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MAツールでできる分析とは?得られるデータや分析方法までわかりやすく解説
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MA(マーケティングオートメーション)ツールは、顧客の行動データを分析し、効果的なマーケティング施策を自動化するためのツールです。こうしたMAツールを活用したデータ分析は、現代のビジネスにおいて欠かすことのできない戦略となっています。
本記事では、MA分析の基本から応用まで、営業・マーケティング担当者が実践できる内容をわかりやすく解説します。
MA(マーケティングオートメーション)とは
MA(マーケティングオートメーション)は、見込み顧客の獲得から育成、商談創出までのマーケティング活動を自動化し、効率化するためのツールです。従来は人が手作業で行っていたメール配信やセグメント分け、顧客スコアリングなどを、設定したルールに基づいて自動実行する機能があります。
顧客のWebサイト閲覧履歴、メール反応、資料ダウンロード履歴などを収集・分析し、最適なタイミングで最適なメッセージを届けることができるため、見込み顧客の購買意欲を高めることに効果があると言えるでしょう。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、ご参照ください。
MAが必要とされている背景
現代のビジネス環境において、MAツールの導入が急速に進んでいる背景には、マーケティングを取り巻く環境の劇的な変化があります。顧客との接点がWebサイト、SNS、メール、セミナー、展示会など多岐にわたるようになり、それぞれのチャネルで発生するデータ量は爆発的に増加しています。
また、従来のように営業担当者の勘や経験だけに頼った顧客アプローチでは、競争に勝ち残ることが困難になってきました。顧客は購買プロセスの約70%をオンラインで完結させるとも言われており、営業担当者が直接接触する前に、すでに検討が進んでいることが多いです。
さらに、一人ひとりの顧客に合わせたパーソナライズドマーケティングが求められる時代において、手作業での対応には限界があります。数百から数千の見込み顧客に対して、それぞれの関心度や行動履歴に応じた個別対応を人力で行うことは現実的ではありません。
このような背景から、データドリブンなマーケティング戦略の実現と業務効率化を両立できるMAツールが、多くの企業にとって必要不可欠なソリューションとなっています。
MAツールの分析で得られるデータ

MAツールを導入することで、従来は見えなかった顧客の詳細な行動パターンや興味関心を数値化して把握できるようになります。ここでは、MAツールから得られる主要なデータと、その分析によって見えてくる顧客インサイトについて詳しく解説します。
1. 見込み顧客の行動パターン
MAツールでは、見込み顧客のWebサイト内での詳細な行動履歴を追跡できます。どのページをどのくらいの時間閲覧したか、どの順番でページを移動したか、どのポイントで離脱したかといった情報が蓄積されるのです。
行動データの種類 | 分析できる内容 | 活用方法 |
---|---|---|
ページ閲覧履歴 | 関心分野、検討段階 | 個別フォローアップの優先順位付け |
滞在時間 | 興味の深さ | コンテンツ改善・最適化 |
離脱ポイント | 課題や不安要素 | サイト導線の改善 |
コンテンツ消費 | 情報収集の進度 | 営業アプローチのタイミング判断 |
また、メール、Webサイト、SNS、オフラインイベントなど複数チャネルにわたる顧客接点を統合分析することで、より正確な顧客像を描くことができます。
チャネルを横断した行動パターンを把握することで、単一チャネルでは見えない購買意欲の変化や検討プロセスの進行度を評価できるようになり、顧客解像度をより鮮明にすることができるでしょう。
2. メール施策の反応
メール配信機能は多くのMAツールに搭載されている機能であり、その反応データは非常に詳細に分析することができます。開封率やクリック率などの基本的な指標だけでなく、開封時間帯、使用デバイス、クリックした箇所まで詳細に把握できるものもあります。
件名、送信者名、配信時間、メール内容などさまざまな要素を組み合わせてA/Bテストを行うことで、メール施策の最適化を図れるでしょう。同じ内容でも件名を変更するだけで開封率が大幅に改善するケースは珍しくありません。
