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マーケティングファネルとは?効果的な活用方法とフェーズ別の施策例を解説
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マーケティングファネルは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでのプロセスを示すフレームワークです。データに基づいた戦略立案を可能にし、成果を高める手法として広く活用されています。
しかし、急速に変化するビジネス環境では、マーケティングファネルがすべてのビジネスに適用できるとは限りません。成果につなげるには、あらかじめマーケティングファネルの特徴を押さえておくことが大切です。
本記事では、マーケティングファネルの基本概念と、効果的な活用方法について解説します。
マーケティングでの活用メリットをご紹介
マーケティングファネルとは

マーケティングファネルは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの流れを示すフレームワークです。
認知段階では多くの見込み顧客がいますが、興味・関心、比較・検討とフェーズが進むにつれて人数は減少し、最終的に購入に至るのは一部に限られます。この形状が漏斗に似ていることから「ファネル(Funnel)」と名付けられました。
とくに、BtoBビジネスにおいては、購買までのプロセスが長期化しやすく、複数の関係者が意思決定に関わるため、マーケティングファネルを段階的な戦略設計に活用しやすい特徴があります。
そのため、本記事ではよりファネルが生きるBtoBビジネスに焦点を当てながら、各フェーズにおける施策の考え方を解説します。
なお、類似概念として「カスタマージャーニー」があります。
マーケティングファネルが企業視点で購買プロセスを整理するのに対し、カスタマージャーニーは顧客視点で意思決定の流れを可視化するフレームワークです。
BtoBでは、両者を併用することで、より実効性のあるマーケティング戦略を構築できます。
マーケティングファネルの種類

ここでは、マーケティングファネルの種類について見ていきましょう。
パーチェスファネル

パーチェスファネルは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの購買プロセスを段階的に整理したフレームワークです。
語源の「purchase」とは「購入」を意味し一般的に「認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 購入」の流れで構成されています。このファネルを活用することで、各フェーズでの顧客の動きを可視化して、離脱ポイントを特定することが可能です。
BtoBでは購買プロセスが長期化しやすいため、各フェーズで適切な情報を提供する必要があります。
例えば、認知フェーズではホワイトペーパーやウェビナーを活用して、潜在顧客に自社のサービスを知る機会を提供したり、比較・検討フェーズでは、導入事例や製品デモを提供したりするなど、顧客が具体的な導入イメージを持ちやすくするなどの対策が考えられます。
これらの施策を適切に組み合わせることで、コンバージョン率の向上が期待できます。
インフルエンスファネル

インフルエンスファネルは、顧客が商品を購入した後の行動に注目するフレームワークです。
BtoBでは一度きりの取引ではなく、長期的な関係構築や継続利用が重要になるため、購入後のフェーズにも注力する必要があります。
「継続利用 →顧客ロイヤリティ向上 → 共有・紹介 → 推奨」というフェーズに分類されているのが特徴です。
顧客に継続利用を促すには、適切なオンボーディングとアフターサポートが欠かせません。
ロイヤリティを高めるには、ユーザーコミュニティーや限定コンテンツの提供が有効です。
顧客が製品の価値を十分に理解して満足度が向上すると、共有・紹介のフェーズへと移行しやすくなります。成功事例の公開や口コミ施策を活用すれば、新規顧客の獲得にもつなげられるでしょう。
ダブルファネル

ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたフレームワークです。
BtoBでは、新規顧客の獲得と既存顧客の維持・推奨の両方を重視する必要があるため、この2つのファネルを連携させることで、マーケティング全体の成果を最大化できます。
このファネルはさらに、「プロモーション → アクイジション → リテンション → インフルエンス」の4つのフェーズに分けられます。
それぞれ、見込み顧客への認知拡大を目的とする「プロモーション」、顧客の獲得を目指す「アクイジション」、継続利用を促す「リテンション」、顧客による紹介や推奨を促進する「インフルエンス」です。
BtoBにおける顧客との関係を長期的に構築していくうえで、これらのフェーズを意識した取り組みが重要になります。
各施策の例は以下の通りです。
- プロモーションフェーズ
広告やSEOなどの施策を活用して認知を拡大 - アクイジションフェーズ
コンテンツマーケティングや無料トライアルを提供して商談化を促進 - リテンションフェーズ
カスタマーサクセスチームの活用や定期フォローを行い継続利用を支援 - インフルエンスフェーズ
導入企業の事例インタビューや口コミ施策を展開
これにより、新規顧客の獲得と既存顧客のロイヤリティ向上の両方を実現できます。
ファネルに関する詳しい解説は下記記事をご覧ください。
マーケティングファネルの効果的な活用方法

