- 営業ノウハウ
ソリューション営業とは?メリットと成功のポイントを解説
公開日:
更新日:
顧客の課題を深く理解し、最適な解決策を提案するソリューション営業。その具体的な手法やメリット、従来の営業との違いが気になっている方も多いでしょう。
この記事では、ソリューション営業の概要からメリット、実践するための4つのステップなどを解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
ソリューション営業とは
ソリューション営業とは、顧客の課題やニーズに対して具体的な解決策を提供する営業手法のことです。
例として、製造業の企業が新しい生産ラインの立ち上げを考えている場合をイメージしてみましょう。一般的な営業では、機械設備のカタログやスペックを提供するだけで終わってしまうことが多いのではないでしょうか。
しかし、ソリューション営業では、最適な機械設備の選定だけでなく、ラインのレイアウトやワークフローの改善提案までを含めた総合的な解決策を提供することに着目します。
このように、単なる製品やサービスの販売にとどまらず、顧客の抱える課題を深く理解し、それに最適な解決策を提案することに焦点を当てています。
そのためソリューション営業では、顧客のニーズを正確に引き出し、その解決策を提供することで、長期的な信頼関係を築くことが可能です。
では、ソリューション営業と他の営業手法、例えばプロダクト営業やアカウント営業、インサイト営業とはどのように異なるのでしょうか?それぞれ確認してみましょう。
プロダクト営業との違い
プロダクト営業は特定の製品やサービスの機能や特徴を中心に売り込む手法です。製品そのものの性能やメリットを強調し、その価値を伝えることを目指します。
「顧客のニーズや課題を解決することに焦点を置いている」ソリューション営業に対して、「製品やサービスそのものに焦点を置いている」という点が異なります。
アカウント営業との違い
アカウント営業は、特定の顧客や取引先(アカウント)に焦点を当て、その顧客との関係を維持・強化し、長期的なビジネスを築くことに重点を置きます。アカウント営業の主な目標は、既存顧客との取引を拡大し、顧客満足度を高めることです。
つまり、アカウント営業は顧客との長期的な関係構築が主な目的であるのに対し、ソリューション営業は顧客の問題解決に特化したアプローチを取るという点で異なります。
インサイト営業との違い
インサイト営業は、顧客がまだ気づいていない潜在的な問題やニーズを発見し、それに基づいて提案を行う営業手法です。
インサイト営業のアプローチは、顧客に新たな視点や気づきを提供することで、新しい価値を提案し、顧客のビジネスを改善することを目指します。
つまり、インサイト営業は顧客にまだ気づいていない問題に気づかせることが重要であるのに対し、ソリューション営業は顧客が既に認識している問題の解決に特化している点で異なります。
ソリューション営業がより重要視される背景
ソリューション営業がより重要視される背景には、現代の市場環境や顧客のニーズの変化が大きく関係しています。
具体的には、以下の3点です。
- 顧客ニーズの多様化
- 市場の成熟化や商品のコモディティ化
- 生成AIの進化による顧客ニーズの高度化
顧客ニーズの多様化
現代の市場では、特に顧客ニーズの多様化が顕著になっています。
デジタル化の進展やインターネットの普及により、顧客が自分で情報を収集し、製品やサービスを比較・選択できる時代になったからです。
これにより、顧客が導入する製品やサービスの選定を自己完結させる機会が増え、営業担当者が直接介入するソリューション営業が時代遅れと見なされることがありました。
しかし、実際にはソリューション営業の価値はむしろ高まっています。なぜなら、情報が氾濫する中で、顧客はどの情報が信頼できるか、どの製品が自分の問題を本当に解決してくれるかを見極めることが難しくなっているからです。
ソリューション営業では、顧客の具体的な問題を理解し、その解決策を提供することで、顧客にとっての信頼できるパートナーとなることができます。
このように、顧客の視点からの価値提供が求められる現代において、ソリューション営業は古い手法どころか、ますます重要性を増しているのです。
市場の成熟化や商品のコモディティ化
現代は市場の成熟化や商品のコモディティ化が進んでいると言われており、これもソリューション営業が重要視される要因になっています。
コモディティ化とは、製品が市場でほぼ同じように見え、機能や品質に大きな差がなくなる現象です。
市場が成熟するにつれて、競合が増え、製品やサービスの差別化が難しくなります。また、商品のコモディティ化により、顧客は価格やブランドの認知度を基準に選ぶことが多くなり、価格競争が激化しているのです。
このような状況では、単に製品を販売するだけでは顧客の関心を引くことが難しくなります。そこで、ソリューション営業の出番です。
ソリューション営業は、顧客の具体的な課題に基づいた提案を行うことで、製品の機能以上の価値を提供します。
