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インバウンド営業とは?手法や特徴、向いている業界を徹底解説

インバウンド営業とは?手法や特徴、向いている業界を徹底解説

インバウンド営業は従来の営業手法とは異なっており、プル型営業・反響営業とも呼ばれています。しかし、その本質や実践方法については、まだ十分に理解されていない実情があるのです。本記事では、インバウンド営業の定義から具体的な手法、特徴、そして特に相性の良い業界まで、徹底的に解説していきます。

インバウンド営業とは?

インバウンド営業とは、有益な情報やコンテンツを提供することで、顧客の方から関心を持って接触してくるのを待つ営業手法です。

プル型営業・反響営業とも呼ばれており、具体的には、ブログやSNS、ウェビナーなどを通じて価値ある情報を発信し、潜在顧客の興味を引きます。この方法により、押し売りのような印象を与えることなく、自然な形で商談につなげることができるのです。

顧客のニーズに寄り添いながら、長期的な関係構築を目指すこの手法は、デジタル時代の新たな営業スタイルとして急速に普及しつつあります。

アウトバウンド営業との違い

アプローチ主体

営業手法

インバウンド営業

顧客からアプローチ

WEBサイト、ブログ、SNS

アウトバウンド営業

自社からアプローチ

電話、メール、訪問

アウトバウンド営業は、営業担当者が積極的に見込み顧客にアプローチし、製品やサービスを売り込む手法です。電話、メール、訪問などを通じて直接的なコンタクトを取ります。

一方、インバウンド営業は、顧客の方から関心を持って問い合わせてくるのを待つ手法です。WEBサイト、ブログ、SNSなどを通じて価値ある情報を発信し、顧客の興味を引きつけます。

アウトバウンドが能動的なアプローチなのに対し、インバウンドは顧客の自発的な行動を促す点が特徴的です。また、インバウンドはアウトバウンドに比べて、より長期的な視点で顧客との関係構築を重視します。

インサイドセールスとの違い

インサイドセールスは、電話やメールなどを使って社内から営業活動を行う手法であり、アウトバウンド営業の一種です。一方、インバウンド営業はコンテンツマーケティングやSNSなどを活用して顧客の興味を引き、自然な形で接点を作り出します。

インサイドセールスはアウトバウンド営業の一種のため直接的なアプローチを取るのに対し、インバウンド営業はより間接的で長期的な視点に立った戦略といえるでしょう。「イン」という単語が双方に使われているため混同されがちですが、内容は全く違うものといえます。

しかし、これらの手法は相反するものではありません。実際、多くの企業がインバウンド営業とインサイドセールスを組み合わせて活用しています。例えば、インバウンド営業で獲得したリードに対して、インサイドセールスチームがフォローアップを行うといった具合です。

インバウンド営業のメリット

インバウンド営業には、従来の営業手法にはない多くのメリットがあります。以下で、その主なメリットを見ていきましょう。

  1. コンテンツ発信で自然な顧客接点を創出できる
  2. 関心や見込みの高い顧客のアポ獲得につながる
  3. 営業リソースを効率良く活用できる

1コンテンツ発信で自然な顧客接点を創出できる

インバウンド営業の最大の特徴は、有益なコンテンツを通じて顧客との接点を作ることです。ブログやSNS、ウェビナーなどを通じて価値ある情報を発信することで、潜在顧客の興味を引き、自然な形で商談につなげられるでしょう。

この方法は、顧客にとっても押し付けがましくなく、好意的に受け止められやすいという利点があります。

2関心や見込みの高い顧客のアポ獲得につながる

インバウンド営業では、すでに興味を持っている顧客からのアプローチを受けるため、アポイントメントの獲得率が高くなります。これは、従来の営業手法と比べて大きな強みといえるでしょう。

関心の高い顧客とのアポイントは、成約率の向上にもつながる可能性が高いです。実際、invesp社のレポートでは、「インバウンド営業を適切に実行すると、アウトバウンドに比べて見込み顧客のコンバージョン効果が10 倍高くなる」との報告がされており、インバウンド営業が成約率の高い営業手法であることが示されています。

