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CRM設計とは?効果的なシナリオを作る7ステップと4つの成功ポイント
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CRM設計とは、顧客データをもとに「誰に・いつ・どのチャネルで・何を伝えるか」を明確にして、最適なアプローチをするためのシナリオを構築するプロセスです。CRMを導入しても思うように成果が出ない場合は、その多くはCRMのシナリオ設計が不足していることが原因になっているかもしれません。
本記事では、CRMシナリオ設計を効果的に進める7つのステップを軸に、成果を出すための4つの視点、活用すべき3つの分析方法について解説します。自社の強みを生かしたアプローチ方法や戦略を立てたい方は必見です。
CRM設計とは
CRM設計とは、「誰に・いつ・どのチャネルで・何を伝えるか」というコミュニケーションの筋道を、顧客データをもとに戦略的に構築するプロセスです。
事前にシナリオを設計し、アプローチの流れを明文化することで、誰が対応しても同じ質で行動できる状態をつくりやすくなります。
組織全体で一定の基準やフローに基づいて顧客対応を進められるため、LTV(顧客生涯価値)の向上や商談化率の改善といった成果にもつながるでしょう。
CRM設計が重要な理由と必要性
CRMツールを導入しただけでは、現場で十分に活用されなかったり、担当者ごとに運用がばらついたりするケースが少なくありません。
顧客情報を蓄積しても、設計がなければノウハウが属人的になり、部門間で一貫性のあるコミュニケーションが取れないという課題も生じます。
こうした状況を解消するには、丁寧なCRM設計が不可欠です。
事前にCRM設計を行えば、顧客ごとに適切なタイミング・チャネル・内容でアプローチできる状態をつくることが可能になります。
結果として、信頼関係の構築や商談創出につながり、組織全体で統一された方針のもと、営業部門とマーケティング部門が連携しやすくなるでしょう。
CRMのシナリオ設計を行う7つのステップ

ここからは、CRMのシナリオ設計に必要な7つのステップについてお伝えしていきます。
ステップ1.自社商品やサービスの理解度を深める
CRM設計を始める前に、自社が提供している商品やサービスの本質的な価値を整理することが重要です。
価値を正確に把握すると、訴求メッセージや顧客別シナリオに一貫性を持たせやすくなります。競合との違い、利用シーン、顧客にとってのメリットを正確に把握することで、説得力のある訴求が可能になるでしょう。
例えば、商品が「短時間で業務効率を改善できる」という強みがある場合、その特徴を「いつ・誰に」伝えるべきかを設計に反映できます。
自社商品やサービスについて深く理解することで、顧客に対して説得力のあるアプローチができるようになります。
ステップ2.解決すべき課題を設定する
自社商品やサービスへの理解を深めたら「CRMで何を解決したいのか」を明確にします。
目的が曖昧なままでは、効果的な施策は設計できません。「既存顧客のリピートが少ない」「資料請求後のアクションにつながらない」といった具体的な課題を、データ(定量)と現場ヒアリング(定性)の両面から洗い出しましょう。
課題にひもづくKGI・KPIをあらかじめ設定しておけば、成果に直結しやすいシナリオ設計ができます。
現場で機能するCRM設計にするためには、目的と課題を可視化することが出発点となります。
ステップ3.ターゲットを設定する
次に、アプローチ対象となる顧客ターゲットを設定します。
ターゲットを定義すれば、ペルソナ設計やセグメントの区分が容易になります。CRMに蓄積された購買履歴や行動データ、属性情報などをもとに、優先的に狙うべきターゲット層を明確にしましょう。
CRMに蓄積された購買履歴や行動ログ、属性情報などを活用して「この層にはこういうアプローチが有効だ」という仮説を立てます。
例えば「高単価商品の購入実績があるが最近は動きがない層」や「初回購入後にリピート購入へ至っていない層」など、目的に応じたセグメントに分類することで、狙いを定めたシナリオ設計が実現できます。