これにより、他社との差別化が可能となり、顧客に対して新たな価値を提供することができるのです。
市場が成熟し、商品のコモディティ化が進む中で、ソリューション営業の重要性は再評価されています。
生成AIの進化による顧客ニーズの高度化
生成AIの進化により、多くの人がAIを利用して手軽に課題を解決しやすい環境が整うようになりました。例えば、マーケティングの専門的な知識がなかったとしても、生成AIを使って市場分析や業務効率を向上させるための手法を導き出し、実践に移すことも可能になっています。
このような技術の普及により、企業側は顧客に対して、単なる製品提供にとどまらない、より高度で具体的なサポートを求められるようになりました。
つまり、企業側は生成AIでは解決できない課題やニーズをサポートすることが求められているのです。
ソリューション営業は、このような状況で特に重要な役割を果たします。
顧客がAIから得た情報を基に、ソリューション営業はさらに深い分析を行い、顧客が直面している具体的な課題に対する解決策を提供します。
例えば、顧客がAIを使って市場のトレンドを把握した場合、そのデータを基に、業界の専門知識を生かして新しいプロモーション戦略の立案をしたり、新商品の投入をしたりするとよいでしょう。
これにより、顧客はより実践的で効果的な対策を講じることができ、結果として成果を向上させることができます。
このように、AI技術の進化によって顧客の期待が高まる中、ソリューション営業はますます重要な役割を担っているのです。
ソリューション営業に取り組むメリット
ソリューション営業に取り組むことで得られるメリットは多岐にわたります。具体的には、以下の2つの重要な点が挙げられます。
- 顧客との信頼関係構築によるLTVの増加
- 競合との差別化戦略として活用できる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
顧客との信頼関係構築によるLTVの増加
ソリューション営業を通して、顧客との信頼関係が深まると、将来的に顧客生涯価値(LTV)が高まることが期待できます。
顧客の課題解決やニーズにフォーカスし続けることで、顧客の目標達成や成果につなげやすくなります。
さらに、顧客に中長期的にサービスを利用し続けてもらうことで、信頼関係が深まるでしょう。それにより、アップセルやクロスセルの機会を得られます。
特にスモールスタートでサービスや製品を導入した場合、実績を上げることで他部署やグループ企業への導入が決まることもあります。
これにより、顧客ごとのLTVが長期的に増加し、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。
競合との差別化戦略として活用できる
ソリューション営業は、競合他社との違いを見いだすためにも強力な手段になります。
顧客の抱える具体的な課題や、潜在的なニーズに焦点を当てることで、製品や価格の単なる比較にとどまらず、独自の価値を提供できるからです。
例えば、ターゲット市場における競争を考えた場合、新規参入が増えるほどサービスのコモディティ化が進んだり、価格競争になったりすることは少なくありません。そうなると、資本力や認知の高さで勝負する必要が出てくるでしょう。
しかし、顧客の実績につなげ、得られたアウトカムを営業やマーケティング活動に生かし新規の顧客獲得につなげるには、どのように課題を解決するかが根幹となります。ソリューション営業を継続し、着実に実績を積み上げることで市場でのポジションを強化し、競争優位性を確立することが可能になるでしょう。
ソリューション営業を実践するための6つのステップ
ソリューション営業を成功させるためには、以下の6つのステップが重要です。これらのステップを順に実行することで、顧客のニーズに応じた最適な提案が可能になります。
- 中期経営計画や事業内容などの現状把握
- 優先的な課題やソリューションを整理する
- 商談・ヒアリングの機会を設ける
- 仮説の提案と認識の擦り合わせ
- BANTC情報を収集・整理する
- クロージング
それぞれのステップについて詳しく説明します。
1.中期経営計画や事業内容などの現状把握
まず、顧客の中期経営計画や事業内容を把握することから始めます。
ここでは、顧客が設定している目標やビジョン、現在の業務状況、業界内での位置付けを理解することが重要です。
これにより、顧客のビジョンや戦略、現在の状況を理解し、どのようなニーズや課題があるのかを把握できます。
そのうえで、どのようなアプローチが適切なのか、社内の誰に接触するのが有効なのかを整理できるでしょう。この段階で整理した情報を基に、仮説を立て適切なソリューションを提案するための基盤を作ることが大切です。
2.優先的な課題やソリューションを整理する
次に、顧客が直面している優先的な課題やニーズを整理していきましょう。
このステップでは、顧客の現在の状況を把握したうえで、最も重要な課題を特定することが求められます。
例えば、顧客がDX推進のために既存のシステムから新しいSaaSを導入しようとしている場合、以下のような課題があげられるでしょう。
