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クロージングとは?営業活動における重要性や成約率を上げるコツまで解説
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営業活動の最終段階にあたる「クロージング」は、顧客に契約の意思決定を促す重要なステップです。適切なクロージングの流れやコツを理解することで、顧客のニーズに応える効果的な提案を行いやすくなり、結果として成約率の向上が期待できます。
本記事ではクロージングの本質とその重要性を掘り下げ、営業成績を向上させるためのクロージング技術について詳しく解説します。
クロージングとは
クロージング(Closing)とは、日本語で「完結」や「締めくくり」を意味し、営業活動においては商談を契約へとつなげる最終段階を指します。
営業活動は顧客訪問から始まり、ヒアリングや提案などの段階を経て、最終的に契約成立となります。クロージングの目的は、営業担当者がこれまでに築いた信頼関係や商談の内容を基に、顧客の購買意欲を確かめ、契約へと導くことです。
無理に購入を迫ることや圧力をかけることではなく、あくまでも顧客に最適な提案を行い、適切に検討してもらうための手法と認識することが大切です。
営業においてクロージングが重要な理由
営業活動におけるクロージングは、単に契約に結びつける最後の一歩というだけでなく、営業活動全体の成否を決定づける重要なステップです。
ここでは、なぜクロージングが営業活動において重要視されるのか、その理由を3つの観点から解説します。
契約を確定させるステップであるため
クロージングは営業活動の最終段階であり、ここで顧客が自社と契約するかどうかが決まります。
仮に、営業活動を通じて顧客との信頼関係を築き、丁寧に提案や交渉を進めていたとしても、最終的にクロージングを成功させることができなければ、契約成立には至りません。そのため、クロージングは契約確定の「最後の一押し」となる、重要な役割を担うステップであるといえます。
営業成績を左右するため
営業部門にとっての第一の目標は売り上げの達成であり、目標を達成するためには、多くの取引を成立させることが必要です。
クロージングの質は、営業担当者や営業部門の成果に大きな影響を与えます。クロージングの成功率が高いほど、より多くの契約を獲得でき、目標達成の可能性が高まります。
顧客満足度の向上にもつながるため
クロージングには、顧客の不安や懸念を払拭する役割もあります。営業担当者が、顧客の不安が払拭されているか確認をしたうえでクロージングを行うことで、顧客は安心感を抱き満足度が高まるでしょう。
一方で、不安が払拭されていない中で無理にクロージングを行うと、不信感が募り、顧客満足度の低下や失注につながる恐れもあります。クロージングとは強引に行うものではなく、あくまでも顧客の背中を押すことであるため、これまで培った信頼関係を壊さないためにも、慎重に進める必要があります。
クロージングのやり方・流れ
クロージングでは、顧客との信頼関係を築きながら、最終的に契約へとつなげることが大切です。
ここでは、クロージングのやり方・流れを4つのステップで解説します。各ステップにおけるクロージングの例もあげていますので、参考にしてみてください。
1. 顧客の課題やニーズをヒアリングする
クロージングの第一段階は、顧客の課題やニーズを丁寧にヒアリングすることです。
ヒアリングの段階では、売り込みや自社製品の提案を急ぐのではなく、顧客が何に困っているのか、何を解決したいのかを傾聴し、課題やニーズを洗い出すことが大切です。ヒアリングで多くの情報を引き出すことができれば、以降のステップが円滑に進みやすくなります。
例えば、次のような質問で顧客のニーズを引き出すと良いでしょう。
- 「現在お使いの製品にはどのような課題がありますか?」
- 「どのような状態をめざしていますか。そのために不足しているのはどういったものがあげられますか?」
このとき、具体的かつ的確な質問を投げかけることが重要です。これにより、顧客の課題やニーズを的確に把握し、その後の提案や交渉に生かすことができます。
2. テストクロージングで現在の意思・状況を把握する
顧客の課題やニーズを把握したあとは、テストクロージングを通じて顧客の契約に対する意思や状況を探ります。テストクロージングとは、商談の途中で行われる仮のクロージングであり、顧客の反応を見ることで、現在の取引状況や意思決定プロセスを把握することが可能です。
テストクロージングでの質問として、次のような内容が想定されます。
- 「ご提案内容やサービスについて、印象はいかがですか?」
