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テレワークは廃止するべき?廃止する理由やメリット・デメリットを解説

テレワークは廃止するべき?廃止する理由やメリット・デメリットを解説

テレワークは、ここ数年で急激に普及しました。しかし、コミュニケーションの取りづらさや労務管理の難しさなどを理由に、テレワークを廃止する企業も増えています。
テレワークの廃止を検討する際は、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、従業員への配慮を忘れないようにすることが大切です。

この記事では、テレワークを廃止した企業が廃止を決めた理由や、テレワークを廃止するメリット・デメリットなどを解説します。
テレワークは廃止すべきか?という問いに対する答えを考えるヒントとしてお役立てください。

テレワークを廃止する企業は増えている

まずは、企業のテレワークの実施状況を紹介します。海外におけるテレワークの現状も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

テレワークの実施状況のグラフデータ

出典:図4 東京都内におけるテレワーク実施企業率の推移(4頁)

2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、テレワークを導入する企業は24%から一気に63%まで上昇しました。その後は減少し、2023年6月時点で40%という形で推移しています

東京都が都内の企業に対して2023年12月に行った最新の調査では、従業員30人以上の企業のテレワーク実施率は46.1%となっており、やや回復しています。また、テレワークを週3日以上実施している企業の割合は46.4%です。

海外におけるテレワーク廃止の状況

海外では、大手企業を中心に比較的早い時期からテレワークの縮小・廃止が進められていました

米Googleは2022年4月から、社員に週3日以上のオフィス勤務を促しています。米Amazonも、少なくとも週3日はオフィス勤務をするべきと発表している状況です。
また、大手電気自動車企業のテスラは、従業員に対してテレワークは原則容認しないとしており、最低週40時間はオフィスに出社しなければならないと通知しているといいます。

このように、出社を推奨する海外企業が出てきているという話題も、度々ニュースで取り上げられています。

企業がテレワークを廃止する理由

企業がテレワークを廃止するには、どのような理由があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

コロナ禍が終了したため

新型コロナウイルス感染症対策の暫定的な措置として、テレワークを導入した企業も少なくありません。感染拡大防止のため、オフィス勤務での密集を避ける必要があったためです。

2024年4月時点では、まん延防止等重点措置も解除され、新型コロナウイルス感染症は季節性インフルエンザと同じ「5類感染症」の扱いとなっています

コロナ禍前の日常生活が戻りつつある中で、企業が従業員に対して出社を求める動きも出てきています。

生産性・業務効率の低下への懸念があるため

テレワークでは、オフィスでの勤務に比べて生産性が低下する懸念があります。
仕事とプライベートの区別が付けづらく、一部の業務では、書類の提出や捺印などのためだけに出社が必要となる場合もあるでしょう。

また、テレワークを行うデスクやチェア、照明などの設備や通信環境が整っていない場合は、パフォーマンスに影響する可能性があります。従業員が自ら働く環境を整える必要があるため、少なからず負担がかかることも考えなければなりません。

勤務状況を把握しづらいため

テレワークの場合、自宅での勤務状況の把握が難しいという事情もあります。

一日の業務スケジュールや進捗を把握するために、報告のためのフローを整える必要が出てきます。オフィスに出勤していたときには不要だった業務が発生することもあるでしょう
勤務状況を把握しづらくなることで、マネジメント効率が下がることも懸念されます。

会社への帰属意識が低下する懸念があるため

テレワークでは、対面でオフィスワークを行う場合と同じようなコミュニケーションを取ることが難しくなります。
ささいな報告にも文面による連絡が必要となり、気軽に情報共有や相談ができる機会を減らしてしまう可能性があります。コミュニケーション不足によって、所属する会社への理解や愛着が薄れることも考えなければなりません
所属意識が薄れると、従業員のモチベーションや人材の定着率が低下する要因になります。

従業員によって負担が異なるため

職種や家庭の事情など、従業員によってはテレワークを選択できないことがあります。

一部の従業員だけが通勤を求められ、それに対して従業員が不平等感を覚えたり、不満につながったりする可能性があるでしょう。従業員同士の関係性が悪化することも懸念事項です。
オフィスで仕事をしている従業員が、テレワークの従業員のフォローを行うことになると、さらに負担が増えてしまいます。