マーケティングファネルは、営業活動や広告施策など幅広い領域で活用されていますが、本項ではWebマーケティングにおける活用に焦点を当てて解説します。
Webマーケティングはユーザーの行動データを取得しやすく、各フェーズを可視化・最適化しやすいため、マーケティングファネルとの親和性が高いのが特徴です。
ここでは、Webマーケティングにおいてマーケティングファネルの具体的な活用方法について見ていきましょう。
顧客の購買プロセスを可視化する
マーケティングファネルを効果的に活用するには、まず顧客の購買プロセスを可視化することが重要です。
認知・興味関心・比較検討・意思決定といった各フェーズごとに、リード数やコンバージョン率を分析することで、データに基づいた施策を検討できます。
GoogleアナリティクスやMAツールを活用すれば、どのフェーズで離脱が発生しているのかを把握できます。例えば、Webサイトの訪問者は多いのに問い合わせが少ない場合、CTAの見直しやランディングページの改善などが必要です。
購買プロセスをデータで可視化して、どの部分に課題があるのかを明確にしましょう。
課題を特定して改善策を立案する
可視化したデータをもとに、課題を特定して適切な改善策を立案します。
例えば、商談の機会は多いものの成約率が低い場合は、競合との比較を強化したコンテンツや、顧客の課題を深く聞き出すヒアリングの見直しなどが必要です。
改善策を実施する際はA/Bテストを活用し、小規模な変更を繰り返しながら精度を高めていきます。また、営業チームと連携して失注理由を定期的にヒアリング・分析することで、より実践的な改善策を考えられるでしょう。
顧客ごとに適切な施策を設計する
ターゲット企業の業種や企業規模に応じて適切な施策を設計します。
例えば、決裁プロセスが複雑な大企業向けには、導入事例やROIに関する詳細なレポートを提供し、社内稟議を後押しするサポートが効果的です。一方、スタートアップや中小企業には、無料トライアルや導入コストを抑えたプランを打ち出すことで、迅速な意思決定を促すとよいでしょう。
また、セグメント別のメールマーケティングや、ペルソナごとにカスタマイズしたコンテンツを提供することで、商談化率や成約率の向上が期待できます。
このように、ターゲットに合わせた施策を展開して、成果を高めることが大切です。
マーケティングファネルの重要性とは

マーケティングファネルは、施策の優先順位を整理して成果につなげるための指針として幅広く活用されています。
ここでは引き続き、Webマーケティングにおけるマーケティングファネルの重要性について見ていきましょう。
データドリブンな意思決定ができる
マーケティングファネルを活用すると、データに基づいた意思決定が可能になります。
各フェーズのコンバージョン率を把握することで、顧客がどの段階で離脱しているのかを明確にできるのが強みです。
- 認知フェーズ:広告のインプレッションやクリック数
- 興味・関心フェーズ:サイト滞在時間や資料ダウンロード数
- 比較・検討フェーズ:問い合わせ数
例えば、上記のような要素を分析することで、ボトルネックを特定しやすくなります。
データに基づく分析を行えば、感覚的な判断ではなく定量的な根拠をもとにマーケティング戦略を最適化できるようになるでしょう。
営業部門とマーケティング部門の連携を強化できる
マーケティングファネルは、営業部門とマーケティング部門の連携を強化する際にも重要です。
ファネルの各フェーズでリードの質や購買意欲を明確にすることで、営業部門が適切なタイミングでアプローチしやすくなります。
例えば、マーケティング部門が興味・関心フェーズでナーチャリングしたリードをホットリードとして営業に引き継げば、成約率の向上につながるでしょう。
部門間の連携をスムーズにできれば、リードの機会損失を防ぎ、営業の成果を最大化できます。
BtoBの長期的なリード育成に役立つ
マーケティングファネルは、BtoBにおける長期的なリード育成にも役立ちます。
BtoBビジネスでは意思決定に時間がかかるため、購買フェーズごとに適切な情報提供を行う取り組みが重要です。
例えば、ホワイトペーパーのダウンロード履歴やウェビナーの参加データをもとに、見込み顧客ごとに最適なコンテンツを提供することで、購買意欲を高められます。
このように、ファネルを活用して長期的にリードを育成していけば、短期的な成果だけでなく継続的な関係構築にも役立つでしょう。
マーケティングファネルの考え方が古いと言われる理由とは

マーケティングファネルは長年にわたり活用されてきたフレームワークですが、最近ではしばしばその有効性について指摘されることも増えています。
その背景には、BtoCにおける消費者行動の変化と、BtoBにおける購買プロセスの違いが関係しています。
ここでは、マーケティングファネルの考え方が古いと言われる理由について見ていきましょう。
BtoCでは消費者行動の多様化により古くなりつつある
BtoC市場においては、消費者行動の多様化により、従来のマーケティングファネルの有効性が薄れつつあります。
これは情報収集の手段が増えて、購買決定までのプロセスが複雑になったためです。
例えば、現在の消費者は以下のような行動が考えられます。
- ECサイトで商品を閲覧した後、YouTubeでレビュー動画を確認
- 比較サイトやSNSで評判をチェック
- 実店舗で商品をチェックしてからオンラインで購入
といった非線形な行動を取る傾向があります。
このように、消費者の意思決定プロセスが複雑化したことで、従来の「認知 → 興味・関心 → 比較・検討 → 購入」という直線的なファネルモデルでは、実態を正確に把握しにくくなってきました。
BtoCではマーケティングファネルよりも、カスタマージャーニーなどのより柔軟なフレームワークの活用が求められています。
BtoB領域ではBtoCよりも有効性が高い傾向にある
一方BtoBでのマーケティングファネルは、BtoCと比較して有効性が高いと考えられています。
BtoBの購買プロセスは、BtoCのように個人の意思決定で完結するものではなく、段階的かつ複雑であり、複数の関係者が関与するためです。
例えば、BtoBの購買プロセスには以下の特徴があります。
- 情報収集(例:市場調査、展示会、セミナー参加)
- 複数の製品を比較検討
- 社内稟議および経営層の承認
- 契約・導入
このように、BtoBでは購買決定までに時間がかかり、複数の関係者が関与するのが一般的です。
そのため、各フェーズを明確に捉えられるマーケティングファネルが効果を発揮します。
ただし、すべての企業や商材において万能ではなく近年ではカスタマージャーニーやアカウントベースドマーケティング(ABM)を組み合わせて、より効果的なマーケティング戦略を構築する動きも増えています。
マーケティングファネルのフェーズごとに適した施策例