メール分析項目 | 取得できるデータ | 活用方法 |
---|---|---|
開封率・クリック率 | 基本的な反応指標 | 施策効果の全体把握 |
開封時間帯・デバイス | 行動パターンの詳細 | 配信タイミング最適化 |
A/Bテスト結果 | 要素別の効果比較 | 件名・内容・送信時間の改善 |
統合チャネル分析 | メール後の行動追跡 | ROI算出・施策改善 |
メール分析では、表面的な数値だけでなく、受信者の行動変化に着目することが重要です。開封率が高くても、その後のWebサイト訪問やコンバージョンにつながっていなければ、メール内容の見直しが必要かもしれません。
3. 詳細な顧客セグメント
MAツールでは、従来の人力では時間的制約から実質不可能だった、精密な顧客セグメンテーションの実現ができます。
年齢や性別といった基本的な属性データだけでなく、Webサイト上での行動データ、メール反応データ、購買履歴などを組み合わせることで、より詳細なセグメント分けが可能になります。
セグメント手法 | 分析対象 | マーケティング活用 |
---|---|---|
リードスコアリング | 購買可能性の数値化 | 営業アプローチの優先順位付け |
多次元セグメント | 属性×行動データ | パーソナライズド施策の実施 |
類似顧客モデリング | 優良顧客の共通パターン | 効率的なターゲティング |
行動ステージ分け | 検討プロセスの進行度 | 段階別コンテンツ配信 |
高スコアの顧客には営業が直接アプローチし、中程度の顧客にはメールや電話でのフォローアップ、低スコアの顧客には継続的な情報提供を行うといった戦略的な対応が可能になります。
類似顧客モデリングは、既存の優良顧客の特徴を分析し、同様の属性や行動パターンを持つ見込み顧客を特定する手法です。過去に高額な契約を締結した顧客の共通点を抽出し、類似する見込み顧客を優先的にアプローチすることで、効率的な営業活動を実現できます。
MAツールの分析がビジネスにもたらす3つの効果

MAツールによるデータ分析は、単なる数値の把握に留まらず、具体的なビジネス成果につながる実践的な価値を提供します。ここでは、多くの企業が実際に体験している3つの主要な効果について、その仕組みと実現方法を詳しく説明します。
成約率と売り上げの向上
MAツールの最も直接的な効果は、営業活動の質と効率の向上による成約率の改善です。見込み顧客の関心度や購買意欲を上げるマーケティング施策の実施とその結果の数値化をすることで、営業担当者は最適なタイミングでアプローチできるようになります。
従来のように「とりあえず電話をかけてみる」という場当たり的な営業ではなく、データに基づいた戦略的なアプローチが可能になります。
改善される点 | 具体的な効果 | 実現方法 |
---|---|---|
アプローチ精度 | 有望顧客の特定精度向上 | リードスコアリング機能の活用 |
営業効率 | アポイント獲得率の改善 | 高スコア顧客への集中的対応 |
提案品質 | 商談での提案精度向上 | 事前の行動履歴・興味関心把握 |
リソース配分 | 営業担当者の戦略的配置 | スコア別の役割分担システム |
MAツールの分析結果を営業部門とマーケティング部門で情報共有することで、商談での提案精度が大幅に向上し、最終的な受注率改善につながります。
他にもリードスコアリングによる優先順位付けにより、限られた営業リソースを最も効果的に配分し、経験豊富な営業担当者は高スコア顧客に集中できるようになるなど、セールス視点でのメリットが多数あると言えるでしょう。
顧客満足度の向上
MAツールの分析によって得られる顧客のインサイトや行動履歴に基づいた最適なコンテンツを適切なタイミングで提供することで、顧客は「自分のことを理解してくれている」「ちょうど自分が求めていたものだ」という印象を持ちやすくなります。
顧客満足度向上の要素 | 実現方法 | 期待される効果 |
---|---|---|
パーソナライゼーション | 行動データに基づくコンテンツ配信 | エンゲージメント向上 |
コミュニケーション継続性 | 顧客情報の一元管理と共有 | 信頼関係の構築 |
タイムリーなフォロー | 行動トリガーに基づく自動配信 | 購買検討の促進 |
一貫した対応 | 担当者変更時の情報引き継ぎ | 顧客ストレスの軽減 |
顧客の状況に合わせたタイミングでの適切なフォローアップにより、文脈に沿ったコミュニケーションがとれるため、顧客満足度の向上と信頼関係の構築が実現されます。
マーケティングの効率化
