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反社チェックとは?重要性や実施方法、反社に該当した場合の対応を解説

反社チェックとは?重要性や実施方法、反社に該当した場合の対応を解説

昨今、コンプライアンスやガバナンスに対する企業の取り組みが、世間から厳しく見られるようになりました。

なかでも、「反社会的勢力」を意味する反社との関わりは、会社にとって大きなリスクとなります。また、以前は問題なかった取引先が、知らない間に反社とつながっているケースもあるでしょう。

反社と関わりを持つリスクを減らすためには、反社チェックを適切に実施し、トラブルを未然に防止することが重要です。

この記事では、反社チェックの定義や重要性、実施方法、反社に該当した場合の対応を詳しく解説します。「どうやって反社チェックに取り組むべきか」とお悩みの方は、ぜひご覧ください。

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反社チェックとは

まずは、反社チェックの定義や条例によって求められている対応、反社チェックの対象者といった基礎知識を紹介します。

反社チェックは企業が必ず行うべき作業

反社チェックの「反社」とは、「反社会的勢力」のことです。暴力や詐欺などによって不当に利益を得る団体を指し、取引先や従業員が反社会的勢力ではないことを確認する作業を「反社チェック」といいます

反社に該当する人の例として、警視庁のホームページに次のような記載があります。

条例において「暴力団関係者」は、「暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と規定されており(第2条第4号)、「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」とは、
例えば、

  • 暴力団又は暴力団員が実質的に経営を支配する法人等に所属する者
  • 暴力団員を雇用している者
  • 暴力団又は暴力団員を不当に利用していると認められる者
  • 暴力団の維持、運営に協力し、又は関与していると認められる者
  • 暴力団又は暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有していると認められる者(Q7を参照)

等が挙げられます。
よって、単に次のような状況、境遇等にあるという場合には、それだけをもって「暴力団関係者」とみなされることはありません。

  • 暴力団員と交際していると噂されている
  • 暴力団員と一緒に写真に写ったことがある
  • 暴力団員と幼なじみの間柄という関係のみで交際している
  • 暴力団員と結婚を前提に交際している
  • 親族・血縁関係者に暴力団員がいる

出典:東京都暴力団排除条例 Q&A 警視庁

反社チェックはコンプライアンスチェックとも呼ばれ、取引相手のみならず、関係する箇所に反社会的勢力とつながりを持つ人がいないか確認するために行うものです。

反社チェックを実施することで、企業の健全性を把握でき、クリアな経営を守ることに直結します。

暴力団排除条例により求められている対応

各都道府県で制定されている暴力団排除条例では、反社会的勢力との取引を防止するために、次のような対応を求めています。

  • 契約締結時に相手方が暴力団関係者でないことを確認する
  • 契約書に暴力団排除に関する条項を設ける
  • 暴力団関係者への利益供与をしない
  • 暴力団関係者と疑われる相手は、警察や公的機関に相談する

東京都暴力団排除条例では、「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」を基本理念としたうえで、暴力団と交際しないことを呼びかけています。

反社チェックの対象者はどこまで?

企業が反社チェックを行う場合、どこまでが対象者になるのでしょうか。範囲を詳しく見ていきましょう。

リスクがある個人や企業

リスクがある個人や企業は、すべて反社チェックの対象です。つまり、既存の取引先やその先のサプライヤーだけでなく、自社とつながりのある見込み顧客、役員が会食に行った相手なども対象になります。3年に一度は反社チェックを実施し、健全性を保つことが重要です。

従業員・役員

新たに入社してくる従業員と、既存の従業員に対しても反社チェックを行う必要があります。チェックは、アルバイトなど正社員以外の従業員も対象になるため、雇用形態に関係なく実施しましょう。

また、最近では入社前の社員がSNSで暴力団とつながりを持っているケースも考えられます。学生が、強盗傷害事件や詐欺事件に関わっていた事件もニュースで度々報じられているため、注意しなければなりません。役員も反社チェックの対象です。

自社株主

主要な株主が反社だった場合、企業の経営状態に支障をきたします。既存の株主に対して反社チェックを行うだけでなく、株主が増えた場合や、株主に変更があった場合にも確認することが重要です。

株主が法人の場合は、従業員のみならず、顧問弁護士や税理士といった関係者についても調査します。

反社チェックの目的・必要性

ここでは、反社チェックの目的や必要性について解説します。

企業のコンプライアンス徹底・社会的信用失墜の防止

反社チェックの実施は、企業のコンプライアンスを徹底するうえで欠かせません。

前述の通り、政府や各自治体で反社チェックに関する条例が制定されており、企業には、それらを順守する社会的責任があります。反社とのつながりが発覚すると、行政処分の対象にもなるので十分注意が必要です

また、反社とつながりがあるとわかった場合、顧客や社会全体からの信頼を失うことになります。どれだけ魅力的な商品やサービスを提供できたとしても、会社そのものに信用がなければ、顧客は離れていくでしょう。