ここでは、マーケティングファネルのフェーズごとに効果的な施策例を紹介します。
認知フェーズに適した施策例
認知フェーズでは、ターゲット顧客がまだ自社の存在を知らない段階のため、広く情報を発信して、ブランドやサービスの認知度を高める施策が効果的です。
特にBtoBではターゲット企業が限定されやすいので、適切なチャネルを選び、効率的にアプローチする必要があるでしょう。
具体的な施策例は以下の通りです。
- Web広告・SEO
検索エンジンやディスプレイ広告を活用し、ターゲットにアプローチ - SNS運用
LinkedInやXなど、ターゲットに適したプラットフォームで情報発信 - オウンドメディア運用
業界のトレンドや課題をテーマにした記事を発信し、検索エンジン経由で流入を増やす - 業界専門メディアでの情報発信
ターゲットがよく利用するメディアに記事や広告を掲載
自社のサービスに関心を持つ可能性の高い層へ向けて、適切なメディアを活用するのがポイントです。
ターゲットごとに最適なコンテンツを提供し、興味を引くことが認知拡大への鍵となります。
興味・関心フェーズに適した施策例
興味・関心フェーズでは、顧客が自社のサービスに興味を持ち始めた段階のため、関心を維持させつつ、比較・検討フェーズへと自然に移行させる施策が必要です。
具体的な施策例は以下の通りです。
- ホワイトペーパー・eBookの提供
業界の課題解決に役立つ資料を提供し、リードを獲得 - セミナー・ウェビナーの開催
専門的な知見を共有し、見込み顧客との関係を深める - リターゲティング広告
過去にWebサイトを訪問したが問い合わせに至らなかった顧客に対し、追加情報を提供 - メールマーケティング
業界トレンドや導入事例を定期的に配信し、関心を維持
興味・関心フェーズでは、単なる認知だけでなく「もっと知りたい」と思わせるコンテンツを用意するのが効果的です。
顧客が求める情報を提供して、自社により興味を持ってもらえるように対策を行いましょう。
ターゲットごとに適切な情報提供を行うことで、リードの関心を維持し、育成の成功率が高まります。
比較・検討フェーズに適した施策例
比較・検討フェーズでは、顧客が複数の製品やサービスを比較しながら、自社の選定を検討する段階です。この段階では、競合との差別化ポイントや導入メリットを明確に伝える施策が求められます。
具体的な施策例は以下の通りです。
- 導入事例の提供
類似業界・企業の成功事例を紹介し、導入後のイメージを具体化 - 無料トライアル・デモの実施
実際にサービスを試せる環境を整え、検討を後押し - FAQ・競合比較コンテンツの充実
顧客の疑問を解消し、自社の強みを明確にする - 個別相談・無料コンサルティングの提供
営業部門と連携し、具体的な提案を行う
顧客はこの段階で複数の選択肢を比較しています。
他社と比較した際の強みを伝えて、導入後の具体的なメリットを明確にする施策が重要です。
意思決定フェーズに適した施策例
意思決定フェーズでは、顧客が導入を最終判断する段階です。
そのため、決裁者が納得できる情報を提供して、導入を後押しする施策が求められます。
特にBtoBでは、導入に複数の関係者が関与するため、定量的かつ信頼性の高い情報提供を意識しましょう。
具体的な施策例は以下の通りです。
- ROI(投資対効果)の明示
導入による費用対効果を数値化し、意思決定を支援 - 契約特典・キャンペーンの実施
割引や特典を提供し、導入の決断を後押し - 成功事例の活用
既存顧客の推薦コメントや導入企業の成果を共有し、信頼感を高める - 営業部門との連携強化
商談時の疑問を解消し、決裁プロセスをスムーズに進める
決裁者の不安を取り除き、導入による具体的なメリットを明確に伝える取り組みがポイントです。
意思決定フェーズでは、決裁者が納得できる根拠を示すことが重要です。
まとめ
マーケティングファネルは、リード獲得から成約までのプロセスを最適化するための重要なフレームワークです。
各フェーズに適した施策を実施することで、商談率や成約率の向上につなげることができます。
営業やマーケティング活動に課題を感じている方は、ぜひSansanの活用をご検討ください。

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ライター
営業DX Handbook 編集部