスタマーサクセスの重要KPI10項目|効果的な設定や活用法を解説

カスタマーサクセスの重要KPI10項目|効果的な設定や活用法を解説

カスタマーサクセスの成果を測定し、効果的に運用するためには、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。

しかし、多くの企業がその選定や活用に苦心しているのが現状です。本記事では、カスタマーサクセスに特化した10の重要KPIを紹介し、その設定方法と効果的な活用法を解説します。

KPIを適切に運用することで、顧客満足度の向上と売上増加を実現し、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、顧客が自社の製品やサービスを最大限に活用し、その結果としてビジネスの成功を実現できるよう支援する活動、またはその活動に従事する組織を指します。

カスタマーサクセスの目的は、単に顧客に製品を使わせるだけではなく、顧客のビジネス目標達成をサポートしながら、最終的には顧客が自律的に成功を継続できるよう支援することです。

顧客との関係は長期的なものであり、カスタマーサクセスの役割は、顧客の成功に向けた戦略を策定し、その進行を見守りながら、適宜支援を行うことにあります。

例えば、製品の導入や活用に向けた具体的なサポート、顧客の利用状況をモニタリングして適切なアドバイスを提供すること、活用セミナーやコミュニティーの運営を通じて知識共有を図ることなどです。

このような活動を通じ顧客がビジネスの成功を実感することで、結果的には企業としての成長や収益増加にもつながるため、カスタマーサクセスは企業にとって重要な取り組みとされています。

KPIがカスタマーサクセスにもたらす影響

KPIを設定することで、組織は顧客との関係性を数値で把握し、データに基づいた意思決定を行えるようになります。

これにより、顧客満足度や製品の利用率を向上させるための戦略を効率的に策定・実行できるようになり、顧客との長期的な信頼関係の構築や、収益の向上にも寄与します。

ちなみにKPI(重要業績評価指標)とは、カスタマーサクセスにおける成果を定量的に測定するための指標のことです。

また、KPIを活用することで、顧客の成功が企業の成長に直結することを明確にし、顧客満足度が売り上げやリテンション(継続率)に与える影響を見える化できます。

これにより、企業全体でカスタマーサクセスの重要性を共有し、より強力なカスタマーサクセス戦略を実行できるようになるのです。

カスタマーサクセスの重要KPI10項目

カスタマーサクセスを効果的に推進するためには、定量的にパフォーマンスを評価できるKPIの設定が欠かせません。特に以下の10項目は、顧客との関係性やビジネス成長を直接的に示す重要な指標です。

それぞれのKPIが企業に与える影響と、その計測・活用方法について解説していきます。

1.顧客継続率(リテンションレート)

顧客継続率の概念を示した図

顧客継続率は、既存顧客が一定期間内にサービスを継続して利用している割合を示します。計算方法は「継続顧客数 ÷ 総顧客数 × 100」で表され、業界平均を基に目標設定を行います。

継続率を高めるためには、定期的なフォローアップや顧客体験の改善が重要です。

2.解約率(チャーンレート)

チャーンレートの定義を示した図

解約率は、リテンションレートの反対に位置し、一定期間内にサービスを解約した顧客の割合を示します。

顧客がなぜ離れていくのかを把握し、解約理由を分析することが重要です。解約率を下げるためには、予防的な施策や顧客サポートの強化が有効です。

3.CSAT(顧客満足度スコア)

CSATは、顧客がどれだけサービスに満足しているかを示す指標です。

調査によって顧客から直接フィードバックを収集し、スコアを算出します。定期的にCSATを測定し、フィードバックを基にサービス改善を進めることで、顧客満足度を高めることができます。

4.NPS(ネットプロモータースコア)

NPSの定義を示した図

NPSは、顧客がどれだけそのサービスを他者に推薦するかを測る指標で、推奨者と批判者の割合を基に算出されます。CSATと違い、NPSは顧客のロイヤリティを測るため、長期的な関係性に重点を置いた分析が可能です。

5.LTV(顧客生涯価値)

LTVは、顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益を示す指標です。顧客獲得コスト(CAC)と併せて計算することで、ビジネスの健全性を測ることができます。

