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CRMとは?効果が出ない原因と対処方法についてわかりやすく解説
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新型コロナウイルス感染症の拡大によって、多くの企業が苦戦を強いられているのではないでしょうか。業績の見通しが悪い企業にとって、その回復が喫緊の課題となるでしょう。この記事では、業績回復の一手となりうるCRMについて、導入価値を最大化して営業力を強化する方法を紹介します。
※本記事は2022年8月に作成されました。掲載されている内容は作成時点の情報です。
高まるCRMの需要
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンライン会議、オンラインセミナー、オンライン商談などの「非対面営業」が重要視されています。その中で商談につなげるために重要とされているのが、CRM(Customer Relationship Management、カスタマーリレーションシップマネジメント)です。
IT専門の調査会社IDC Japanが2021年7月に発表した『国内CRMアプリケーション市場予測』によると、2020年の国内CRMアプリケーション市場は、市場規模が約1,871億、前年比成長率6.7%でした。
デジタルコマース分野の勢いが増すことも手伝って、長期的には増加傾向が予測されます。2025年まで年間平均5.5%の成長率で推移し、2025年には市場規模約2,448億円になる見立てであり、CRMの市場は年々増加傾向にあることが分かります。
【参考】コロナ禍を経て成長続けるCRM市場、欠かせない顧客接点の改善 - 日経クロステック Active
CRMで確認できることは、主に次の三つです。
- 顧客の基本情報
- 顧客との過去の取引実績
- 顧客とのこれまでの接点や効果
つまり、顧客の正確なデータを確認し、適切な営業フォローを実現して商談につながりやすくするための手段の一つと言えます。ただ、CRMを導入したものの、当初見込んでいた以上の成果が出ていないことに頭を抱える担当者もいるのではないでしょうか。
なぜ、成果が出ないのでしょうか。詳しく解説します。
CRMとは
「Customer Relationship Management」の略であり、「顧客関係管理」意味します。顧客関係管理とは、顧客を中心に考えてビジネスを展開し、利益を最大化しようとするマネジメント手法です。従来の大量消費社会では全ての顧客を総体的に扱うマスマーケティングが主流でした。しかし、価値観の多様化により、顧客一人ひとりに合ったOne-to-Oneマーケティングの必要性が出てきました。そこで顧客のきめ細かい管理を主体とするCRMが注目されるようになったのです。
そして、CRMの考え方に基づいて、顧客に関連したあらゆる情報を管理・活用して見込み客の購買意欲を高めたり既存顧客へのクロスセルを促したりするITツールをCRMシステムと呼びます。本来のCRMという言葉はあくまでもマネジメント手法を指し、それを実現するITツールである「CRMシステム」とは別の言葉です。
しかし、現在では慣習的にITツールであるCRMシステムを「CRM」と呼ぶケースが多くなっています。多くのCRMにはマーケティング機能も備わっているため、さまざま施策の集客や販促活動にも役立つでしょう。本記事においても特段の記載が無いかぎりCRMとはCRMシステムを指す言葉として記載します。
CRMとSFAの違い
CRMと似た機能を持つツールにSFAがあります。SFAとは「Salesforce Automation」の略称で、日本語では「営業支援システム」や「営業活動自動化」と呼ばれます。その名の通り営業部門の支援のために作られたシステム、属人化しがちな営業ノウハウをデータ化して共有するのが目的です。顧客データを属人的な資産ではなく会社の資産とするためSFAが開発されたのです。よって、SFAは営業のためのツールという位置づけが強く、営業スタッフを支援する機能が主体となっています。
