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NECソリューションイノベータが営業改革で驚異的な成果を出し続ける秘訣(前編)
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2014年にNECソフトウェアグループ7社の統合により誕生したNECソリューションイノベータ株式会社。
NECグループの中でも、幅広いソリューション提案を強みとするシステムインテグレーターとして、公共から流通・サービスまで多種多様な業界にITソリューションを提供しています。
統合前のNECソフトウェアグループ個社時代から、売上のほとんどを親会社であるNECからの委託案件が占めている事業構成でした。しかし、企業価値を高めるためには、NECからの委託案件に依存せず、自らがビジネスを成長させる力を強化する必要があると捉えていました。
そこで、企業統合後すぐに独自で案件を獲得する「自主事業」への注力を開始。
7年後には自主事業の売上を6倍へ拡大し、その2年後には利益率を倍増させるといった驚異的な成果を上げています。
本記事では前編として、圧倒的な売上拡大につながった取り組みや背景について、キーパーソンのお二人に伺いました。

瀬崎 大輔(せざき だいすけ)
NECソリューションイノベータ株式会社
マーケティング推進本部 DXアーキテクトマネージャー

河村 博司(かわむら ひろし)
NECソリューションイノベータ株式会社
営業統括本部 ゼネラルマネージャー
最初はとにかく数を増やす営業。浮き彫りとなった勝ち筋とマーケティングの課題
河村: 2014年のNECソリューションイノベータ誕生後、自主事業を拡大するべきだという声が大きくなりました。そこで私と瀬崎を含めた50名ほどの社員が集められ、自主事業の営業部門として発足。営業戦略をゼロから構築し直すことになったのです。
私は営業機能を担うチームの一員として、営業活動に取り組み始めました。最初の一手は「数」にフォーカスすることでした。アプローチ先の企業については、NECとのバッティングを避ける必要がありましたが、そうした制約がある中で、「何を売るか」ということも決めず、主に年商50 億~300 億円程度の中堅・中小企業へとにかくアプローチして、見込み顧客をしらみつぶしに探しました。最初はもちろん大変でしたが、とにかく数を増やすことを意識したからこそ、「何が売れるのか」が自然と明確になってきました。
瀬崎: 一方その頃、私は営業部門の配下に作られたマーケティング機能を担うチームの一員として、取り組みを開始していました。
2014年といえば国内の「MA元年」と呼ばれていますが、当時、自社で行っていたマーケティング施策は、ウェブサイト制作やDM送付、展示会・セミナーなどのイベントくらいで、ターゲットを定めず、アナログなやり方を中心に見込み顧客を獲得していたというのが実情でした。
見込み顧客のリストはExcelで管理していましたが、いつ接点を持ったのかは記録できていませんでしたし、展示会やセミナーで見込み顧客の名刺を獲得できても、その後のフォローはすべてアナログな手法でした。
当時マーケティングチームには10名程度の人員がいましたが、徐々に見込み顧客が増えていくに連れて、顧客管理の対応は膨大になり、マーケティング担当者として本来注力すべき仕事以外に工数がかかってしまっている状態でした。
ロイヤルカスタマー戦略へシフトチェンジ。ポイントはチーム間の分業と密な連携
河村: こうして取引実績を増やしていき、「何が売れるのか」が明確になったタイミングで、営業チームではとにかく数を増やす戦略から、既存取引からの売上を最大化するロイヤルカスタマー戦略へ切り替えました。
この戦略を成功させるためには、既存の取引先にいつ新しい提案をするべきかのタイミングを見定める必要がありますが、それ自体はさほど難しいことではありませんでした。
先ほど申し上げたように、当初は50名ほどで自主事業の営業部門を立ち上げたわけですが、営業とマーケティング以外に、取引顧客へコンサルティングを行うチームも存在していました。
そのため、コンサルティングチームが顧客の経営層を押さえられたタイミングで、営業に連携し、新しい提案につなげるといった循環がすぐに構築できたのです。
瀬崎: 営業側がロイヤルカスタマー戦略を進める一方で、マーケティング側ではデマンドジェネレーションをミッションとして、見込み顧客を獲得する新しい仕組みを設計していきます。
まずは、デジタルマーケティングの基盤構築からスタート。Salesforceを中心にMAやSansanなどのツールを組み合わせ、ウェブサイトや展示会・セミナーで獲得した見込み顧客の情報を一元管理し、データドリブンなマーケティングを実現できるようにしました。
