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マーケティングオートメーションのROIを3倍にする五つのステップ

マーケティングオートメーションのROIを3倍にする五つのステップ

マーケティングオートメーションツールの導入が増加する中、その効果を最大化できていないという声も多く聞かれます。本記事では、ツールの効果を最大化できない原因と、導入を成功させる五つのステップについて紹介します。

※本記事は2021年2月に作成されました。掲載されている内容は作成時点の情報です。

MAツールの導入が増加している背景

国内のMA市場は拡大傾向が続いており、2020年の市場規模(事業者売上高ベース)は前年比111.3%の見込みでした。今後も拡大傾向が続き、2025年には2020年比で165%に成長すると予測されています。

MAツールに注目が集まる背景は、顧客の購買行動の急速なデジタルシフトによるものです。以下に二つのトレンドを紹介します。

デジタライゼーションによって、マーケティングモデルが転換している

デジタル技術の活用で自社のビジネスモデルを変革する、デジタライゼーションというビジネスの根幹に関わる変化が起こりつつあります。加えてネットワークの発達により、いつでもどこからでも顧客と企業がつながる時代になりました。かつてのマス広告や対面営業のような「点」ではなく、顧客とのあらゆる局面を網羅した「面」としての顧客対応が求められています。従来のような多数の顧客に対する画一的なアプローチでは通用しなくなってきているのです。

オンライン上での顧客とのタッチポイントが増えた

スマートフォンが普及し、常時インターネット接続ができる環境が整ったことで、顧客は購入を検討する際に情報収集から比較検討まで自らインターネットで調べることが当たり前になりました。この流れは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響でテレワークが急増し、世代を問わず加速しています。

一方、オンライン上には、検索サイト、専門メディア、動画、メール、オンラインセミナーなど、さまざまなタッチポイントが存在します。これらのタッチポイントに訪問などのオフライン接点も加わります。そのため、営業・マーケティング活動は、オンラインとオフラインの顧客接点を管理しながら、顧客起点のアプローチへと変えなければなりません。

このような背景があり、顧客一人ひとりに対して最適なコミュニケーションを取ることができるMA(マーケティングオートメーション)ツールが求められています。

MAツールを導入することで実現できること

MAツールを導入することで、顧客一人ひとりに対して、最適なコミュニケーションを取ることができるようになります。

よくある例で説明します。展示会やセミナーで獲得した名刺データをExcelにまとめ営業部門に渡しても、フォローしきれず放置した状態になっていないでしょうか。営業部門は予算を達成するために、受注確度が高い案件を優先することは当然のことです。1年後に案件化するかもしれない顧客をフォローする余裕はないはずです。

もしMAツールがあれば、見込み顧客の閲覧履歴や行動履歴を可視化できます。そして、最適なコミュニケーションを取りながらニーズを高めていくこと、ニーズが高まっている顧客を選別したアプローチを実現できます。

また、以下の業務を自動化・省力化することもできます。

顧客情報の収集・蓄積

見込み顧客の収集は案件創出の始めの一歩。展示会やセミナーで獲得した名刺、営業担当者の名刺交換、ウェブサイトからの資料請求などで、顧客情報を収集します。獲得した個人情報はバラバラのシステムやExcelで蓄積するとメンテナンスに労力を取られてしまいますが、MAツールがあれば、データベース化し、一元管理することができます。

見込み顧客を育成

顧客情報は収集するだけでは意味がありません。例えばオウンドメディア記事やセミナー情報といった、適切なコンテンツをメールなどで配信し、見込み顧客の購買意欲を高め、購買につなげていく必要があります。この一連のマーケティング活動の自動化、省力化をMAツールで実現することができます。

例えば、リードを職種や役職でセグメントしてメールを配信する、ある資料をダウンロードしたリードに対して、自動メールで個別相談会の打診をするなどといったきめ細やかなコミュニケーションを自動で行うことができるでしょう。

マーケティング施策の分析

MAツールはマーケティング施策の分析業務の自動化・省力化にも役立ちます。どのようなメールが見込み顧客によくクリックされているか、どのページを閲覧した見込み顧客の検討度合いが高いかなどの分析が簡単にできます。さらに、SFA(営業支援システム)や受注データとひも付けることで、どの展示会や広告が費用対効果が高いのかといったデータが可視化され、マーケティング施策の優先順位付けが可能になります。

多くの企業がMAツールの効果を最大化できていない

メリットが多く、多少値が張っても導入したいMAツール。一方で、「想定していたほどの効果が出ていない」「効果が全く出ていないわけではないが、投資に対しての利益は出ていない」と感じている企業も多くみられます。

  • 導入、定着は失敗していない
  • かといって、大成功しているわけではない
  • 便利にはなったが、期待通りの効果が出せていない
  • 効率化は実現したが、リードの総数がそもそも足りていない

このような声が多いのが実態です。次章で、効果を最大化できない原因を解説します。

MAツールが6割の力しか出せない原因とは

MAツールを導入した後でよくある課題は以下のものがあります。

  • 「コンテンツが不足していて、購買プロセスごとのマーケティングができない」
  • 「MAツールを使いこなすための知識や人材が不足している」
  • 「スコアリング設計が甘く、購買意欲が高い顧客を判別できていない」

これらも確かに課題の一つですが、表面的であり本質的な原因ではないことも少なくありません。これらの課題を一つひとつ解決しても、MAツールは6割しか効果を発揮できないのです。