一方でCRMの目的は顧客データの全社統一です。バラバラに管理してしまいがちな部門ごとの顧客データを一元化してデジタル化し、ビジネスモデル全体を顧客中心かつデータドリブンに変革するためのツールです。営業に特化したツールであるSFAとは目的の点で異なると言えるでしょう。
しかしながら、CRMもSFAも顧客データを中心としたツールには違いないので、昨今ではCRMとSFAを統合したツールや、SFA機能の付いたCRM、逆にCRM機能の付いたSFAなどもリリースされており、その境界はあいまいになってきています。
CRM導入のメリットとデメリット
CRM導入のメリット
1.顧客満足度の向上
CRMを導入すると顧客満足度の向上が期待できます。なぜなら部門間の顧客データが一元管理され、顧客アプローチの不整合が少なくなるからです。
例えば、数年前に自社の製品を使うのをやめて他社製品に乗り換えた顧客がいたとします。その顧客から久しぶりに営業部門に問い合わせがあったとしたら、以前他社へ移った経緯も踏まえてアプローチするのが最適な方法でしょう。
しかし、数年の間に配置転換などで営業スタッフが変わり、その顧客と面識の無いスタッフが対応すると、新規顧客としてアプローチしてしまうケースが考えられます。かつての顧客である事実をしっかり覚えてもらっているのと忘れられているのとではどちらの満足度が上か言うまでもないでしょう。
このように、CRMの導入によって、スタッフの配置転換や対応する部門の変更などで顧客データが失われず、資産として保存されるため、顧客に不快感を与えるケースの減少が期待できます。
2.生産性の向上
CRMを活用すれば属人化しがちな顧客データを一元的に管理でき、情報共有を効率的に行えます。顧客データへのアクセス性が高まれば営業担当者同士で、他部署とも連携しやすくなります。また、蓄積した情報を基にして適切な営業戦略を立案することも可能です。顧客データを分析することによって、顧客に合わせた最適なアプローチを選択することができるのです。
3.データドリブンな経営の根拠
CRMを長期間にわたって使っていくと顧客データが蓄積されていきます。ある程度データが蓄積されると、CRMに付属している分析機能を用いて顧客データを可視化し、新たなマーケティング戦略や経営判断の材料とすることができます。
データを元に戦略を練れば、変化の激しい市場環境に合わせたビジネスモデルの改革が可能となります。
CRMのデメリット
1.運用コストがかかる
CRMは運用コストがかかるのが普通です。 中には無料で提供されているCRMもあるが 機能が制限されていたり、小規模なデータ量にしか対応しておらず、本格的な運用に耐えられるシステムは少ないです。
料金体系はサービスを提供している会社によってさまざまですが、利用するユーザー数(社員数)や、管理するデータ量に応じた料金であるケースが多くあります。 たくさんの顧客データや社員を抱える企業が運用するにはそれなりのコストがかかると考えるべきです。
2.社内で定着しないリスクがある
せっかくCRMを導入しても社員が一向に使わず形骸化してしまうリスクがあります。現場の社員にとってはただでさえ忙しい業務フローが変化し、新しいITツールの使い方を覚えなければいけないのはストレスになります。
このリスクは、導入を決定した経営層と現場の溝をしっかりと埋めれば、ある程度の軽減が可能です。CRMが定着するかどうかは、社員がCRM導入の必要性をちゃんと理解できているか、経営層が社員とビジョンを共有する努力をしているかにかかっていると言えます。
CRM導入と活用のポイント
1.社員が使いこなせるツールを選ぶ
CRMが現場に定着するかどうかの話とも関わってきますが、導入する際には社員が使いこなせるツールの選定が重要です。特に海外のITツールは日本人からすると非常に難解で使いにくいケースがあります。
いくら高額で高機能なツールを導入したとしても、社員が使えなければ宝の持ち腐れです。ツールを選ぶ際には経営層の理念やビジョンだけでなく、現場の意見も十分考慮した上で総合的に判断する必要があります。
2.導入時に課題と目的を明確にする
CRMが先進的なシステムであるとはいっても、ただ導入するだけで効果が上がるわけではありません。 ITツール全般に言えるが、このようなツールは現在ある経営上の課題を解決するものであり、課題が分かっていないのに導入しても効果が出ないケースが多くあります。