参照元:invesp社「How Effective is Inbound Marketing – Statistics and Trends [Infographic]」

3営業リソースを効率良く活用できる

インバウンド営業では、見込み顧客が自ら関心を示してくるため、営業担当者は効率的にリソースを活用できます。アプローチする顧客を絞り込めるので、無駄な営業活動を減らし、より効果的な商談に時間を割くことができるのです。

さらに、見込み顧客は事前に製品やサービスについて情報を得ているため、より具体的で深い議論が可能になります。これにより、商談の質が向上し、成約率の上昇にもつながる可能性が高まります。

インバウンド営業の手法6種類

ここでは、インバウンド営業の手法を6種類紹介していきます。どれか1つだけを実施するのではなく、複数の手法を組み合わせることがインバウンド営業では重要です。それぞれの特徴を理解し、自社に合うものを積極的に検証していきましょう。

  1. オウンドメディア
  2. SNSマーケティング
  3. プレスリリース
  4. ウェビナー・オンラインイベント
  5. メールマーケティング
  6. 展示会

1.オウンドメディア

ブログ、動画、ホワイトペーパーなど、価値ある情報を発信するのがオウンドメディアです。顧客の課題やニーズに応える質の高いコンテンツを制作し、自社サイトやSNSで発信する、といった方法があげられます。これにより、潜在顧客の目に触れる機会が増加したり、検索エンジンの上位に表示することができれば、アクセスの増加が期待できるでしょう。

さらに、専門性や信頼性をアピールすることで、見込み顧客の獲得やブランドイメージの向上にもつながります。例えば、業界トレンドの分析レポートや、製品の活用事例集などが効果的です。コンテンツの定期的な更新と、SEO対策の実施も重要なポイントとなります。

2.SNSマーケティング

FacebookやX(旧Twitter)、LinkedInなどのSNSの拡散力を活用し、ターゲット層とのつながりを構築することは、今の時代かなり重要です。各プラットフォームの特性を理解し、適切なコンテンツを発信することが鍵になります。

例えば、LinkedInでは業界ニュースや専門的な洞察を共有し、Instagramでは製品の使用シーンを視覚的に訴求することが効果的です。XやYouTubeなどではトレンドを押さえた投稿を実施し、ユーザー認知の獲得を狙いましょう。

3.プレスリリース

新製品や新サービスの発表、重要な業績、業界貢献などをプレスリリースとして配信しましょう。オンラインニュースサイトやメディアに掲載されることで、幅広い層への認知度向上が期待できます。プレスリリースの作成には、ニュース性の高い内容を簡潔かつ魅力的に伝えるスキルが必要です。また、配信先の選定も重要なポイントです。業界専門メディアや地域メディアなど、ターゲットに合わせた配信先を選ぶことで、効果的な情報発信が可能になります。

4.ウェビナー・オンラインイベント

オンラインセミナーを開催し、専門知識の提供や製品デモンストレーションを行うのも効果的です。参加者の情報を獲得できるため、見込み顧客の発掘に直結します。

ウェビナーはテーマ設定が重要で、顧客の課題解決に焦点を当てるのが効果的です。例えば、業界の最新トレンド解説や、自社製品を活用した業務効率化のストーリーなどが好評です。録画したウェビナーは後日オンデマンド配信し、継続的な集客にも活用できます。

ウェビナーに参加している時点で、その内容に興味があることは一定程度保証されるので、参加者をウォームリードとしてリストアップし、フォローアップを行っていくなどの施策も検討できるでしょう。

5.メールマーケティング

定期的にメールマガジンを配信し、顧客との継続的な関係構築を図るのは多くの企業が実践しています。業界動向や自社の最新情報、有益なティップスなどを提供し、受信者に価値を感じてもらうことが目的です。

メールの開封率を上げるためには、魅力的な件名の設定や、パーソナライズされたコンテンツの提供が必要となるでしょう。

また、セグメント別に内容の変えた配信を行うことで、受信者の興味関心に合わせた情報を届けられます。クリック率の高いリンクや、反応の良かったコンテンツを分析し、継続的な改善を行うのもポイントです。

メール開封率の集計や分析ができるツールもあります。以下で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