では、本質的な原因とは何なのでしょうか。以下のような課題はないでしょうか。

1.データ連携が不完全

顧客情報が部門ごとに個別管理されていて、MAツールが他のデータベースと連携されていないため、リード情報が分断されて案件ステータスの可視化ができていない課題です。また、リード情報の入り口から出口(受注)までをつなげて可視化できていないため、施策の効果測定や改善サイクルを回せません。

2.リード情報が正確でない

リード情報の取得時のデータに誤りや欠損があると、その後のリードナーチャリングで成果を上げることができず、正確な分析ができません。例えば、ウェブサイトで入力された個人情報やマーケティング活動で集めたリード情報に、部署や肩書など正確に書かれていないことは往々にしてあります。

他の例では、マーケティング部門から人事部門に異動したリードに、マーケティング業務の効率化を実現するサービスを紹介していて反応がなく悩むケースなどが挙げられます。これはリード情報をメンテナンスしていないことが原因で起きます。

Sansanの調査では、1年間で顧客の情報は、人事異動、昇進や転職、連絡先の変更などによって48%変化することが判明しています。

3.リード情報の絶対数が少ない

MAツールを活用してリードナーチャリングに取り組んでいるものの成果が出ない企業によくあるのは、マーケティング部門で取得したデータのみを活用し、実行していることです。マーケティング部門が持っているリード情報は会社としては一部のみです。社内には、営業部門が持っている過去に接点があった顧客の情報、インサイドセールスが持っている問い合わせ顧客の情報もあるでしょう。

ナーチャリングは、顧客接点を網羅し最適なコミュニケーションを取ることが必要です。そのためには、社内のあらゆる部門の接点情報を顧客データベースで一元管理することが不可欠となります。

MAツールの導入効果を最大化するためには、この三つの課題が本質であり、解決するためには「システム連携」が鍵となります。

MAツールの活用で受注件数を2倍にした、Sansanの取り組み事例

一連のマーケティング活動を効率化し、効果を向上させるMAツール。MAツールの効果を最大化するためにはただ導入するだけでは成果は出ません。導入のタイミングでマーケティングプロセスを再構築する必要があるのです。

Sansanでは、2015年にMAツールを導入し、導入以前から活用していた各種ツールとMAツールを連携させ、マーケティングプロセスを再構築することで、半年で受注件数を2倍にするなどの成果を上げました。導入当時のSansanの取り組みを例に、MAツールの導入を成功させるための5つのステップを紹介します。

MAツール導入時に直面していた課題


営業DXサービス「Sansan」は、2021年1月時点で7000社以上の企業で導入されています。2013年からの2年間で、同サービスの導入企業数は1000社程度から3000社へ急激に増加しました。この急激な成長ペースを緩めることなく、当時直面していたさまざまな課題を解決するとともに、さらに速度を上げて事業成長を果たすため、MAツールの導入を決めました。

MAツールの導入に当たって解決を試みた当時の課題は、「プロセス」「組織」「システムデータ」の三つに分類されます。

・プロセス
顧客数の急増に伴い、マーケティング部門や営業部門の業務プロセスは個別に最適化された状態となっていた。そして、各部門が利用するデータベースも同様に個別管理されている状態に陥っていた。

・組織
各部門がサイロ化されている状態に陥っていたため、部門間での情報共有がスムーズに行われていなかった。また、ナレッジが属人化し、受注に結びつく勝ちパターンは標準化されていない状態であった。

・システムデータ
サイロ化やリード数の急激な増加に伴い、リードに多くの重複が発生していた。データベースやプロセスの統合・整理ができていないため、各部門は想定以上の手作業による対応に追われていた。

解決策は「マーケティングプロセスの再構築」

これらの課題を解決するために、導入するMAツールを中心として、既に活用していた営業DXサービス「Sansan」とSFA(営業支援ツール)をMAツールに連携し、マーケティングプロセスの抜本的な再構築を図ることにしました。

結果として、前出の課題が解決し、顧客との関係は点から線に変わりました。そして、MAツール導入を契機に設定した「受注件数を2倍にする」という目標を半年で達成するに至ったのです。

MAツールの導入を成功させるための五つのステップ

SansanがMAツールの導入で想定以上に成果を出し、投資に対しての利益を生んだ理由は、「マーケティングプロセスの再構築」に取り組んだからに他なりません。この取り組みは、五つのステップで進めることができます。

ステップ1. 組織を一つにする指標の作成
ステップ2. 一貫性のあるプロセスを定義
ステップ3. 連続したシステムの構築
ステップ4. データベースの集約
ステップ5. 改善サイクルの確立

この五つのステップによりデータが可視化され、優先順位が明確になります。さらに、MAツールの導入で、顧客接点の入り口から出口(受注)までを可視化することで、顧客接点を点から線へと変え、データドリブンなマーケティングを実行するための下地が整ったのです。

まとめ

MAツールは営業マーケティング活動を効率化、可視化し、見込み顧客とのコミュニケーションを変えることができる優れたツールです。しかしながら、せっかく導入しても効果を最大化できない企業は多く、その効果を最大化できない本質的な原因は、「データ連携が不完全」「リード情報が正確でない」「リード情報の絶対数が少ない」の三つです。

本記事で紹介した事例なども参考に、この機会に是非マーケティングプロセスの見直しを検討されてみてはいかがでしょうか。

部門別Sansan活用例〜マーケティング部門編〜Sansanを全社でご利用いただくと、マーケティング部門でどんなメリットを感じるか、具体的にイメージしやすくなる資料です。

部門別Sansan活用例〜マーケティング部門編〜

Sansanを全社でご利用いただくと、マーケティング部門でどんなメリットを感じるか、具体的にイメージしやすくなる資料です。

営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。