ステップ4.アプローチするタイミングを決定する
ターゲットごとに関心が高まる瞬間を分析して、アプローチの最適なタイミングを決定します。
タイミングを見極めてアプローチすることで、反応率は大きく向上します。
例えば、商品を購入直後に「お礼メール+活用ガイド」を送れば、顧客の満足度が高まり、資料請求後すぐのタイミングで連絡をすれば、商談化率が高まります。
このように、購買・問い合わせ・ログインなどの行動データに基づいて最適なタイミングを設計することで、悪印象を与えず適切な提案が可能です。
ステップ5.各タイミングで顧客に何を伝えるかを決定する
ターゲットに対して、各タイミングで「何を伝えるか」を決定する工程です。
顧客が求める情報や価値を、フェーズごとに的確に届けることがシナリオ設計の核心となります。
購入直後であれば「お礼メッセージ+商品の活用方法」などが適しているでしょう。一定期間経過後は「関連商品の提案」や「限定キャンペーンのお知らせ」など、ステータスに応じた内容を設計すると効果的です。
過去の顧客反応・FAQ・問い合わせ履歴などの情報を参照すれば、ニーズに先回りしたメッセージ設計が可能になります。
ステップ6.チャネルごとに適したアプローチ施策を実行する
メッセージを届ける手段も、成果を左右する重要な要素です。
メール、電話、LINE、DMなどチャネルにはそれぞれ特性があり、顧客層や目的に応じて最適な選択が求められます。
例えば、リピート購入を促すキャンペーン情報はメール配信が有効ですが、資料請求後のフォローは電話やチャットの方が即効性を期待できます。
また、若年層にはLINE通知、中高年層には郵送DMなど、属性によっても反応は異なります。複数チャネルを組み合わせて活用すれば、接点の取りこぼしを防ぎ、アプローチ範囲を広げられます。チャネルごとの到達率や反応率のデータをもとに、最適な手段を検証・改善していくことが重要です。
ステップ7.PDCAを回して施策を改善する
CRMのシナリオ設計は、作って終わりではなく改善し続けることで価値を生み出します。運用フェーズに入ることで、さまざまな数値を可視化できます。
例えば、以下の点を分析すると効果的です。
- メール開封率
- クリック率
- 資料請求後の反応率
- KPIの進捗状況
これらを定期的に確認すると、ボトルネックを特定しやすくなります。
仮説→実行→検証→再設計のサイクルを繰り返していけば、顧客の反応パターンがより鮮明になり、コミュニケーションの解像度も上がっていきます。
一度設計したシナリオも、実際の顧客行動に照らして調整を重ねれば、より現場で機能する形に磨かれていくでしょう。
CRM設計を成功させる重要な4つのポイント

ここでは、CRM設計を成功させるポイントを解説します。
1.データをもとに根拠のあるシナリオを設計する
シナリオ設計の精度を高めるには、顧客データに基づく根拠が欠かせません。
感覚や経験だけで施策を決めてしまうと、ターゲットの解像度が低くなり、成果に結びつきにくくなります。購買履歴、Web上の行動、顧客属性などの情報を分析すれば、相手の状況やニーズを具体的に把握しやすくなります。
例えば、購入頻度が高い顧客と休眠顧客では、アプローチすべき内容やチャネルも異なります。
特にBtoBでは、担当者の役職や検討フェーズを踏まえた設計が、成果を左右します。
2.自社の強みを生かしたシナリオで差別化する
CRM設計で成果を上げるには、自社の強みを生かしたシナリオで差別化することが効果的です。
テンプレートのような施策では競合と差別化しにくく、顧客の印象にも残りません。自社の強みを生かした要素を意識的に取り入れることが大切です。
例えば、導入直後の活用支援コンテンツや独自のノウハウを盛り込んだ提案メールは、他社にはない体験を提供できます。
他社と同じチャネルを使っていても、伝える内容次第で差別化は可能です。
自社商品やサービスに対する理解を深めて、独自要素を強みとして活用しましょう。
3.施策の優先順位を決定する
CRM施策を設計する際は、すべての接点を一度に最適化しようとせず、明確な優先順位を設定することが重要です。
