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BtoB SaaSとは?ビジネスの特徴や成功のポイントを解説
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BtoB SaaSは、ソフトウエアやサービスをクラウド上で提供する形態である「SaaS」のうち、BtoB(企業間取引)向けのサービスを意味します。
BtoB SaaSビジネスでは、新規ユーザーの獲得とあわせて、既存顧客の長期利用を促し、安定的に利用を継続してもらうことが重要です。
本記事では、BtoB SaaSビジネスの特徴や成功のポイントをわかりやすく解説します。
BtoB SaaSとは
まずは、BtoB SaaSの基礎と市場動向、将来性、BtoC SaaSとの違いを確認しておきましょう。
SaaS=ソフトウエア・システムのサブスクリプションビジネス
SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウエアやシステムをクラウドサービスとして、一定期間の利用権に対して顧客に利用料を払ってもらうサブスクリプションビジネスの一種です。
従来の買い切り型のビジネスモデル(オンプレミス型のツール)とは異なり、ユーザーの状況に応じて機能をアップデートすることにより、ユーザーに寄り添ったサービスの展開が可能です。
SaaS企業は、ユーザーの利便性を向上させて長期的な利用を促すことで、安定的な収益を見込むことが可能です。
SaaSの市場動向や将来性
SaaS市場は急激に成長しており、今後も市場規模の拡大が続くと予想されています。
総務省が公開している「令和5年版 情報通信白書」のデータからもわかる通り、世界のクラウドサービス市場は拡大傾向にあり、その中でもSaaSがもっとも高い割合を占めています。
引用:総務省|令和5年版 情報通信白書|データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向
BtoC SaaSとの違い
BtoC(企業消費者間取引)SaaSビジネスは、対象とするユーザーが個人であり、通常は本人の意思だけで契約が成立します。一方で、BtoB SaaSでは企業が対象となるため、ユーザーが最終的な決裁者でない場合があり、契約を締結するためには上位の意思決定者に説明する必要があります。
例えば、アプリストアで販売されている月額アプリなどは、本人が利用を希望した場合、スマートフォンからその場で申し込みが可能です。しかし、法人向けのBtoB SaaSの場合は、導入までに「比較検討・見積もり・社内決裁」といった段階を踏むことが一般的で、検討から導入までの期間は比較的長くなる傾向があります。
BtoB SaaSビジネスの特徴
BtoB SaaSビジネスには、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、BtoB SaaSビジネスの特徴を3つの要点にまとめて解説します。
収益構造が従来のビジネスと異なる
BtoB SaaSビジネスは、通常のビジネスと比較して収益構造が異なります。従来の買い切り型モデルでは、商品・サービスが購入されたタイミングで収益が発生します。一方で、BtoB SaaSでは月額の従量課金が基本となり、サービスを継続・更新するタイミングや、アップセル・クロスセルのタイミングで収益が発生します。
収益が継続的かつ安定して発生することで見通しが立てやすく、戦略的な事業計画の立案が容易であることが、この特徴の利点といえます。
また、買い切り型モデルでは一度の取引で大きな金額を得ることが期待されますが、BtoB SaaSの場合は一度に収益が計上されるわけではなく、毎月継続利用の収益が積み上がっていく仕組みです。
そのため、BtoB SaaSビジネスでは、損益分岐点が数カ月後になるケースもあり、事業の収益性の評価をするために、顧客単位で採算性を評価する「ユニットエコノミクス」という指標が活用されます。
顧客維持の重要度が高い
BtoB SaaSビジネスは、買い切り型と比較すると顧客にとっては初期コストがかからず、解約もしやすいサービスといえます。新規顧客獲得だけでなく既存の顧客の維持率がビジネス拡大に影響するため、いかに顧客との長期的な関係性を構築し、サービスに引き留めておけるかが重要です。
ユーザーに利用を継続してもらうことで、中長期的な黒字化をめざすモデルでもあり、「解約率(チャーンレート)」を低く抑えて積み立ての規模を拡大し、事業の成長へつなげることが求められます。
取得・活用できるデータが多い
顧客との関係性を深めるためには顧客分析が必要であり、データ活用が必須です。BtoB SaaSビジネスでは、買い切り型と異なり購入後も顧客との関係が続くため、顧客とのやり取りから取得できるデータが豊富であるという特徴があります。
ユーザーの利用状況や嗜好(しこう)、購買データなど、多岐にわたる情報を取得・分析することで、企業はより効果的なマーケティング戦略を展開できます。
