- インタビュー・レポート
NECソリューションイノベータが営業改革で驚異的な成果を出し続ける秘訣(後編)
公開日:
更新日:

2014年にNECソフトウェアグループ7社の統合により誕生したNECソリューションイノベータ株式会社。
ゼロから案件を獲得する自主事業において、大幅な売上拡大を達成した一方で(売上拡大の詳細は前回の記事をご覧ください)、浮き彫りになってきたのが「利益率の低さ」という問題でした。
そこで同社は2022年以降、営業生産性の改善に着手し、わずか2年で売上を1.5倍、利益率を2倍にすることに成功します。
重要だったポイントは二つ、「選択と集中」と「組織の結束深化」でした。
実際にどのように取り組んでいったのか。引き続きキーパーソンとなったお二人に伺いました。

瀬崎 大輔(せざき だいすけ)
NECソリューションイノベータ株式会社
マーケティング推進本部 DXアーキテクトマネージャー

河村 博司(かわむら ひろし)
NECソリューションイノベータ株式会社
営業統括本部 ゼネラルマネージャー
きっかけは新社長の一言。「いろいろやり過ぎている」状態から「選択と集中」へ
河村:自主事業に注力し始めてから7年で約6倍まで売上を拡大し、事業を軌道に乗せることができましたが、その間、営業人員も50名から300名ほどまで増えていました。
つまり、人数が増えた分だけ、売上も増える仕組みで、利益率が伸びていなかったのです。そして、その利益率も全社平均と比べると半分程度しかありませんでした。
そうした中、2022年に石井力(いしい ちから)が新社長に就任しました。弊社の場合、歴代の経営者はエンジニア出身者がほとんどでしたが、石井は営業経験もあり、経営改革に対して非常に積極的です。
その石井から「この利益率のままでは自主事業の存続は難しい」と言われ、私はそれを「これからはどうやったら利益を増やせるかに向き合いなさい」というメッセージだと捉えました。
そこでまず取り組んだのは、事業の徹底的な分析です。あらゆるデータを洗い出し、どこにコストがかかっているのか、営業生産性が低いのはどこなのか、可能な限り正確に把握することにしました。その結果、はっきりと見えてきたのは「いろいろやり過ぎている」ということです。
われわれは、弊社として注力すべき事業への「選択と集中」を図り、事業ポートフォリオを転換していくことにしました。
「選択と集中」に不可欠だったのは、営業とマーケティング間の目線合わせ
河村:「事業の選択と集中を図ります」と言葉で言うのは簡単ですが、現場では戸惑いがあったと思います。
ただ、「こうしなさい」と号令をかけるだけでなく、石井が自ら先頭に立って全社的な組織人事や社内環境の改革を行っていたので、会社の雰囲気もガラッと変わりましたし、社員の意識改革にもつながりました。
瀬崎:「選択と集中」の戦略を進めるに当たって必要なことがありました。それは、営業とマーケティング間の、より深いレベルでの目線合わせです。
これまでにマーケティング側では、デジタルマーケティングを活用しながら見込み顧客を獲得し、営業に対して案件を創出するデマンドジェネレーションの仕組みを作ってきました。コロナ禍を経て顧客接点のデジタル化が進み、見込み顧客の獲得数やマーケティングが関与する案件創出金額も拡大しましたが、一方で、マーケティング側から引き継いだ見込み顧客の情報が営業で活用されていないケースが増えていました。
つまり、「選択と集中」を進める営業側からすると見込み顧客の「質」が悪いように見えてしまい、理想とする見込み顧客像のズレが営業とマーケティングの間で少なからず生じていたように思います。
そのような状況を改善するために、「選択と集中」を進める営業戦略に合わせて営業とマーケティングがより深いレベルで目線を合わせる手段として、Go To Market戦略[1]を採用することにしました。
アプローチする企業の条件を定めて優先度を分類し、アプローチしたい企業群に対してどのように接点を創出するか、その後どのように関係を醸成し、どのように営業へ引き継いで、営業はどのようにフォローするのか、また、フォロー結果をどのように記録していくのか、などを営業とマーケティングで綿密なコミュニケーションを取りながら、それらをルールブックとして明文化することを進めました。