これによって、見込み顧客への効率的なメールアプローチや、詳細な分析が可能になり、営業・マーケティングにおけるデジタル活用を一気に加速させることができました。
営業とコンサルティングが密に連携して、既存顧客のロイヤルカスタマー化を進める一方で、マーケティングでは新しい見込み顧客を創出する。各自が分業していいサイクルができていたと思います。
河村: 一つの営業部門という枠組みの中で「マーケティング・営業・コンサルティング」という機能を併せ持ち、連携を図れていたことが、戦略の変化に対して臨機応変に対応できたポイントだったかもしれません。
売上拡大の背景に常にあったのは「挑戦を許容する組織文化」
河村: こうして少しずつ営業戦略を練り上げ売上を伸ばしていきましたが、コロナ禍前の2019年ごろからウェビナーやデジタルマーケティングに力を入れ始めていたことは、売上を維持拡大するターニングポイントの一つだったと思います。
当時、営業部門内にあるテーマ・地域別の営業部主体でオフラインのセミナーを開催することが多かったのですが、参加者が集まるか分からない中で会場を借りるリスクや、会場費、設営・運営に必要な人件費などのコスト面で課題があり、どうにか合理化できないかと考えていました。
瀬崎: そういった相談を営業から受け、当時はまだ主流ではなかったウェビナーを一部の営業部で試してみることにしました。
試行錯誤を繰り返しながら、何とか成功と言えるレベルまで実行できるようになったのですが、一部の営業だけが実施できる状態ではなく組織としてスケールアウトさせないと意味がないと思い、一連のプロセスの標準化(ドキュメント化)を進めました。さらに、営業効率化につながった事例として、営業の生の声を事例記事としてまとめ上げ、営業部内に展開したのですが、この反響が大きかったです。
展開後は「うちのチームでもぜひ取り入れたい」といった相談が相次いで、私が各営業部を伴走しながら支援する形となり、最終的には各営業部が自走して同じ品質でウェビナーを開催できるまでになりました。
この後にコロナ禍が始まるということはもちろん予測していませんでしたが、営業効率化のためのデジタル活用としてウェビナーに先駆的に取り組み、そのノウハウを営業部門全体へ共有していたことで、顧客接点のデジタル化にもスムーズに対応することができ、見込み顧客の獲得効率を大きく向上させることができたと考えています。
このような取り組みも含めて営業全体のパフォーマンスで見てみると、2014年の自主事業スタート時と比較して、2021年には自主事業の売上が約6倍に成長しています。
河村: 偶発的な要素もありますが、何事にも挑戦的な姿勢が功を奏したように思えます。自主事業はいわば社内ベンチャーのような感じで、「ほとんどゼロの状態から事業を大きくするぞ」という初期メンバーの思いが強く、勢いもありました。
だから、違う戦略にシフトする際も、新しい取り組みをする際も、「まずやってみよう。ダメだったらやめればいい」という雰囲気が組織全体にあったんです。
そういったチャレンジ精神が、結果的にコロナ禍という危機を乗り越えることにも、売上拡大にも貢献したのではないかと思います。
瀬崎: 営業改革に「正解」はありません。組織の中を見渡して「ここに課題がありそうだ」と感じたら、自分からその課題を拾いに行き、現場の声によく耳を傾けるのが、あるべき姿ではないでしょうか。
その上で、どう変えていくべきかという部分は自分たちで描いていかなければならない。そこで何か新しいことを始めるべきだと思った時に、河村が申し上げた通り、それを許容する柔軟な組織文化があった。その点は私も同感ですね。
河村: こうして自主事業の売上を伸ばし、軌道に乗せることができましたが、次なる課題として浮き彫りになったのは「利益率の低さ」でした。
そこから改善に取り組み、2年で利益率を2倍に伸ばすことができましたが、それは次回の記事でご紹介します。
▼後編の記事はこちら
編集部からのまとめ
NECソリューションイノベータ様の売上拡大の取り組み事例、いかがでしたか?
次回の記事でも、引き続きNECソリューションイノベータ様にご協力いただき、利益率の改善に関する取り組みをご紹介します。どうぞご期待ください。
また当社では、日本における営業変革の未来を切り拓くための議論を行う「営業DX Meetup」というイベントも開催しております。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
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ライター
営業DX Handbook 編集部