• 営業戦略

セールスイネーブルメントとは?その目的や営業変革のための施策・事例を紹介

セールスイネーブルメントとは?その目的や営業変革のための施策・事例を紹介

セールスイネーブルメントは、現代の営業組織にとって不可欠な手法です。本記事では、その概要から具体的な施策、実際の導入事例まで包括的に解説しています。

営業ナレッジの共有、デジタルツールの活用、評価制度の改革など、効果的な営業活動実現のヒントが満載です。営業力強化を目指す経営者や営業部門の方々にとって、貴重な情報源となるでしょう。

セールスイネーブルメントとは

セールスイネーブルメントとは、営業組織の生産性と効果を最大化するための包括的なアプローチです。単なる営業スキル向上だけでなく、組織全体で営業活動を支援し最適化する戦略的な取り組みを指します。

主に営業ナレッジの共有、教育プログラムの最適化、セールスコンテンツの作成、データ分析、情報管理などの領域をカバーしており、デジタルツールも活用しながら、継続的な営業力強化と顧客価値の向上の実現を目指すものです。

セールスイネーブルメントの対象範囲

セールスイネーブルメントの対象範囲は広範囲に及び、主に5つの分野をカバーしています。

  • 営業ナレッジ領域
  • 教育領域
  • コンテンツ領域
  • 分析領域
  • 情報管理領域

営業ナレッジ

営業ナレッジの分野では、成功事例や効果的な営業手法を組織全体で共有し、ナレッジ化を目指します。例えば、商談やトークスクリプトの事例をデータベース化し、誰もがアクセスできる環境を整備することで、個々の営業担当者の経験や気づきを組織の財産にしていくことなどがあげられるでしょう。これにより、営業担当者のスキルを底上げし、業務の標準化を目指すことができます。

教育領域

教育領域では、営業スキルの向上を目的とした学習プログラムの最適化と効率化を目指すものです。オンデマンド学習プラットフォームや個々の営業担当者のスキルレベルに応じたトレーニングプランの提供によって、営業担当者は自分のペースで、必要なときに必要な知識の習得が可能になります。

営業ナレッジと同様に、営業担当者の能力の底上げを目指す領域です。

コンテンツ領域

コンテンツ領域では、営業活動を支援する各種資料や提案書、プレゼンテーション資料などの作成と管理が含まれます。これらのコンテンツを常に最新の情報で更新し、顧客のニーズに合わせてカスタマイズすることで成約率の向上を目指すものです。

分析領域

分析領域では、営業活動のデータを収集し、そこから有用なインサイトを導き出すことや営業プロセスの改善点を洗い出すことに焦点を当てます。これにより、より効率的かつ効果的な営業活動の実現が可能になるのです。これは単にその場の営業活動がうまくいく、ということだけでなく、抜本的な組織運営の強化にもつながります。

情報管理領域

情報管理の領域では、顧客情報や商談履歴などを一元管理し、組織全体で共有できる仕組みづくりを含みます。これにより、部門間の連携が促進され、顧客に対してより一貫性のあるアプローチが可能になるでしょう。また、管理工数の手間の削減につながり、より効率的な営業活動が実現することができます。

営業パーソンの育成・営業企画との違い

セールスイネーブルメントは、従来の営業パーソン育成や営業企画とは異なるアプローチを取ります。最も大きな違いは、継続的なサポート体制です。従来の営業パーソン育成が、主に研修やOJTによるスキルアップのみに焦点を当てていたのに対し、セールスイネーブルメントでは、日々の営業活動の中で常にサポートを受けられる環境を整備します。

また、クラウドツールを駆使したデータドリブンなアプローチも、セールスイネーブルメントの特徴の一つです。営業活動のあらゆる側面をデータ化し、分析することで、より客観的かつ効果的な改善策を見いだすことができます。これは、経験や勘に頼りがちだった従来の営業手法とは一線を画すものといえるでしょう。

さらに、セールスイネーブルメントでは、営業部門だけでなく、マーケティング、カスタマーサポート、商品開発など、さまざまな部門との連携を重視します。これにより、顧客に対してより総合的なソリューションを提供することが可能です。

セールスイネーブルメントが注目される背景

セールスイネーブルメントの世界市場規模について、株式会社グローバルインフォメーションが2024年に発表したレポートでは「セールスイネーブルメントプラットフォームの市場規模は、2024年に35億米ドルと推定され、2029年までに87億9,000万米ドルに達する」と予測されています。

この予測が示すように、セールスイネーブルメント関連技術への需要は今後も急速に拡大していく見込みです。これほどまでにセールスイネーブルメントが注目される背景には、いくつかの重要な要因があります。

  • 商材の多様化と顧客ニーズの複雑化
  • デジタル化に伴う営業DXの拡大
  • 営業組織の生産性向上

商材の多様化と顧客ニーズの複雑化

近年ではインターネットやSNS等の普及によって、新規参入が容易になり、市場には多くのサービスや製品があふれるようになりました。それだけでなく、VUCAの時代といわれる現代では企業を取り巻く環境も複雑化しており、企業のニーズや課題もひとくちにはいえないほど多様化しています。

そういった背景から顧客は単に製品やサービスを購入するだけでなく、自社の課題を解決するためのカスタマイズされたソリューションを求めるようになってきています。このようなカスタマイズ要求の増加は、営業担当者に対して、より高度な提案力と問題解決能力を要求していることを表しているといえるでしょう。