施策を同時進行するとリソースが分散し、どれも中途半端になりかねません。
まずは、自社にとってインパクトの大きい課題に集中しましょう。例えば、商談化率が低いことが明確な場合、そのフェーズのシナリオに注力すれば成果を得やすくなります。
優先順位が決まっていれば、チーム内での合意も取りやすく、施策の進行もスムーズです。限られた人員や時間の中でも、設計・実行・検証の流れが回しやすくなり、改善スピードも高められるでしょう。
4.KGI・KPIを設定して数値計測できるようにする
CRM設計を行う際は、施策成果を数値で計測できる状態を整えることが不可欠です。目標が曖昧なままでは、設計の意図がぶれ、改善点を特定できません。
施策の進捗を客観的に把握するためには、以下のような指標を活用します。
- 案件化率
- リピート率
- メール開封率
これらの指標を目的に応じて選定し、KGI(最終的な目標)とKPI(中間の評価軸)を適切にひもづけておくことで、CRM設計と事業成果の関係性をチーム全体で共有しやすくなります。
数値に基づく運用を徹底すれば、継続的な改善につながります。
CRM設計に効果的な3つの分析方法

CRM設計の効果的な分析方法について解説します。
1.顧客分析
顧客分析は、属性や行動履歴、購買データなどをもとに顧客を分類し、それぞれに適した施策を設計するための分析方法です。セグメント単位での最適化を進めるうえで、CRMとの相性が特によい分析方法と言えます。
顧客の状態を把握する際は、以下のような区分で整理するのが一般的です。
- 新規顧客
- リピート顧客
- 休眠顧客
こうした層ごとの特徴を捉えることで、アプローチの優先順位や内容が明確になり、成果につながりやすい設計が可能になります。
問い合わせの傾向やアンケートの回答といった定性データを組み合わせれば、表面的な分類だけでなく、背景にある動機や不満といった要因にも踏み込んだ設計ができるようになるでしょう。
2.売上分析
売上分析は、商品別・期間別・顧客別などの視点で売上データを分解し、収益構造や重点領域を明らかにする分析方法です。
商品別・期間別・顧客別といった切り口で売り上げを分解すると、施策の優先度が見えてきます。また、購買頻度や金額、粗利構成を整理すると、次に何を強化すべきかが明確になります。
売上分析によって、設計したアプローチが実際に売り上げにつながっているのかを判断しやすくなります。
3.RFM分析

RFM分析は、Recency(最新購入日)、Frequency(購入購買頻度)、Monetary(購入購買金額)の3軸で顧客を分類する代表的な分析方法です。
ロイヤル顧客や離反リスクの高い顧客など、状態の異なる層を定量的に把握できるメリットがあります。購買履歴に基づく分類は再現性が高く、過去の行動に応じたアプローチ設計にも生かしやすいのが特徴です。
セグメント別に適したシナリオを設計することで、限られたリソースでも高効率な顧客アプローチが実現できます。
まとめ
CRMのシナリオ設計は、単なるデータ活用やツール運用ではなく、営業やマーケティングの現場で成果を生む戦略的なプロセスです。「誰に・いつ・どのチャネルで・何を届けるか」を明確にし、再現性のある施策として実行できるかどうかが、成果を左右します。
設計の精度を高めるためには、顧客データの読み解き方、施策の優先順位、目標指標の設定といった実務的な要素も重要です。こうした設計を支える基盤として活用できるのが、ビジネスデータベースのSansanです。
Sansanは、名刺情報や外部システムとの連携により、顧客情報を最新かつ正確な状態に保つことが可能です。そのため、シナリオ設計の起点となる顧客情報のレベルを高め、CRM設計の精度を上げることに役立ちます。
CRM設計に課題を感じている方は、Sansanの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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ライター
営業DX Handbook 編集部