6.展示会

業界の展示会に出展し、直接顧客と対面する機会を創出するのも重要です。製品やサービスのデモンストレーション、サンプル配布、相談会の実施などを通じて、潜在顧客との接点を増やします。ブースデザインや配布物の工夫で、来場者の注目を集めることで、見込み顧客の創出につながる可能性は高まるでしょう。

また、名刺交換やアンケート収集により、見込み顧客の情報を獲得。展示会後のフォローアップも忘れずに行い、商談につなげていきます。オンラインでの展示会も存在しており、地理的制約を超えた集客も可能です。

インバウンド営業の新規立ち上げ手順

インバウンド営業を新規に立ち上げる際は、下記の手順を踏むことがおすすめです。各ステップを丁寧に進めることで、効果的なインバウンド営業の基盤を構築することができます。

  1. ターゲット企業やキーパーソンの設定
  2. インバウンド営業手法の選定と設計
  3. 顧客のニーズや課題に合わせたコンテンツの作成
  4. 問い合わせ・資料請求につながる導線設計
  5. 問い合わせへの対応やフォローアップを決定する

1.ターゲット企業やキーパーソンの設定

まず、自社製品やサービスに最適な顧客像を明確にします。業種、企業規模、地域などの基本情報に加え、抱える課題や価値観も考慮しましょう。例えば、「従業員100人以上の製造業の企業で、生産性向上に課題を抱える企業」といった具合です。

次に、その企業内のキーパーソンを特定しましょう。購買決定権を持つ役職や、影響力のある部署を把握します。他にもLinkedIn等のビジネスSNSを活用し、具体的な人物をリストアップするのも良いでしょう。

この過程で、業界団体や専門メディアなども調査し、影響力のある人物も候補に入れると良いでしょう。ターゲットが明確になれば、その後の戦略立案が容易になります。

2.インバウンド営業手法の選定と設計

ターゲットの特性に合わせた効果的な手法を選びます。例えば、ITに詳しい若手経営者がターゲットなら、若者利用率の高いSNSやブログを中心に据えるのが有効です。一方、製造業の中堅幹部がターゲットなら、従来の情報収集でなじみ深い、専門誌への寄稿や展示会出展が効果的でしょう。

そして、選んだ手法ごとに、具体的な実施計画を立てます。SNSなら投稿頻度やコンテンツの種類、展示会なら出展ブースの設計や配布物の準備などを決定しましょう。複数の手法を組み合わせ、相乗効果を狙うのも重要です。展示会で収集した見込み顧客にメールマガジンを配信し、継続的な情報提供を行うなどが考えられます。

3.顧客のニーズや課題に合わせたコンテンツの作成

ターゲットの抱える課題や関心事に焦点を当てたコンテンツを制作します。例えば、生産性向上が課題の製造業の担当者がターゲットなら、「IoT活用による工場の効率化事例」といったテーマが適切です。コンテンツ形式も、ブログ記事、ホワイトペーパー、画像、動画など、伝えたい内容に最適な形式を選びます。専門性と信頼性を示すため、業界データや自社の実績を盛り込むのも効果的です。

4.問い合わせ・資料請求につながる導線設計

コンテンツを閲覧した人が、スムーズに次のアクションを取れるような導線を設計しましょう。例えば、ブログ記事の末尾に、関連する無料ガイドのダウンロードボタンを配置するなどがあげられるでしょう。これにより、読者の興味を維持しつつ、メールアドレスの獲得も可能です。

また、サイト内に適切なCTA(Call To Action)を配置します。「資料請求」「お問い合わせ」などのボタンを目立つ位置に設置し、クリックを促します。フォームは必要最小限の項目に抑え、入力のハードルを下げるのも重要です。