取得した顧客データを企業のマーケティングに活用するためには、情報をデータベース化し、整理して情報を随時更新できるような仕組みを構築することが重要です。
ただし、データを収集するだけでは不十分であり、データを分析し、改善策を導き出すことが求められます。この分析プロセスには多くのリソースを充てる必要があります。
BtoB SaaSビジネスを成功させるためのポイント
特有の収益構造や、顧客維持の重要性をもつBtoB SaaSビジネスを成功させるためには、次のポイントを押さえると良いでしょう。
- 継続率とユーザー数が重視される
- 収益性を最大化する
- 早期にコスト回収をする
- 顧客視点でサービス展開をする
- 顧客情報を有効活用する
継続率とユーザー数を重視
BtoB SaaSビジネスでは、ユーザーの継続率とユーザー数を重視したアプローチが必須です。顧客との長期的な関係を維持するためにも、顧客を中心に据えて、マーケティング部門や営業部門、カスタマーサクセスなどが一体となり、積極的に連携する必要があります。
契約の更新や解約者への効果的なアプローチを行い、解約の原因を特定し、解約率を低減するための施策を立案する組織体制を築かなくてはなりません。
また、既存顧客へのアプローチだけでなく、新規ユーザーを獲得するための戦略も展開していく必要があります。確度の高いアプローチを行うためには、ターゲット層を具体的な人物像に落とし込んだ「ペルソナ」を設定し、購入意向が高く、見込みのあるユーザーに対してアプローチすると良いでしょう。
収益性の最大化
BtoB SaaSビジネスの成功には、収益性の最大化が不可欠です。BtoB SaaSビジネスでは、収益構造が独自であるため、積極的な価格戦略や付加価値の向上が求められます。競争相手との差別化を図りつつ、市場の価格感覚や競争状況を把握し、顧客視点で適切な価格を設定することが重要です。
また、価格が安いプランの利用が多い場合は、既存顧客からの追加的な収益を生み出すためのアップセルやクロスセルの施策も検討すべきでしょう。アップセル・クロスセル戦略を成功させるためには、顧客目線に立ち、不満を把握して解決していく必要があります。
さらに、顧客の不満やニーズを把握し適切な解決策を提供することで、解約率を低減し、顧客生涯価値(LTV)を最大化できます。解約率の低減には、カスタマーサクセスが重要な役割を果たします。持続的なコミュニケーションを通じて、顧客がサービスを最大限に活用できるよう支援し、顧客満足度を向上させることが重要です。
早期のコスト回収
BtoB SaaSビジネスでは、早期にコスト回収を達成することで成功へつながりやすくなります。顧客獲得にかかるコストは「CAC(顧客獲得コスト)」と呼ばれ、SaaS企業においては理想的な回収期間は1年以内とされ、1年を超えると投資効率が低下するとされています。業績の良い企業では、半年前後で回収できることもあります。
ほかにも、投資したコストを回収するまでの期間を表す「Payback Period(資金回収期間)」や、顧客一社あたりの収益性の高さを示す「Unit Economics(ユニットエコノミクス)」などの指標を活用することもおすすめです。
投資回収期間が目標よりも長い場合は、コスト回収を早める方法を検討し、改善につなげましょう。
顧客視点のサービス展開
BtoB SaaSビジネスでは、顧客のニーズや要望に添った柔軟なサービス提供が求められます。顧客が抱える課題や要求に応え、顧客体験を向上させることが、拡大を続ける市場での競争力向上につながります。
そのためには、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービスの改善に生かすことが重要です。このとき、すべての顧客を対象とするのではなく、収益性の高い主要な顧客や改善効果の高い課題を抱えている顧客のフィードバックから優先して取り組むと、より効率的にサービスを改善できます。
顧客情報の有効活用
ここまで説明してきたような、顧客との長期的な関係構築、顧客視点でのサービス展開を達成するためには、顧客情報の有効活用が欠かせません。データ駆動の意思決定を行うためには、顧客データの収集・整理・分析が必要です。
顧客データを、部署をまたいで統一的なデータベースに集約し、最新かつ正確な状態を全社で効果的に管理することが望ましいでしょう。誰もが必要な情報にアクセスできる体制を構築することで、マーケティング部門や営業部門、カスタマーサクセス部門などの異なる部門間での連携もスムーズになります。
まとめ
BtoB SaaSの市場規模は増加の一途をたどっており、今後も高い成長が期待されています。
収益構造が従来のビジネスと異なるため、継続率を高めてユーザー数を増やすことや、ユーザーあたりの収益性を高めることが重要です。取得したデータを活用してサービスやサポートを改善し続けるためには、顧客情報の有効活用が求められます。
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ライター
営業DX Handbook 編集部