信用が失墜した結果、損害賠償に発展する恐れもあります。経営が立ち行かなくなり、最悪の場合は倒産につながる可能性があるという認識が必要です。

上場企業の場合は、反社とのつながりが上場廃止のリスクにもなり得ます。上場企業は、非上場企業に比べて短期間で多額の資金を得やすく、反社の資金源として悪用される危険があるためです。

企業・従業員を守る目的

反社と関わらないことは、企業や従業員を守るうえでも重要な意味を持ちます。

反社と関わりを持っていると会社が信用を失い、顧客が離れていきます。その結果、会社が倒産の危機にひんし、従業員の生活を守れなくなってしまいます

また、契約締結後に取引先が反社であることが判明した場合に、契約の解除をめぐって脅迫や不当な要求をされるリスクもあります。脅迫が従業員にまで及ぶことがあるため、そういったトラブル自体に巻き込まれることを防止しなければなりません。

反社会的勢力への資金流出防止

取引先などが反社会的勢力であることを把握していなかったことが原因で、知らないうちに犯罪を助長してしまうケースも考えられます。このような「巻き込まれ」の防止も、反社チェックを行う理由の一つです。

自社の資金や売上、顧客情報といった資産が反社会勢力に流れ、犯罪に使われたことが公になると、会社は社会的信用を失います。

既存の取引先が気付かない間に反社に買収され、監査役などに反社が送り込まれているケースも増えているので注意しましょう。特に継続取引の場合は、既存の契約がそのまま更新されていることが多いため、問題があっても気付きにくいといえます。

反社チェックはいつ行うべき?

反社チェックのタイミングは契約直前になってしまうことが多いですが、本来はファーストコンタクトで行うことが望ましいといえます。

反社会勢力への対策は「いかに対応するか」ではなく、「いかに関係を持たないようにするか」が基本です。実際に、取引が無かったにも関わらず、反社とつながりがあったという理由で倒産に追い込まれた企業もあり、契約直前の対策が意味を持たないことがわかります。

新規の取引先の場合はなるべく早期に反社チェックを行い、既存の取引先に対しても、契約を更新するタイミングでチェックを実施すると良いでしょう。

反社チェックのやり方

ここでは、反社チェックのやり方を、次の3種類に分けて具体的に紹介します。

  • 自社で調査する
  • 専門の調査会社に依頼する
  • 行政機関への照会

自社で調査する

まずは、自社で調査する方法について解説します。調査は少なくとも2つ以上の方法を用いて実施することが推奨されます。

実際に、上場企業をはじめとして、多くの企業では複数の調査方法を組み合わせて反社チェックを実施しています。反社チェックを行った日時や担当者、対象者、結果といった履歴も詳細に残しておきましょう

会社情報の確認

会社情報を調べる方法として、商業登記情報の取得があげられます。その際に、商号や住所、役員、事業目的の変更履歴などを見ると、反社かどうかを確認するヒントになることがあります

また、会社のホームページから、業績や取引実績を確認することも重要です。取り扱っている商品やサービスに不審な点があれば、そこから情報を探ることができるかもしれません。

ただし、会社情報の確認だけでは反社チェックは難しいのが現状です。必ず複数の調査方法を組み合わせましょう。

インターネットや新聞のチェック

電子新聞やWeb記事から、過去に問題を起こしたことがある会社名や代表者名を検索することも可能です。会社や個人が、反社会的勢力やその関係者である場合は、Web検索で情報が出てくることがあります

また、なるべく信ぴょう性が高い情報源を選ぶことも重要です。信ぴょう性が高いサイトに記載されていることが正しいとは限りませんが、運営元がはっきりしないサイトに比べて一定の信ぴょう性は担保できるでしょう。

反社会的勢力データベースの活用

業界団体が運営する反社会的勢力データベースも、反社チェックに活用できます。すでに反社会的勢力であることが業界内で認識されている会社や人物は、調べればすぐにわかる仕組みになっています。そのため、取引相手のスクリーニングに活用できるでしょう。ただし、情報量が限られているため注意が必要です。

反社チェックツールの使用

反社チェックツールとは、Web記事や新聞記事、警察関連情報にアクセスし、過去の犯罪歴や反社会勢力との関わりを調査できるツールのことです。ツールを使用することで、調査を効率的かつ効果的に進められます。

ツールの使用にコストはかかりますが、反社チェックのノウハウがない企業でもスピーディーに高精度のチェックが実施できるのがメリットです。

専門の調査会社に依頼する

反社会的勢力について確実な内容を知りたい場合や、詳細な調査が必要な場合は、専門の調査会社に依頼する方法があります。自社で行うよりも精度が高められるため、必要に応じて活用すると良いでしょう。