- 現行システムとの互換性やデータ移行の難易度
- 新システムの操作に関する従業員のトレーニングの必要性
- 導入後の費用対効果
- システム選定の基準と選択肢の比較
- 導入後、社員に適切に活用してもらうための支援
このように課題を整理することで、どの対策が最も効果的かを明確にし、顧客にとって適切な提案を行う基盤を作ります。
この過程で特定された情報は、顧客のニーズに沿った提案をするために不可欠です。
3.商談・ヒアリングの機会を設ける
顧客との商談やヒアリングの機会を設けることで、具体的なニーズや問題点をさらに深く掘り下げます。
特に提案するサービスや製品にあわせて、接触すべきキーパーソンや商談で同席してもらうべき人物は誰なのかを把握しておきましょう。
特に経営計画にまで話が及ぶ領域の場合、事業部の担当者だけでなく、それ以上に部門長、役員など実際に権限を持つ人物へのヒアリングが重要です。
適切な人物との接触や対話を通じて、顧客の意図や要望を把握することで、より正確な提案を行うための情報を収集しましょう。
4.仮説の提案と認識の擦り合わせ
得られた情報を基に仮説を立て、顧客への提案準備を進めていきましょう。
準備ができたら、顧客のニーズに応じた具体的な対策を提示し、その提案内容について顧客との認識を擦り合わせてください。
提案の規模や、フォーカスする課題によっては、すぐに話が進まないこともあるでしょう。中には、事前のヒアリング情報が不足していて、想定していた仮説とは反応が違うことも少なくありません。
ソリューション営業はクロージングまで時間を要することが多いため、都度フィードバックを受けて、提案内容を修正・改善することが重要です。
その場合は、「仮説のどこにずれがあったのか」「どんな情報が欲しいのか」など、ネクストアクションにつながるための情報を必ず得てから次の提案の機会を設けるようにしましょう。
5.BANTC情報を収集・整理する
BANTC(予算、権限、ニーズ、タイミング、競合)の情報を収集し、整理します。この情報を基に、顧客が成約する可能性が高いかどうかを判断し、提案の優先順位をつけてください。
なぜBANTC情報が重要かというと、これらの要素を理解することで、顧客の意思決定プロセスを正確に把握できるからです。これにより、提案の内容やタイミングを最適化し、より効果的なアプローチが可能になります。
特に顧客の課題に沿った提案をするうえで、誰に接触しておくべきか、決裁権や権限を持っているかを把握することが何より重要です。
情報収集やヒアリングを通して、それらの情報を整理して提案を進めていきましょう。
6.クロージング
最後に、提案内容を基にクロージングを行います。顧客の疑問や懸念を解消し、最終的な合意を得るためのプロセスです。
このステップでは、顧客が購入に対する決断を下すように導くことが求められます。
いくら優秀なプレゼンを行ったとしても、クロージングが成功しなければ、契約成立に至りません。そのため、クロージングは営業活動において非常に重要なプロセスであると言えます。
実際にクロージングを行う際は、以下のポイントを意識してみてください。
- 顧客の課題やニーズを丁寧にヒアリングする
- テストクロージングで顧客の現在の意思・状況を把握する
- 契約の意欲が見えたタイミングでクロージングに入る
ソリューション営業を成功させるためのポイント
ソリューション営業を成功させるためには、以下のポイントに注力することが重要です。
- 業界知識と製品理解を重点的に深める
- 顧客の課題やフェーズを踏まえた仮説を立てる
- 営業プロセスを明確化し顧客の情報や接点を管理する
業界知識と製品理解を重点的に深める
業界知識と製品理解を深めることは、ソリューション営業の成功に不可欠です。
業界のトレンドや競合の状況、自社製品やサービスの特徴を把握することで、顧客に対して最適なアプローチを提供できるからです。
例えば、近年さまざまな業界で重要視されているのが、「DX」です。
ターゲットとなる業界では、それぞれの分野でDX推進がおこなわれているかもしれません。特に中期経営計画などでDXの取り組みや指針を発表している場合は、その情報をキャッチアップしたうえで、提案や商談の機会を作る材料にするべきかを検討したほうがよいでしょう。
また、競合の状況や自社製品の特徴、強みを理解しておくことも重要です。ソリューション営業の場合は、顧客の課題を起点にするため、自社で何ができるのかを誰よりも理解し、受け答えできることが求められます。そのうえで、競合はどのようなことに対応しているのか、何が異なるのか(自社の強みなのか)を理解しておくことで顧客の正しい意思決定を促すことができるでしょう。
顧客の課題やフェーズを踏まえた仮説を立てる
顧客の抱えている具体的な課題やニーズを把握し、それに基づいた仮説を立てることも重要です。
顧客の業種や事業の段階(スタートアップ、成長期、成熟期など)に応じて、適切な仮説を設定します。