これにより、営業とマーケティングの間でより深いレベルでの目線合わせが進み、「選択と集中」の営業戦略に沿ったマーケティング活動につながる。結果として、営業効率化にも貢献できると考えました。
[1]:自社の製品やサービスをどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略
組織の結束深化にはコミュニケーションが肝要
瀬崎:このGo To Market戦略を進める際には、外部のコンサルティング会社に協力してもらったのですが、われわれのスキル不足を補うという目的だけではなく、「客観的な視点を入れる」という重要な意図がありました。
通常、マーケティング側の視点で「営業・マーケティング戦略はこうした方がよい」というものを作った場合、営業現場の感覚とズレているなどの理由で営業側に抵抗感が起きやすいのですが、外部の客観的な視点を入れることで、営業とマーケティングの間での落としどころを見つけやすくなりました。
利益率を上げるために、テクノロジーやデジタル技術をどう活用するかという視点はもちろん大事ですが、同時に組織内の意思の統一、それを図るためのコミュニケーション上の課題をクリアすることも忘れてはならないと思います。
河村:弊社に限った話ではないかもしれませんが、営業は職人のような面もありますから、正論だけ突き付けられても受け入れにくいところがありますよね。上から「こうすべきだ」と言われても、それだけではなかなか響きません。だからこそ、事業の絞り込みを進める際は客観的なデータを示しながら一方的にならないコミュニケーションを心がけました。
具体的には、現場と対話する機会をかなり増やし、「この方向性でいいよね?」「みんなはどう思う?」という感じで相互理解を深めました。
こうして、年間で数十ほど仕掛けていたソリューションやテーマ軸を五つ程度にまで絞り込み、その領域外の案件はパートナー企業への移管などを進めながら、リソースを集中させました。
その結果、人員規模はほぼ変わっていないにも関わらず、2022年からの2年間で自主事業の売上は1.5倍に拡大。全社平均を下回っていた利益率も約2倍の十数%の水準まで向上し、全社平均を上回るところまできています。
今後はどんな変化にも迅速に対応できる組織づくりに注力
瀬崎:Go To Market戦略の実行プロセスは、定義して終わりではありません。特定部門だけが属人的にできる状態ではなく、組織全体のプロセスとして定着させていかなければなりません。
加えて、日々の営業・マーケティング活動を通じてプロセスのアップデートも重ねていくことも必要です。今後、外部環境の変化に伴い、組織の戦略が見直されることが起きるかもしれませんが、どのような状況下でも「何が目的なのか」「何が課題なのか」を客観的な視点で捉えて、それらの解決手段としてデジタルツールやデータ、AIなどを活用できる状態にしておくこと、そして、これらを組織的に実行できることが必要だと考えています。
河村:今のやり方を続けても、営業生産性は近いうちに頭打ちになると見ています。今後さらに営業生産性を大きく伸ばすには、大幅な組織改革などが必要になってくるかもしれません。
そういった組織改革への準備の一環として、営業側ではソリューション営業化を進めて、組織と営業個人の、両方の価値を上げていくことが必要だと考えています。
お客様の経営課題に対して、私たちの注力しているソリューションを価値のあるものとして提案できる、ソリューション営業としての提案力が今後の大きなテーマです。
編集部からのまとめ
前後編にわたってご紹介したNECソリューションイノベータ様の営業改革の事例、いかがでしたか?
「挑戦を許容する組織文化」、「事業の選択と集中」、「組織の結束深化」など営業改革で成果を出し続けた秘訣がお分かりいただけたのではないでしょうか。
また弊社では、日本における営業変革の未来を切り拓くための議論を行う「営業DX Meetup」というイベントも開催しております。ご興味のある方はぜひお問い合わせいただければ幸いです。

ライター
営業DX Handbook 編集部