テレワーク廃止のメリット

コロナ禍後に出社してオフィスで仕事をする人たち

テレワークを導入するメリットは広く周知されていますが、廃止するとどのようなメリットがあるのか考えたことがある方は少ないかもしれません。ここでは、テレワーク廃止のメリットを見ていきましょう。

コミュニケーションが取りやすい

オフィスワークにすることで、従業員同士が対面でコミュニケーションを取りやすくなり、スムーズな情報伝達が可能です。
テレワークの場合、オフィスワークに比べて、業務に関する話題以外の会話が減り、従業員間のコミュニケーションが不足する傾向がありました。

また、一部の従業員がテレワークを実施すると、在宅勤務の従業員と出社する従業員との間で、保有する情報の内容や量に差が生まれます。それぞれに配慮をする必要が出てくることも、マネジメント層の負担になっているかもしれません。

社員の労務管理・評価がしやすい

オフィスワーク中心の環境に戻すことで、正確な労務管理がしやすくなることも、テレワークを廃止するメリットの一つです。

テレワークでは従業員が業務に取り組む姿を直接見ることができません。そのため、状況が把握しづらくなり、評価が難しくなる側面があります。また、テレワークを導入している場合、テレワーク勤務の従業員とオフィス勤務の従業員とで、どのように評価分けをするかも課題となるでしょう。

情報漏洩のリスクが避けられる

テレワークの場合、社員は自宅やカフェ、コワーキングスペースなどで仕事をすることになります。

セキュリティー対策や意識が不十分な状態でテレワークを実施すると、不正アクセスやウイルス感染などのリスクがあります。また、重要な情報が入ったパソコンやスマートフォン、タブレットといった端末を紛失することも考えられます。
さらに、端末画面の覗き込みや、通信の暗号化が徹底されていない環境での情報通信など、第三者に漏洩するリスクも上がってしまいます
オフィスワークの場合、会社がセキュリティー対策を施すことができ、万が一トラブルが発生した場合も迅速に対応が可能です。パソコンなどの端末の社外持ち出しを必要最低限に抑えることで、情報漏洩のリスク管理にもつながります。

テレワーク廃止のデメリット

在宅で勤務をする社員

続いて、テレワーク廃止のデメリットも紹介します。メリットとデメリットを両方理解したうえで、適切な方法を模索することが大切です。

従業員のワークライフバランスが崩れる可能性がある

テレワークの導入中は、オフィス勤務で通勤にかかっていた時間を従業員が有意義に使えます。しかし、テレワークの廃止によって通勤時間を考慮する必要が生まれ、仕事と生活のバランスを保つことが難しくなることが考えられます。

また、プライベートに使えていた時間が減ることで、出社や仕事に対するストレスが増えてしまう可能性もあるでしょう。社員のストレスは仕事へのモチベーションに影響し、場合によってはパフォーマンスが下がってしまいます。

人材流出につながる可能性がある

テレワークからオフィス勤務に切り替えると、従業員は決められた時間内で業務を完結させなければなりません。

子育てや介護など、家庭の事情で十分な勤務時間が確保できない社員にとっては働きづらい環境となり、人材が流出する可能性があります。従業員からの理解を得ようとしないまま進めるテレワーク廃止は、従業員の無力感や不信感を招くので注意が必要です。
また、多様な働き方が求められる現代では、テレワークが可能であることを会社選びの条件として重要視する人も少なくありません。テレワークの廃止は、離職だけでなく、採用の面で企業が不利になる可能性があるでしょう。

オフィスを整備する必要がある

テレワークを廃止してオフィスワーク中心の形態に戻す場合、オフィスにスペースを準備する必要があります。

テレワークの廃止によって出社人数が増えると、オフィスの移転や備品の再購入などが必要になるかもしれません。設備の維持費や従業員の交通費などの経費が増えることも考慮が必要です。

オフィスワークに戻した場合に必要な経費をあらかじめ見積もったうえで、制度の見直しを考えることが重要といえます。

DXが進みにくくなる可能性がある

テレワークが廃止されることにより、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進みにくくなる可能性があります。
特にコロナ禍におけるテレワークでは、接触を避けるために、資料のやりとりや捺印、会議などをオンライン上で行う必要がありました。そのため、テレワークの導入をきっかけにDXが進んだ企業も数多く存在します。