- 「実際に製品に触れてみて、心配な点や不安な点はありませんか?」
- 「もし条件が適切であれば、購入をご検討いただけますか?」
テストクロージングを行うことで顧客の不信感を軽減でき、話を聞いてもらいやすい状態になります。唐突に購入の可否を問うのではなく、顧客が説明を受ける際に感じていることに焦点を当てた質問をすることで、顧客の条件を引き出せるでしょう。
また、この時点で疑問や懸念に対処しておくことで、提案内容を顧客のニーズに合わせやすくなります。顧客によっては、疑問や懸念を抱いていても、自発的に伝えない場合もあるため、疑問や懸念を自由に共有できるように、営業担当者が話しやすい状況をつくることが重要です。
3. 契約の意欲が見えたらクロージングに入る
テストクロージングの結果、顧客が製品やサービスの購入に意欲的であることが明らかになった場合、本格的なクロージングへと進みます。
クロージングでは、顧客の購入意欲をさらに確認し、具体的な導入時期や決裁プロセスについて話を進めます。例えば、「導入時期はいつ頃をご検討されていますか?」「現在のご購入意思は何%くらいでしょうか?」などの質問を通じて、顧客の意向や進捗状況を把握します。
さらに、「最終的な決裁はどなたが行いますか。その稟議(りんぎ)はいつ頃に下りそうですか?」
「稟議を通すうえで、弊社がお手伝いできることはありますか?」といった問いかけをすることで、顧客の導入計画や決裁プロセスに関する詳細を明確にできます。
これらの情報を収集し、顧客のニーズに合わせた最適な提案やサポートを提供することで、クロージングの成功につながりやすくなります。
4. 問題がなければ契約締結
顧客からの合意を得られたら、具体的な契約締結のプロセスに進みます。契約内容を丁寧に説明したあと、契約書のサイン方法や支払日までの期間(月末締め翌月末払いなど)の確認を行います。
また、契約書を基に契約内容に不明点や疑問がないかを丁寧に確認しましょう。支払い条件や契約更新に関する内容は、特に慎重に確認する必要があります。「契約書に書かれているから」という理由で確認を怠ると、あとで顧客から「聞いていない」とトラブルにつながる可能性があります。
契約締結に当たっては細心の注意を払い、不明点や疑問を解消することで、契約締結後のトラブル防止につながります。
クロージングの成約率を上げるコツ
クロージングの成約率を上げるためには、いくつかのコツがあります。ここでは、成約率を高めるための6つのコツをご紹介します。
クロージング前にBANTC条件を確認する
BANTC条件とは、「予算(Budget)・決裁権(Authority)・必要性(Needs)・時期(Timing)・競合(Competitor)」の略称であり、法人営業において確認すべき重要なポイントを網羅したフレームワークです。
クロージングがうまくいかない場合、BANTCの要素のいずれかが欠けているケースが多く見られます。クロージングに進む前にこれらの条件を確認し、顧客が購入に必要なすべての条件を満たしていることを確認することが、成約率を高めるコツの一つです。
契約後の流れをあらかじめ説明しておく
顧客が契約後に何をすれば良いのかを明確に理解できていない場合、不安を感じることがあります。そのため、契約後の具体的なフローやプロセスを事前に説明し、顧客が安心して契約に進めるようにフォローすることが大切です。
営業担当者にとっては契約獲得がゴールであっても、顧客にとっては契約を交わしてからがスタートです。そのため、契約書の取り交わしを急ぎ、契約後のプロセスを軽視すると、顧客へ「この営業担当者は自分の売り上げしか考えてない」という印象を与えてしまい、失注の可能性が生じます。
顧客が安心して契約を結べるように、あとの工程も丁寧に進めることで、顧客の不安を解消し、結果として成約率が高まることが期待できます。
選択肢を絞る
顧客に提供するサービスやプランの選択肢が多すぎると、選択肢の多さによって決断を迷うことがあります。そのため、クロージングでは顧客にとって最適な選択肢を提案し、その理由を明確に伝えることが重要です。これにより、顧客が自身に適したプランを理解しやすくなり、成約率を高めることができます。
例えば、「いくつかラインアップはありますが、貴社にとって最適なプランは◯◯です。なぜなら〜〜だからです。」と結論・理由で話すと伝わりやすく、顧客も判断しやすくなるでしょう。
また、「松竹梅の法則」を使うことも有効です。松竹梅の法則とは、「松(最上位)・竹(中位)・梅(最下位)」といった異なる価格帯や品質レベルのオプションを3つ提供することで、顧客の選択を促進する方法です。