外部の調査会社に依頼する際は、信頼できるところを選定しましょう。調査会社の実績や調査方法について事前に確認し、比較検討することが大切です。

また、取引先や従業員など、反社チェックの対象者と必要以上に関係性がこじれるリスクも考慮しなければなりません。伝え方にも注意が必要です。

自社で実施可能な反社チェックを行ったうえで、問題のありそうな取引先や個人が見つかった場合に、調査会社への依頼を検討するフローをおすすめします。

行政機関への照会

次のような行政機関への照会も反社チェックを行う方法の一つです。

  • 警視庁の組織犯罪対策第三課
  • 公益財団法人暴力団追放運動推進都民センター
  • 各都道府県に設置されている暴力追放運動推進センター(暴追センター)

ただし、ほかの方法に比べて情報開示のハードルが高い点には注意しましょう。最寄りの警察署に相談する場合も、確認したい取引先に関する情報や、「暴力団排除に係る特約条項」などが定められた契約書、反社の疑いがあることがわかる資料などの必要情報を準備します。

相手方が反社に該当した場合の対処法

反社チェックを実施した結果、相手方が反社に該当した場合は、どのように対処すべきなのでしょうか。いくつか選択肢があるので、順番に解説します。

弁護士に相談する

まずは、顧問弁護士に相談して指示を仰ぐ方法です。弁護士に相談するメリットとしては、法的な対処を含めて相談できる点があげられます。弁護士を通じて、警察や暴力追放運動推進センターと連携をとれる可能性もあります。

警察や暴追センターに相談する

相手方が反社であることが明らかである場合や、問題が起こる予兆が見られる場合は、警察や暴力追放運動推進センター(暴追センター)に相談しましょう。

相談する際は、従業員に対して身を守るなどの注意喚起を行ったうえで、必要なアドバイスもあわせて受けることが重要です。

ただし、警察や暴追センターへの相談は、聞き取りに時間と労力がかかる点は認識しておく必要があります。

取引を中止する

今後トラブルに発展しないように、取引を中止するのも一つの方法です。

自社の混乱を防ぐため、原材料を主力で発注しているような場合は、段階的に仕入れ量を減らしていくなどの対応を行います。

また、自社に危険が及ぶことも回避しなければなりません。反社チェックを行わないまま契約を結び、あとから取引先が反社であることが発覚した場合は、取締役が「善管注意義務違反」に問われる可能性があります。

従業員が動揺したり、業務の進め方にトラブルが起きたりしないよう配慮しながら、中止に向けて動きましょう。

反社チェック時に注意したいポイント

反社チェックを行う際は、次のようなポイントに注意しましょう。

一度だけでなく定期的に実施する

反社チェックは、実施する期間を考慮する必要があります。最初の付き合い開始時に実施するのはもちろんのこと、定期的に実施して会社の健全性を担保しましょう。

以前は問題なかった取引先が、いつの間にか反社会勢力と関わりを持っていたということも考えられます。また、反社チェックの頻度を高めること自体が、反社との関わりを抑制することにもつながります

ツールをうまく活用する

自社で反社チェックを行う場合は、会社情報の確認やインターネット上の情報を確認するなどの方法があります。しかし、自社で基準を設定することは難易度が高く、偏った結果が出たり、実態を調べきれなかったりする可能性があります

反社チェックのためのツールをうまく活用し、効率的にチェックを実施しましょう。ただし、ツールに任せきりにしないことが重要です。得られた結果を基に、自分たちでさらに根拠を確認し、必要に応じて専門家への調査を依頼するなどして、最終決定を下します。

また、ツールの導入にかかる費用や導入の手間も考慮したうえで決定する必要があります。

主観的な判断をしない

「あの人は大丈夫」「あの会社が反社なわけがない」など、自分の直感や経験などに頼って人を判断し、反社チェックを怠ることは危険なので避けましょう

反社チェックは、企業人として実施が必要です。会社の規模が小さいから実施しなくても良いということもありません。会社の規模を問わず、健全な経営を行うために反社チェックは必ず実施することを推奨します。

まとめ

反社チェックは、仕事で取引している相手やその関係者が反社会的勢力ではないことを確認するための作業です。反社と関わりがある会社や人物と取引していることがわかると、会社の信頼が失墜し、最悪の場合は倒産に追い込まれる可能性があります。

自社の従業員や株主、取引先だけでなく、取引先のサプライヤー全体をチェックする必要がある点も押さえておきましょう。また、反社チェックは企業の規模を問わず行う必要があります。

しかし、「反社」に含まれる範囲は広く曖昧で、ノウハウがないと見極めが難しい場合も多いのが現状です。本記事で紹介したように、複数の方法を組み合わせたり、ツールの利用や専門業者へ相談したりして、慎重な対応を心がけましょう。

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また、接点のない企業のリスク検索もでき、営業活動を行う前にリスクの有無を把握できるため、やりとりの無駄の発生を防ぐことができます。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。