MAツールによる分析で得られる第三の効果は、マーケティング活動全体の効率化です。効果の高いセグメントを特定し、そこに集中的にリソースを配分することで、投資効果を最大化できます。
すべての見込み顧客に同様の施策を実施するのではなく、成果の見込める顧客群に重点的に取り組むことで、限られた予算で最大の成果を上げることが可能になります。
効率化の領域 | 自動化される業務 | 創出される価値 |
---|---|---|
定型業務の自動化 | メール配信・セグメント分け・レポート作成 | 戦略業務への時間創出 |
リソース最適配分 | 効果的セグメントへの集中投資 | ROI向上・予算効率化 |
施策効果測定 | データに基づく定量的評価 | 改善サイクルの高速化 |
業務プロセス改善 | 手作業削減・標準化推進 | 人的ミスの削減・品質向上 |
繰り返し行われる定型業務の自動化により、マーケティング担当者はキャンペーン企画や顧客インサイトの分析といった創造的な業務に集中できるようになるでしょう。データに基づいた施策評価により効果の低い施策を見直し、投資対効果の向上とマーケティングROIの最大化を実現できます。
MAツール分析の精度を高めるフレームワーク

MAツールから得られる膨大なデータを効果的に活用するためには、適切な分析フレームワークの活用が不可欠です。ここでは、マーケティング分析で実績のある3つのフレームワークを、MAツールでの活用方法と併せて詳しく解説します。
STP分析
STP分析は、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったマーケティング戦略のフレームワークです。
- セグメンテーション:行動データと属性データの掛け合わせによる精緻な顧客グループ化
- ターゲティング:限られたリソースを最大効果が見込めるセグメントを特定する
- ポジショニング:各セグメントに対する最適なメッセージと価値提案の設計
例えば「製造業の役職者で、競合他社の資料も複数ダウンロードしており、価格に関するページを重点的に閲覧している方向けに、費用比較に特化したWPを送付する」といった解像度で施策を決めることができます。
MAツールのスコアリング機能やコンバージョン率のデータを活用して、投資対効果の高いセグメントを特定し、そこに重点的にリソースを配分することで戦略的なマーケティングを実現できるでしょう。
RFM分析
RFM分析は、最新性、頻度、金額の3つの指標で顧客を評価するフレームワークです。
- 最新性(Recency):直近の反応から見る顧客の活性度の測定と活用
- 頻度(Frequency):接触頻度に基づく関与度評価とエンゲージメント戦略
- 金額(Monetary):顧客生涯価値を最大化するための投資判断と特別対応
このフレームワークを活用することで、最後にメールを開封した日やWebサイトを訪問した日などを元に、顧客の関心の薄れを早期に察知し、適切なタイミングでリエンゲージメント施策を実施できるようになります。
また、定期的にWebサイトを訪問し、メールを開封している顧客には、より詳細な情報や特別なオファーを提供することで、さらなるエンゲージメント向上を図れるでしょう。
デシル分析
デシル分析は、顧客を購買金額や価値に応じて10等分し、各グループの特性を分析する手法です。
- 上位顧客グループ:特性分析による成功パターンの発見と応用
- 中間層:成長促進戦略による顧客ピラミッドの強化
- 下位グループ:改善余地評価と効率的なリソース配分
上位顧客がよく閲覧するコンテンツ、反応の良いメールの特徴、購買に至るまでの行動パターンなどを詳細に分析することで、成功法則を見つけ出すことが可能になります。
中間層については上位グループとの行動パターンの違いを分析し、上位層に押し上げるための具体的な施策を立案できるでしょう。
下位グループについては、全く反応しない顧客に無駄なリソースを投入するのではなく、改善可能性のある顧客に絞って施策を実施することで、全体の効率を高められます。
MAツールの分析をする際の注意点

MAツールの分析機能は強力ですが、適切に活用するためにはいくつかの重要な注意点があります。多くの企業が陥りがちな失敗パターンを避け、確実に成果につなげるためのポイントを詳しく解説します。
初期シナリオ設計はシンプルにする
MAツール導入時に最も多い失敗は、複雑すぎるシナリオを最初から構築しようとすることです。あらゆる顧客パターンを想定した複雑な分岐シナリオを作成しても、実際には機能しないことが大半です。まずは単一の明確な目標に焦点を当てた、シンプルなシナリオから始めることが重要です。