この仮説を基に、実際の提案内容や戦略を構築することで、より具体的かつ実践的な解決策を提供できるようになります。これにより、顧客に対する理解が深まり、信頼関係の構築にもつながるでしょう。
営業プロセスを明確化し顧客の情報や接点を管理する
営業活動を効果的に進めるためには、まず営業プロセスを明確にすることが重要です。具体的には、営業の各ステップ(初回接触、提案、交渉、契約など)をしっかりと定義し、それに基づいて計画を立てることが求められます。
例えば、CRM(顧客管理システム)の活用などが有効です。CRMシステムを使うことで、顧客の情報(連絡先、過去の商談内容、フィードバックなど)を一元管理でき、営業チーム全体が同じ情報を共有しながら対応することが可能になります。
この情報管理を徹底することで、営業プロセスの各段階でのアクションプランを策定し、効率的に商談を進めることができます。
また、顧客の反応やフィードバックをリアルタイムで追跡することで、より良いサービスの提供や改善点の特定が行いやすくなるでしょう。結果として、商談の成功率が高まり、顧客との関係がより深まります。
ソリューション営業に求められるスキル
ソリューション営業においては、顧客のニーズを深く理解し、的確な提案を行うために、以下のスキルが重要視されます。
- ヒアリングスキル
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
まず、ヒアリングスキルが必要です。これは顧客のニーズや課題を正確に理解するために欠かせません。顧客の言葉をよく聞き、適切な質問をすることで、顧客の本当の問題や潜在的なニーズを明らかにします。これにより、どのような解決策が最も適切かを判断するための基盤が整います。
次に、問題解決能力が求められます。顧客の課題に対して具体的な解決策を考え出す力が必要です。得られた情報を基に仮説を立て、最適な対応策を導き出すことで、顧客にとって価値のある提案を行うことができます。顧客の課題を解決するためには、業界の知識(ドメイン知識)も重要で、これにより顧客の状況に応じた効果的な解決策を提供することができます。
最後に、コミュニケーション能力が重要です。顧客との信頼関係を築くためには、明確で効果的なコミュニケーションが必要です。相手の意見を尊重し、自分の提案を分かりやすく伝えることで、顧客との関係を深め、信頼を得ることができます。
これらのスキルを活用することで、ソリューション営業の成功をより確実なものにすることができます。
Sansanの活用でソリューション営業に必要な情報や接点管理を効率化
ソリューション営業をうまく進めるには、顧客の情報や接点の管理が非常に重要ですが、これがうまくできないと悩む方も多いのではないでしょうか。
顧客情報が整理されていなかったり、接触履歴が不明確だったりすると、適切な提案が難しくなり、営業の成果に影響が出ることもあります。
そこで、Sansanの活用が効果的です。
例えば、Sansanの名刺管理機能を利用することで、顧客の連絡先や会社情報、接触履歴をデジタルデータとして簡単に保存できます。
情報の整理や検索が容易になり、顧客のニーズや過去のやり取りを迅速に把握することが可能です。これにより、ソリューション営業に必要な情報を常に最新の状態で維持できます。
まとめ
ソリューション営業は、顧客の具体的な課題やニーズに応じて最適な提案を行う手法で、現代のビジネス環境での重要性が高まっています。
まずは、顧客の現状を正確に把握し、優先的な課題やニーズを整理することが必要です。その後、商談やヒアリングの機会を活用し、深い理解を得ることで、提案の質が向上します。
仮説を立てて認識を擦り合わせ、BANTC情報を収集し整理することで、提案内容の精度も高まります。最終的には、クロージングに向けた準備を整え、成功へと導くことが重要です。
これらのプロセスを通じて、顧客のニーズに最も適した解決策を提供し、営業活動の成功率を高めることができます。
しかし、効果的なソリューション営業を実践するためには、情報収集の質や仮説の精度を高めることが重要です。
そのための顧客情報の収集に時間を要し、重要な情報取得の方法に苦戦することも少なくありません。
そこで、営業DXサービス「Sansan」を活用し、企業情報や接触すべきキーパーソンの特定を効率よく行うことをおすすめします。「コンタクト」機能で営業メンバーの活動を記録・分析できるだけでなく、「組織ツリー」や「接点マップ」で重要な役職者との接点を管理することも可能です。さらに「ニュース配信」機能によって業界動向をキャッチし、顧客への提案のためにおさえておきたい情報を迅速にまとめることができます。
*2024年7月段階での仕様です
Sansanの機能を活用することで、ソリューション営業をサポートし、企業の成長と競争力の向上に貢献します。営業企画部門の立ち上げを検討したいとお考えの方は、ぜひSansanをご活用ください。
3分でわかる Sansan
営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。
ライター
営業DX Handbook 編集部