機能ではなくベネフィットを示す
一方的に製品やサービスの機能を紹介するだけでは、顧客にその価値を十分に伝えることはできません。製品の機能が顧客にどのような利益や恩恵をもたらすのか、具体的なベネフィットを示すことが大切です。
例えば、伝え方の良い例・悪い例は次の通りです。
【良い例(ベネフィットを示している)】
- 「◯◯という機能を活用いただくことで、△△時間分のコストカットにつながる可能性があります。」
- 「△△という機能を活用いただくことで、業務効率化が進み、ほかの業務に専念できるようになりますよ。」
【悪い例(機能だけを紹介している)】
- 「この製品は◯◯機能があります。」
- 「他社に比べて△△機能の性能が15%も優れています。」
このように、その機能が顧客にどのような利益やメリットをもたらすのかを具体的に示すことで、顧客が製品やサービスの価値を理解しやすくなり、購入意欲を高められます。
話法やテクニックを適宜活用する
営業活動では、心理学や行動経済学の話法やテクニックを用いることも有効です。
営業シーンで利用される話法やテクニックとして、以下のようなものがあげられます。
テクニック | 説明 |
イエスバット法 | 顧客の反対意見や懸念を認めつつも、「しかし(バット)」と続けて自社製品の利点や解決策を提示する方法。顧客の懸念を和らげつつ、ポジティブな面を強調できる。 |
イエスセット話法 | 質問や陳述を通じて顧客に連続して「はい」と言わせ、肯定的なムードを作り出し、最終的な「はい」へと導く方法。クロージング時の同意を得やすくなるという効果がある。 |
FSV話法 | 「Feature(特徴)、Scene(場面)、Value(価値)」の3点を説明。製品の特徴や具体的な利用シーンと、それによりもたらされる価値を示す方法。 |
ドア・イン・ザ・フェイス | 最初に大きな要求をして断られたあとに、より小さな要求をすることで、顧客が受け入れやすくなるテクニック。最初の大きな要求に比べれば小さい要求は合理的に見えることから、承諾されやすいとされている。 |
ifクロージング | 「もし◯◯なら、△△を検討しますか?」という形で提案し、顧客が特定の条件下での購入を想定できるようにする方法。購入に向けた一歩を踏み出しやすくする効果がある。 |
損失回避の法則 | 人の「損失を避けようとする心理」を生かし、製品を購入しないことによる機会損失や不利益を強調することで、購入意欲を刺激する方法。 |
ゴールデンサイレンス | 提案後に沈黙を保つことで、顧客が提案内容をじっくり考える時間を与える方法。この沈黙により、顧客が話を始めるきっかけができ、その反応からさらに有効な提案を行う機会を得られる。 |
顧客の心理や行動パターンを理解し、適切なタイミングや方法でこれらのテクニックを適用することで、効果的なクロージングを行いやすくなるでしょう。
タイミングを見極める
クロージングの成否は、アプローチのタイミングに左右されます。例えば、購入後の流れなどについて質問があったタイミングや、具体的な運用について関係者間で相談をしはじめたタイミングなどは、相手の熱量が高まっているポイントと考えられます。
こうした機会を逃さず最適なタイミングでアプローチするためには、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)などのツールを活用することもおすすめです。顧客情報や商談履歴を管理することで、タイミングを見逃すことなく、最適なアプローチを行うことが可能になります。
まとめ
クロージングは営業活動における最終段階であり、自社の製品・サービスを成約につなげる重要なプロセスです。
適切なタイミングやトーク内容でクロージングを行うためには、営業フローや顧客情報を適切に管理する必要があります。そのための手段として、SFAやCRMなどのツールの活用が有効です。
営業DXツール「Sansan」は、CRM・SFA、MAツールとの連携が可能であり、名刺を含む顧客との接点情報や企業情報などを一元管理し、全社で共有できます。常に最新で正確な顧客情報にアクセスできるため、過去の商談情報も把握でき、クロージングの精度向上に貢献します。
さらに、Sansanでは100万件以上の企業情報を標準搭載しており、企業の業種や従業員数、売上高、役職者情報などを営業やマーケティング活動にも利用できます。BANTC条件を網羅した精度の高いクロージングを実現するためにも、ぜひご活用ください。
3分でわかる Sansan
営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。
ライター
営業DX Handbook 編集部