- 働き方改革
パーパスの意味は?必要性やメリットを解説
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パーパス(Purpose)は、企業の社会的意義や存在価値を意味する言葉です。
近年、パーパスを見直したり、新たに策定したりする企業が増えているといわれています。なぜ、パーパスが必要とされているのでしょうか。
本記事では、パーパスの基本や必要とされている理由、メリットを詳しく解説します。
パーパスとは
まずは、パーパスの意味や定義、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)との違いを解説します。
パーパスの意味
パーパス(Purpose)は、「目的」「意図」「目標」と言い換えられますが、ビジネスの文脈では、「企業の存在価値」や「社会的意義」を指します。
わかりやすく説明すると、自社が何を目的として存在するのか、また、なぜその事業を行う必要があるのかといった、本質的な問いに対する解となるものです。
一橋大学大学院教授・経営学者の名和高司氏は、著書である『パーパス経営 30年先の視点から現在を捉える』において、パーパスを「志」と表現しています。また、パーパスに基づいた経営を「志本経営」と名づけました。
ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)とパーパスの違い

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)は、企業が果たすべき使命を掲げる「ミッション」、企業がめざす未来を指す「ビジョン」、ミッション・ビジョンを果たすために必要な企業の姿勢や価値観である「バリュー」の三つを指す言葉です。
そのうちの一つである「ミッション」は、パーパスと類似した意味を持ちますが、ミッションは、「企業がめざす未来のために果たすべき使命は何か」という「what」を表すのが特徴です。
一方のパーパスは、「社会のためになぜ自社が存在するか」を意味しており、より社会への貢献を意識した根源的な存在意義としての「why」を表す点に違いがあります。例えば、経営体制が変わって企業が新たなフェーズに移るタイミングや、企業の将来を考えたときに、パーパスを策定することがあります。
ミッションは、パーパスを果たすために行うべきことを指しているともいえるでしょう。
パーパスが必要とされている理由
企業経営にパーパスが必要とされるようになった背景には、価値観の変化やDX推進などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
企業に求められる価値観が変化したため
2015年の国連サミットでSDGsが採択されて以来、企業は経済的な発展だけではなく、社会的責任を果たすことや、SDGsの達成に貢献することが重要視されています。
持続可能な経営を行うためには、存在意義や社会的価値を再定義することが欠かせません。企業に求められる価値観も変化しており、そのことがパーパスの必要性にも関係しています。
また、若年層が就職先を選ぶ際に、社会貢献度や企業文化を重視しているのも近年のトレンドです。優秀な人材を確保し、事業を存続させるためには、パーパス経営へのシフトが重要な鍵となります。
投資家の価値評価基準が変化したため
投資家たちが企業を評価する際の基準が変化したことも、パーパスが必要とされている理由の一つです。
従来、投資家たちが重視していた主な企業の評価基準は、「投資家に利益をもたらすかどうか」でした。しかし、ESG(環境・社会・ガバナンス)やサスティナビリティに注目が集まるにつれて、投資家たちの評価基準の一つに、「社会的な貢献」が加わりました。
企業にとって、パーパスを掲げ、自社の社会的存在意義を投資家へ示すことが有効なアピール手段の一つになったといえます。
企業のDX推進や生活様式が変化したため
働き方改革やワークライフバランスの変化によって、ビジネスの現場ではデータ活用やデジタル技術を用いたビジネスモデルの再構築(DX)への取り組みが進められています。また、コロナ禍により、オンライン化が加速したことで、従来の方式の延長ではビジネスが成り立たなくなっています。
このように将来の予測が不可能な時代においては、「自分たちはなぜこの事業をやる必要があるのか」、「どういった価値を社会に提供するのか」などを、あらためて明文化することが大切です。
産業構造・組織が多様化したため
日本の労働市場には、新卒一括採用・終身雇用・年功序列といった独自のルールがあり、ビジネス市場も国内が中心でした。
日本人の規律性と相性もよく、誰もが同じ方向を向いて行動することで成果が出ていたため、パーパスは必要視されていなかった背景があります。しかし、現代はグローバル市場への参入や人口減少にともなう人材採用難などにより、組織の多様化が進んでいる状況です。
そのため、誰もが理解できる指針を示し、足並みをそろえるために、パーパスの必要性が高まっています。
消費者の意識が変化したため
消費者の指向が変化したことも、パーパスが重要視される理由の一つです。
ただモノを消費・取得するだけではなく、環境や地域経済、労働環境といった社会的課題を配慮しながら消費活動を行う「エシカル消費」への関心が高まっています。地産地消やフェアトレード商品の購入は、エシカル消費の代表的な例です。
そうした関心を持つ消費者に対して、自社の社会貢献意識を伝えるためにも、パーパスを明らかにすることが重要といえます。
パーパスがあることのメリット

パーパスを持つことは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的にいくつか例をあげて解説します。
社会的信頼や共感が得られやすくなる
パーパスは、企業の社会的意義や存在価値をわかりやすく表したものです。
策定したパーパスが消費者や株主、取引先に広がることは、社会的信頼や共感を得ることにつながります。
SNSなどでパーパスがシェアされることで、認知度向上やブランディングなどの効果も期待できるでしょう。資金調達や人材採用に好影響をもたらす可能性もあります。
従業員のエンゲージメント(帰属意識)が高まる
パーパスは、従業員が自社で働く意義や意味を明文化したものであるともいえます。そのため、日々行っている仕事が、どのようにして社会に貢献するのかを実感しやすくなります。結果的に従業員のエンゲージメント(帰属意識)が高まるでしょう。
単に報酬の高さや待遇面のよさではなく、従業員が働く意義そのものを見いだすことでパフォーマンスの向上につなげることが可能で、優秀な人材の流出防止にも役立ちます。
スムーズな意思決定につながる
パーパスの策定は、スムーズな意思決定にも寄与します。
策定したパーパスは、企業として進むべき方向を明確に示すものです。従業員が企業活動を行う目的や取り組むべきことを理解しやすくなり、結果として迅速な意思決定につながります。
スムーズに意思決定を行うことは、物事の変化が早い現代において大きなメリットとなるでしょう。経営層のみならず、組織に属する全員の判断基準が明確になることで、あらゆる検討事項への意思決定がスピーディーに行えます。
アイデアやイノベーションが生まれやすくなる
パーパスを掲げて社内に浸透させると、組織としての一体感が生まれます。
価値観や属性が違うメンバー同士であっても、ベクトル(方向性)をそろえることで共通認識が生まれます。コミュニケーションの土台が整うことでシナジー効果が生まれ、新たなアイデアやイノベーションが起きやすい環境が構築されるでしょう。
まとめ
パーパスは、企業の社会的意義や存在価値を意味する言葉で、パーパスの策定によって企業としてめざすべき方向が明らかになります。それにより、社会から信頼を獲得することにつながるでしょう。
パーパスは企業で働く人にとっての指針でもあり、従業員のエンゲージメント向上やイノベーションの創出といった効果も期待できます。
持続可能な経営には、企業の成長が欠かせません。本記事で紹介したことを参考に、パーパスの策定を検討してみてはいかがでしょうか。

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ライター
営業DX Handbook 編集部