導入する際には、自社の経営上どのような課題があるのか、何を改善したいのか、そのためにはどのような機能が必要なのか、それを明確にした上でツールを選ぶべきです。
3.費用対効果を検討する
課題と目的が明確になっていれば、必然的にどのような機能が必要かも明確になります。 選定の際には自社に必要な機能が必要十分に近い形でそろっているツールを選ぶべきです。自社に必要の無い機能があまりにも多いツールを選んでもコストばかりかかっては意味がないので、自社に最適なツールを選んだ際、導入コストと導入することで得られる効果について検討することも重要です。
4.クラウド型かオンプレミス型か
CRMはクラウド型かオンプレミス型かに分類されます。クラウド型はインターネットを通じてCRMを利用する手法である一方、オンプレミス型は社内のサーバーにシステムをインストールするのが特徴です。
クラウド型は比較的コストを抑えられ、メンテナンス不要であるのに対して、オンプレミス型ではその企業に合わせてカスタマイズしやすいという点がそれぞれの主なメリットです。予算やメンテナンスを担当する人材がいるか否かなど、自社の事情に合わせて選んでください。
5.外部システムとの連携ができるか
CRMを選ぶ際に非常に重要なポイントが外部システムとの連携です。つまり、導入しようとしているCRMが現在自社で使っているシステムと連携できるかどうかです。CRMの目的は全社的な顧客データの統一であるので、異なるデータ形式のシステムが複数あると、効果を発揮しにくいです。自社のシステムと連携が可能であるかも考慮に入れて検討するべきでしょう。
6.サポート体制の充実度を検討する
先述したように、社員が使いこなせて、定着するかどうかが一つのリスクであるので、CRMの運営会社がどこまでサポートしてくれるかを選定の基準に入れるべきです。導入時の支援はどこまでやってくれるのか、テクニカルサポートはどこまでやってくれるか、無償でやってくれるのか、有償なのか、それらを十分に検討した上で選ぶべきです。
7.無料で試すことができるか
ある程度導入するツールに目星がついたものの、実際に使用してみないと不安だという声もあるでしょう。その際、候補のツールに無料トライアルがあればぜひ活用してみてください。
実際に使うことで直感的に使い心地の善しあしを判断できる上、導入後どのように活用していくかのイメージも湧きやすいはずです。
8.社内体制と運用ルールを構築する
CRMを導入したとしても社員によって入力にムラがあると効果が発揮しにくくなってしまいます。 例えば、ある社員は頻繁にCRMのデータを更新するが、別の社員は時々しか更新しないとなると、情報の粒度にムラができ、情報の欠落が起きてしまいます。
これを防ぐにはCRMのデータを更新するルールを定め、守るように社員に促すことが有効です。業務フローが CRMを中心に回る体制を作るのが望ましいです。
9.短期的な成果にこだわりすぎない
CRMを始めDXのツールは、長期的な戦略で運用するシステムです。短期的に効率化がなされるケースもあるが、それはCRMの価値の本質ではありません。長期的にデータを蓄積し、データに基づいて中長期的な経営戦略を練るのがCRMの本質です。
仮に短期的に成果が出なかったからといって、すぐに廃止してしまうのではなく、PDCAを回しながらある程度長期的に運用してみることが大事です。
CRMの効果が出ない原因と対処方法
CRMを導入しても成果が出ないのは、CRMに入れている顧客データに原因があります。なぜならCRMは顧客データをベースに営業フォローなどの「戦術」を考えるツールであり、軸となる顧客データの精度が低いと「打ち手」が弱くなってしまうからです。
例えば過去に展示会で出会った顧客企業Aの担当者に、「以前の展示会でお伝えしきれなかったことがあるため、オンライン会議でご説明できればと思い、ご連絡しております」といった旨のメールを送ったとします。
このとき顧客企業Aの担当者が変わっていた場合は、「展示会の内容」は知らない情報である。当然興味を持ってもらえる可能性は低く、打ち手としては効果が薄くなってしまいます。このように、顧客データの質が低ければ、CRMを導入しても成果が出にくくなってしまうのです。
では、どのような顧客データを登録・更新していけばいいのでしょうか。まずはCRMで成果が出にくい顧客データの管理状況を紹介します。自社の顧客データ管理が以下のような状態に陥っていないか確認してください。