オフィスワークの形態に戻ることでDXを推進する必要性が低くなり、DXの取り組みを続けている企業との競争力に差が出る要因にもなります

BCP対策(事業継続計画)が難しくなる

テレワークの廃止によって、BCP対策が難しくなることも考慮する必要があります。

「事業継続計画」を意味するBCP対策とは、災害などによってオフィスや設備、交通インフラにトラブルが発生した際に、事業を継続させるための手段をあらかじめ定めておくことです。
テレワークでは、従業員がオフィスに集まる必要がないため、万が一、災害や交通網の混乱によって出社できなくなったとしても、事業を継続できる可能性があります。

テレワークを廃止してしまうと、オフィス以外で仕事を継続するという選択肢がなくなり、事業の継続が難しくなるかもしれません。

テレワーク廃止の前に実施すべきこと

テレワークの廃止は、綿密な事前準備のもと、慎重に進めることが大切です。ここでは、テレワークの廃止前に実施すべきことを見ていきましょう。

従業員にヒアリングする

テレワークの廃止を検討する際は、従業員の状況や意思を必ず確認しましょう。アンケートを実施するなどして、現状や要望を分析したうえで判断します

テレワーク継続を希望するかどうかだけでなく、テレワークを廃止した場合に生じる問題点もヒアリングしておきましょう。テレワークを継続した場合の今後の課題などについての意見を集め、従業員に配慮した対応を取ることが大切です。

ハイブリッドワークも検討する

ハイブリッドワークとは、複数の働き方を組み合わせたワークスタイルのことで、2024年4月時点では、リモートワークとオフィスワークとを選べる働き方を指すのが一般的です。
テレワークを完全廃止するのではなく、ハイブリッドワークの導入も踏まえた柔軟な働き方を検討すると良いでしょう。
リモートワークと出社を完全に分けるのではなく、半日や数時間単位でリモートワークと出社ができるような仕組みの構築も可能です。

企業の事情や従業員の職種に合わせて、最適な方法を検討することをおすすめします。

システムで解決できるか確認する

システムやツールの導入によって、テレワークの廃止という選択をしなくても問題を解決できる場合があります。
コミュニケーション不足や意思疎通の難しさといった問題は、ビデオ通話やチャットが可能なコミュニケーションツールを導入することで解決が期待できます

また、業務内容によって一部の担当者だけが出社を必要とされるような問題では、データ管理のシステムを見直すことで改善できる場合があります。

従業員の勤務状況把握や正確な評価が難しいなどの問題については、勤怠や業務内容の管理ツールを導入して改善する方法も考えられるでしょう。テレワークの廃止を検討する前に、現在の課題を解決できる手段がないかどうかを見直すのも一つの方法です。

コストバランスの見直しを行う

テレワークとオフィスワークでは、それぞれ必要なコストが異なります。テレワーク廃止の前に、どちらのほうがよりコストバランスが優れているかを見直すことが大切です。
このとき、単純に「コストがかかる・かからない」という基準だけで判断することは避けましょう。費用に対してどちらがより業務効率を高められるか、より良い成果を生み出せるかという視点をもつことがポイントになります

オフィスの環境を改善できるか考える

テレワーク廃止によってオフィス勤務が必要となる場合、従業員が出社のメリットを感じられるようなオフィス環境の構築の検討をおすすめします。

従業員のストレス軽減や、コミュニケーションの活性化が期待できるオフィス環境をめざすと、企業と従業員の双方にメリットが生まれます。フリーアドレスの導入、リフレッシュルームの増設などが例としてあげられます

まとめ

テレワークは、一定の水準で企業に普及しましたが、コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたことやテレワークのデメリットを感じたことを理由に廃止する企業も増えています。
廃止を検討する前に、現状をしっかりと見直し、従業員の意向を大切にしながら判断を進めることが重要です。

また、システムの導入や適切な仕組みづくりを行うことで、テレワークの課題が解決できる可能性もあるので、併せて検討してみましょう。例えば、オフィスと同じ感覚でコミュニケーションを図れるようなシステムや、情報を一元管理できるシステムなどがあると働きやすい環境づくりに役立ちます。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。