既存の成功パターンを活用して段階的に進めることで、リスクを最小限に抑えながら確実に成果を積み重ねることができます。例えば、これまで手動で行っていたメール配信を自動化することから始め、その効果を検証してから次の段階に進むといったアプローチが効果的と言えるでしょう。
また、検証可能な小さな仮説から始めることも大切です。具体的で測定可能な仮説を立て、実際のデータで検証していくことを繰り返していきましょう。
シンプルなシナリオ設計の例
- 資料ダウンロード後3日経過した顧客に事例資料を送付する
- 対象URLをクリックした顧客にはより専門的な内容のメールを送付する
複雑なシナリオは、運用担当者の負担を増大させるだけでなく、効果測定も困難にしてしまいます。シンプルなシナリオから始めて、効果が確認できたものを徐々に組み合わせていくことで、持続可能で効果的な運用体制を構築できます。
重要指標を絞り込む
MAツールは膨大な数の指標を分析・可視化することができますが、すべてを追いかけることは現実的ではありません。バニティメトリクス(見栄えの良い指標)に惑わされず、ビジネス目標と直結したKPIを選定することが重要です。
メール開封率やWebサイト訪問数といった指標は確かに重要ですが、それらが最終的な売り上げや成約にどの程度貢献しているかを常に意識する必要があります。例えば、開封率が高くても、その後のコンバージョンにつながっていなければ、メール内容の見直しが必要かもしれません。
ビジネス目標と直結した3〜5個の核となる指標に集中し、それらの指標間の相関関係を理解することが大切です。
核となる指標の例
- リード獲得数
- リード品質スコア
- 商談化率
- 受注率
- 顧客獲得コスト
指標間の因果関係を見極めることも重要です。相関関係があっても因果関係があるとは限らないため、データの背景にある顧客行動や市場環境を踏まえた分析が必要です。
セグメントの粒度に気を付ける
MAツールのセグメンテーション機能では、時として過度に細分化されたセグメントを作り出してしまう危険性があります。データ量とセグメント数のバランスに注意し、統計的に意味のある分析ができる十分なデータ量を確保することが重要です。
具体的な施策に落とし込める実用的なセグメント設計を心がけることも大切です。いくら精密なセグメントを作成しても、それに対して具体的な施策を実行できなければ意味がありません。
「このセグメントに対してはどのような施策を実施するか」を常に考えながらセグメント設計を行うようにしましょう。
適切なセグメント設計の例
優先順位1位:業界別(製造業、IT業界、サービス業)という大まかなセグメントか
優先順位2位:企業規模
優先順位3位:役職
セグメント数が多すぎると、それぞれに対するコンテンツ作成や施策実行が困難になり、結果的に運用が行き詰まってしまいます。まずは大まかなセグメントから始めて、必要に応じて細分化していくアプローチが現実的です。
PDCAサイクルを回す
MAツールの分析は一度設定すれば終わりではなく、継続的な改善が必要です。定期的な分析レビューと仮説検証のサイクルを確立し、データに基づいた改善を継続的に実施することが成功の鍵となります。
月次または四半期ごとに主要指標の推移を確認し、当初の目標に対する達成状況を評価するのがおすすめです。目標を下回っている場合は、その原因を詳細に分析し、改善策を立案・実行しましょう。逆に、予想以上に良い結果が出ている場合は、その成功要因を他の施策にも応用できないかを検討してみてください。
まとめ
MAツールの分析機能を活用することで、従来は見えなかった顧客の行動パターンや興味関心を数値化し、マーケティング活動の質を大幅に向上させることができます。
成功のポイントは、複雑な機能に惑わされることなく、自社のビジネス目標に直結した分析に集中することでしょう。STP分析、RFM分析、デシル分析といった実績のあるフレームワークを活用し、シンプルなシナリオから始めて段階的に高度化していくアプローチが効果的です。
本記事で紹介したように、重要指標を3〜5個に絞り込み実用的なセグメント設計を心がけ、継続的なPDCAサイクルを回すことでMAツールの真価を発揮できます。
データは集めるだけでは意味がありません。実際のビジネスアクションにつなげてこそ、初めて価値が生まれます。
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ライター
営業DX Handbook 編集部