好ましくない顧客データ管理状態の一例
1.「企業情報」を中心に顧客データを管理
顧客データと一口に言っても、粒度はさまざまです。粒度が荒い顧客データをCRMに入れても、成果は出づらい。例えば「ウェブページにある企業情報」を顧客データとして管理しても、担当者一人ひとりの情報は分かりません。
接点を持っている担当者の属性により、顧客データを分析した施策が響きづらいこともあります。仮に「メールマガジンの開封」や「メールマガジン経由で紹介したセミナーへの参加」などで興味を持っていることが分かっても、担当者が決裁権を持っていなければ商談までつながりづらい可能性もあります。
つまり、企業の基本情報や興味を持ってくれた事実だけでは、成果にはつながりません。重要なのは、メールマガジンの開封やセミナーへの参加などの興味関心度だけでなく、担当者がキーパーソン(決裁権を持つ人)であるかどうかです。キーパーソンの興味関心度が高ければ、商談につながりやすくなるでしょう。
このように、CRMの価値を最大化するためには、企業だけではなく「担当者(個人)にフォーカスしたデータ整理」も必要です。というのも、企業情報から企業の状態を知りアプローチのタイミングを計るのも重要ですが、結局は個人に対してアプローチを行うゆえに人物情報も欠かせないからです。CRMに登録されている顧客データに担当者レベルの情報が少なければ、今すぐ対策を打った方が良いでしょう。具体的な対策については、後述します。
2.「人物情報」が古く、欠けがある
また、担当者の情報が入っていたとしても、情報の鮮度が悪ければ利用できないこともあります。例えば過去にセミナーを受けた顧客に、自社のインサイドセールス担当が電話をかけたとします。このとき過去にセミナーを受けた担当者の名前を出したとしても、担当が変わっていれば電話の取り次ぎすらされない可能性もあります。
では、最新の担当者名が分かっていた場合はどうでしょうか。過去にセミナーを受けた人向けにお役立ち情報がある点を伝えつつ、最新の担当者の名前を伝えられれば、電話を取り次いでもらえる可能性は高まります。顧客との接点を強化できるため、商談につながりやすくもなるでしょう。
そのため、顧客との接点情報は可能な限り最新の状態に更新し、管理しておくことが重要です。例えば、メールマガジンの登録、資料のダウンロード、オンラインセミナーの受講などのアクションを積極的に行っている顧客は、サービス・製品に対して、興味関心が高いことが分かります。そのため、顧客の興味関心などの情報を正確に蓄積し、管理しておくことで、最適なアプローチのタイミングを知ることができます。情報の鮮度が低ければ、こういったスピード感のある営業戦略を練りづらくなってしまいます。
CRMの価値を最大化するために、まずは顧客データの見直しから
これまで解説した通り、顧客データの精度はCRMの効果に大きく影響します。そのためすでにCRMを導入している場合は、顧客データの見直しから実施すると良いでしょう。しかし、蓄積している顧客データを一つひとつメンテナンスするには膨大なコストがかかり、現実的ではありません。
また、仮に一度整理したとしても、情報の鮮度とともに効果が落ちてしまう可能性もあります。そのため、可能であれば自動的に顧客データを最新の状態にアップデートする仕組みが重要となります。また、営業戦略の立案に役立つ情報も、追加で付与できるとなお良いでしょう。
例えば、Sansanが提供する「Sansan Data Hub」では、登記情報、法人番号、帝国データバンクなどのデータから、自動で顧客データに情報を付加できます。役職ランクや部署などの個人に関する属性も付与されるため、顧客データがリッチ化され、キーパーソンにアプローチしやすくなります。
商談につなげるためにCRMの活用は重要である一方、CRMに入れる顧客データの精度・鮮度についても考慮しなければ、成果は上がりにくいです。ぜひこの機会に、顧客データの質から見直してみてはいかがでしょうか。
3分でわかる Sansan Data Hub
データ統合からマーケティングを加速させる「Sansan Data Hub」について簡単にご説明した資料です。
ライター
営業DX Handbook 編集部