LTVを高めるには、長期的なリテンション戦略やアップセル・クロスセルが効果的です。

6.オンボーディング完了率

オンボーディング完了率の定義を示した図

オンボーディング完了率は、顧客が製品やサービスを使い始めるプロセスがどれだけスムーズに完了したかを示します。

オンボーディングが順調に進むことで、顧客の早期離脱を防ぎ、長期的な成功につながります。

7.アップセル・クロスセル率

アップセル・クロスセルの概要を示した図

アップセル・クロスセル率は、既存顧客に対して追加のサービスや製品を販売する成功率を示します。

適切なタイミングと提案内容が鍵となり、顧客との関係を深め、収益向上につながります。

8.NRR(売上維持率)

NRRとMRRの違いを示した図

NRRは、既存顧客からの売り上げがどれだけ維持されているかを示す指標で、解約やダウングレードの影響を含みます。

MRR(毎月の定期売上)と共に分析することで、顧客ベースの健全性を把握できます。

9.顧客健全性スコア

顧客健全性スコアの定義を示した図

顧客健全性スコアは、顧客の成功度合いを数値化したものです。

利用頻度やサポート履歴、契約更新率などを基にスコアリングし、潜在的なリスクを早期に察知して対策を講じることができます。

10.CSQL

CSQLの定義を示した図

CSQL(Customer Success Qualified Lead)は、顧客が成功するために必要な条件を満たした見込み客を指します。

具体的には、顧客が製品やサービスを効果的に利用できる可能性があるターゲットを特定することを目的としています。

CSQLの基準を設定することで、実際の顧客体験に基づいた評価が可能になり、企業は顧客の成功を重視したアプローチを取ることができます。

カスタマーサクセスのKPI設定手順

カスタマーサクセスとKPIの関連性について理解したところで、次は具体的なKPIの設定手順を見ていきましょう。

それぞれ詳しく解説します。

1.ビジネス目標の明確化

まず、カスタマーサクセスチームの目標を明確にします。例えば、「顧客継続率を10%向上させる」や「NPS(顧客推奨度)を20ポイント上げる」などです。

これらの目標は、全社の戦略目標と整合性が取れていることが重要です。 

なぜなら、カスタマーサクセスの取り組みが全社のビジネス戦略と一致していないと、部門間の連携がうまくいかず、効率的に目標を達成できない可能性があるからです。

2.主要KPIの選定

明確にした目標に基づいて、測定すべき主要なKPIを選びます。この際、SMART基準(具体的、測定可能、達成可能、関連性、期限付き)を適用し、各KPIの定義を明確にします。

新規顧客のオンボーディング成功率を向上させるという目標に対しては、オンボーディング完了率を主要KPIとして選定するなどです。

この場合、「30日以内に製品の主要機能を使用した新規顧客の割合」と具体的に定義することで、測定可能かつ明確なKPIとなります。

3.KPIの優先順位付け

選定したKPIに優先順位をつけます。リソースの制約を考慮し、最も重要で影響力の大きいKPIから順に並べます。

例えば、短期的にはオンボーディング期間中の顧客満足度を重視し、長期的には顧客の継続率や顧客生涯価値(LTV)を向上させることを目指すなど、カスタマーサクセスにおける段階的な目標設定が考えられます。

4.測定方法とデータソースの決定

各KPIをどのように測定するか、そのデータをどこから取得するかを決めます。

例えば、NPS測定のためのアンケート設計や、顧客継続率計算のためのデータベース構築などを行います。必要に応じて、新しいツールやシステムの導入を検討します。

5.レビューと調整プロセスの確立

KPIの有効性を定期的に評価し、必要に応じて調整するプロセスを確立します。

四半期ごとにKPIの達成状況を確認し、年に1回大きな見直しを行うなどのスケジュールを決めます。

また、市場環境の変化に応じて柔軟に対応できるよう、臨時のレビュー基準も設定しておきましょう。

KPIの活用と改善のサイクル

KPI(重要業績評価指標)は、組織のパフォーマンスを測定し、改善に向けた行動を導くために重要な指標です。です。

KPIを適切に活用し、改善のサイクルを確立することで、組織は顧客満足度や業務効率を向上させることができます。ここでは、KPIを活用するための具体的な手順を解説します。

1.効果的なデータ収集

 KPIの測定には、正確なデータが不可欠です。必要なデータソースには、顧客アンケート、取引履歴、システムログなどがあります。

これらのデータを集めることで、KPIを計算し、進捗を把握することができます。

また、データ品質の確保も重要です。正確で信頼できるデータを収集することで、KPIの有効性を高め、意思決定におけるリスクを軽減できます。

2.KPIダッシュボードの構築と可視化

KPIを効果的に活用するためには、見やすいダッシュボードの設計が必要です。ダッシュボードでは、重要なKPIをリアルタイムで表示し、組織全体のパフォーマンスを一目で把握できるようにします。