さらに、最近ではチャットボットを導入することで、24時間対応可能な問い合わせ窓口を設ける試みも普及しています。

5.問い合わせへの対応やフォローアップを決定する

問い合わせ対応のルールを明確化します。返信までの目標時間(例:2時間以内)や、問い合わせ内容に応じた対応フローを決定します。

例えば、製品詳細の質問は営業部門が、技術的な質問は開発部門が担当するといった個別に対応したフォローアップを行うことがあげられます。

また、資料請求者へのフォローアップ方法の策定も必要です。

例えば、資料送付後3日以内に電話でフォロー、1週間後にメールで追加情報を送信、といったスケジュールを組みます。さらに、問い合わせ内容や対応履歴を一元管理するCRMツールの導入も検討すると良いでしょう。これにより、チーム全体で情報共有を図ることができるため、一貫性のある対応が可能になるのです。

CRMについては、下記記事で詳細に解説していますので、ご参照ください。

インバウンド営業を成功させるためのポイント

インバウンド営業を成功に導くためには、以下のポイントに注意を払う必要があります。

  1. 進捗管理や数値のモニタリング体制を整備する
  2. 顧客課題を解決するオリジナルコンテンツの発信
  3. ナーチャリングの体制作りも同時に進める

1.進捗管理や数値のモニタリング体制を整備する

効果測定と継続的な改善のため、KPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングします。ウェブサイトのトラフィック、リード獲得数、コンバージョン率などが代表的な指標です。

例えば、Google Analyticsを活用した、サイトへの流入経路や滞在時間の分析や、CRMツールの導入による、リードの質や商談進捗の追跡などの実践が挙げられるでしょう。

週次や月次でのレポーティング体制を構築し、チーム全体で結果を共有します。数値が目標に届かない場合は、原因を分析し、コンテンツの改善や新たな施策の導入を検討するといった体制を整え、PDCAサイクルを回すことで、インバウンド営業の効果を最大化することができるでしょう。

2.顧客課題を解決するオリジナルコンテンツの発信

顧客の抱える課題に焦点を当てた、独自性のあるコンテンツを作成し発信します。

例えば、自社の専門知識を生かした業界レポートや、顧客の成功事例を詳細に分析したケーススタディーなどが効果的です。その際、ウェブに上がっている情報の羅列ではなく、オリジナルコンテンツを作成することが最も重要です。

これらのコンテンツは、ブログ記事やホワイトペーパー、動画など多様な形式で展開しましょう。特に、解説画像やショート動画は、SNSでの拡散性が高く、新規顧客の獲得に有効です。

また、定期的なウェビナーの開催も検討しましょう。例えば、「業界トレンド解説」や「製品活用セミナー」などをテーマに、双方向のコミュニケーションを図ります。ウェビナーは登壇者が人間である以上、完全なコピーは存在せず、オリジナル性が担保されているため、顧客のみならず検索エンジンに有用な情報だと認識されることが多いです。これらの取り組みにより、企業の専門性と信頼性の向上につながります。

3.ナーチャリングの体制作りも同時に進める

獲得したリードを育成し、商談や成約につなげるナーチャリング体制の構築も重要です。まず、リードの段階(認知、興味、検討、購買意図)に応じたコンテンツマップを作成しましょう。例えば、認知段階では業界トレンド記事、検討段階では製品比較表といった具合です。

次に、リードの行動に応じて適切なコンテンツを配信するワークフローを設計しましょう

例えば、ホワイトペーパーをダウンロードしたリードには、関連する事例集を送信する、といった具合です。また、購買意図のリードには、アウトバウンド営業担当者が直接アプローチする体制を整えることも徹底しましょう。

ナーチャリングについては、下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。

まとめ

インバウンド営業の成功には、自社の商材や顧客特性に合わせた戦略が不可欠です。ただし、目的もなくはやりの発信方法やコンテンツ作成を行っていたのでは効果は出ません。顧客の興味や課題に沿ったコンテンツを作成・提供することがリードの創出・育成につながります。

また、インバウンド営業では、生み出したリードの管理が重要です。自社に散在する顧客データを統合し、正確な顧客マスターデータを持つことで、顧客へのアプローチも効率的なものとなります。

Sansanが提供する「Sansan Data Hub」では、AI技術による顧客データの正規化・統合が可能です。外部システムと連携させることで、業務効率を改善し、データドリブンなマーケティング活動を実現します。詳しくは次の資料をご覧ください。

インバウンド営業で獲得したリードを管理し、適切なアプローチを実現するためにも、ぜひご検討ください。

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営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。