特に、リアルタイム更新機能は、迅速な意思決定を可能にし、変化に迅速に対応するための鍵となります。

3.定期的なKPI評価と改善点の特定

KPIの効果的な評価は、組織の成長にとって不可欠です。定期的なレビューを行い、KPIのトレンドを分析することで、パフォーマンスの向上につながる改善点を特定できます。

トレンド分析に加え、予測機能を活用することで、未来の成果を見越した戦略を策定しやすくなります。改善機会を特定した後は、それに優先順位を付け、適切な行動を計画します。

4.KPIに基づく戦略の調整と最適化

データ駆動型の意思決定プロセスを構築することで、KPIに基づいた迅速な戦略調整が可能になります。

A/Bテストを活用し、異なるアプローチの効果を比較することで、最も効果的な戦略を見つけ出します。

このようにして、KPIに基づいたPDCAサイクルを迅速に回すことができ、市場における組織の競争力を高めます。

5.KPI改善のためのアクションプラン策定と実行

KPIを改善するためには、具体的な行動計画の策定が欠かせません。アクションプランには、目標達成のための具体的なステップや施策を含める必要があります。

さらに、各施策の責任者や期限を明確に設定することで、実行の確実性が高まります。これにより、組織はより効果的にKPI改善を進めることができます。

カスタマーサクセスを改善するポイント

カスタマーサクセスを向上させるためには、顧客からのフィードバックを活用し、顧客満足度を向上する工夫が必要です。

また、問題が起こる前にサポートを提供する体制を整えることも重要です。さらに、顧客に製品やサービスの効果的な使い方を教えるプログラムを開発することも欠かせません。これらのポイントを具体的に見ていきましょう。

ユーザーフィードバックの活用

顧客からのフィードバックは、カスタマーサクセスの改善に欠かせません。NPS調査やサポートチケットの内容分析を通じて、顧客の声を系統的に収集し、データとして分析します。

この分析により、顧客が抱える問題やニーズを明確にし、どのような改善が必要かを把握できます。また、フィードバックを製品改善やサービス向上に生かす仕組みを整えることで、顧客満足度を高めることが可能です。

カスタマージャーニーの最適化

カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知り、購入し、使用するまでの一連の流れを指します。

この流れを最適化するためには、顧客の利用状況データを分析し、つまずきやすいポイントを特定することが重要です。

具体的には、オンボーディングプロセスの改善や、ユーザーインターフェースの最適化を行うことで、顧客の満足度を向上させることができます。

顧客の問題予測とサポート体制の構築

顧客の行動データを分析して、問題が発生する前に予測し、サポートを行う体制を構築しておくことも重要です。

具体的には、利用データをもとに顧客の利用状況を把握し、潜在的な問題を特定します。これにより、顧客が困る前に適切なサポートを提供することが可能になります。

例えば、AIやマシンラーニングを利用して、問題の発生を事前に察知する予測モデルを構築し、自動化されたサポートシステムを導入することで、迅速で効率的なサポートが実現します。

これにより、顧客満足度の向上や、サポートコストの削減が期待できます。

教育プログラムの開発

顧客に製品やサービスの効果的な活用方法を教育するプログラムも構築しておくと良いでしょう。

例えば、オンラインセミナーやウェビナー、ナレッジベースの充実などを通じて顧客に有益な情報を提供します。

これにより、顧客は自ら製品やサービスを最大限に活用できるようになり、カスタマーサクセスを支援する体制を強化することが可能です。

まとめ

今回は、カスタマーサクセスの効果を測定し、ビジネスの成長を追跡するための10の重要なKPI(重要業績評価指標)について詳しく解説しました。

KPI運用を効率的にするためには、正確で信頼性の高い顧客データが不可欠です。この点で、Sansanは、カスタマーサクセス戦略の強力な味方になるでしょう。

Sansanを活用することで、名刺やメールといった接点情報を全社で共有できるデータベースを構築。企業情報や営業活動の履歴も一元管理できるようにすることで、より精度の高いKPI管理が実現し、カスタマーサクセス戦略の効果を最大化します。

データドリブンなカスタマーサクセス活動を展開することで、顧客との長期的な関係構築と、ビジネスの持続的な成長を実現しましょう。適切なKPI設定と、それを支える強力なデータ管理ツールの活用が、今後の企業成長の鍵となるでしょう。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。