さらに、各業界特有の課題に対する深い理解と、それに基づいたソリューション提案能力も必要です。これらの要因により、従来の営業手法や教育方法では十分に顧客の要望に対応できなくなってきており、より包括的かつ効果的なアプローチとしてセールスイネーブルメントが重要視されています。

デジタル化に伴う営業DXの拡大

昨今、営業活動に大きな変革をもたらしているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波です。特に、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を契機に、インサイドセールスが急速に普及しました。対面でのコミュニケーションに頼っていた従来の営業スタイルから、オンラインツールを駆使した新しい営業手法への移行が求められています。

AIの活用も、営業DXの重要な要素となっています。顧客データの分析や予測モデルの構築により、より精度の高い顧客インサイトを獲得することが可能になりました。これにより、営業担当者は顧客のニーズをより正確に把握し、適切なタイミングで最適なアプローチを行うことができるようになっています。

さらに、さまざまなデジタルツールの導入により、営業プロセス全体の効率化が進んでいます。例えば、顧客関係管理(SFA/CRM)システムの高度化や、営業支援ツールの導入により、情報の一元管理や商談進捗の可視化が容易になりました。

これらのツールを効果的に活用するためには、組織全体でのデジタルリテラシーの向上が不可欠であり、そのための体系的な教育と支援体制の構築が求められています。

より詳しい内容を下記の記事で紹介しているので、ご参照ください。

営業組織の生産性向上

企業間の競争が激化する中、営業組織の生産性向上は多くの企業にとって喫緊の課題となっています。セールスイネーブルメントは、この課題に対する効果的なソリューションとして注目されているのです。

具体的には、営業サイクルの短縮が重要な目標の一つとなっています。顧客との初回接触から成約までの期間を短縮することで、より多くの商談を効率的に進めることができます。これには、営業プロセスの最適化や、適切な営業ツールの活用が不可欠です。

また、成約率の向上も重要な課題です。単に商談数を増やすだけでなく、それぞれの商談の質を高め、成約につながる確率を上げることが求められています。そのためには、顧客のニーズを的確に把握し、適切なソリューションを提案する能力が必要です。

さらに、顧客満足度の改善も生産性向上の重要な要素です。顧客満足度は、顧客との長期的な関係構築や、クロスセル、アップセルの機会につながります。

これらの目標を達成するためには、営業担当者個人のスキルアップだけでなく、組織全体での取り組みが必要不可欠です。

セールスイネーブルメントが解決する課題

セールスイネーブルメントは、現代の営業組織が直面するさまざまな課題に対して、効果的なソリューションです。以下に、主要な課題とその解決策を詳しく見ていきましょう。

  1. 個人の経験に依存した営業ノウハウの属人化
  2. 急速に変化する顧客ニーズへの対応力不足
  3. 営業準備業務の肥大化によるリソース不足
  4. 行動数重視の営業スタイルによる営業パーソンへの負担
  5. 社内連携不足によるリードの見落とし

個人の経験に依存した営業ノウハウの属人化

多くの企業で、営業ノウハウが個々の営業担当者の経験に大きく依存しており、組織全体での共有が課題です。この課題に対し、セールスイネーブルメントでは営業ナレッジの共有による営業成績の底上げ、営業能力の標準化を重視します。

例えば、営業成績の高い営業担当者のトークスクリプトを細分化・場合分けしてデータベースに保存し、それらを組み合わせて商材や他の営業担当者の特性に合ったものを作成することが可能になる点がメリットとして挙げられるでしょう。また、商談についても、クロージングのタイミングや質問のリストアップによって、成果につながる商談を体系的に実現することも可能になります。

急速に変化する顧客ニーズへの対応力不足

ビジネス環境の変化に伴った、急速な顧客のニーズの変化に対して、企業も対応力を高めていかなければいけません。セールスイネーブルメントでは、従来のヒアリングだけでなく、顧客の自社サービス利用状況のリアルタイムモニタリングや顧客企業への売上・生産貢献度などの数値化などを通じて、顧客の活動を正確に捉え、より受容されやすい提案を実施することが可能です。また、商品・サービスについて自動でのフィードバック要求や使用時間帯や方法などのデータの収集により、さらに的確にニーズに対応することも可能です。

営業準備業務の肥大化によるリソース不足

営業活動の準備に多くの時間を取られ、本来フォーカスすべき業務に十分なリソースを割けないという企業は少なくありません。この問題に対し、セールスイネーブルメントでは営業支援ツールの導入や整備によって、営業リソースの効率化をおこないます。

例えば、プレゼンテーション資料のテンプレート化、AIツールを活用した提案スライド作成の簡易化により、商談準備の効率化などが挙げられるでしょう。また、顧客情報のデータベース化などを通じ、リサーチの工数を削減できるのも大きなメリットです。

行動数重視の営業スタイルによる営業パーソンへの負担

多くの企業で、営業活動の評価が商談数や行動KPIに基づいて行われており、営業担当者に過度の負担をかけています。セールスイネーブルメントでは、従来の行動数基準のKPIではなく、質を重視した新たなKPIの設定を目指します。質を重視したKPIの設定によって、確度の低い商談がそぎ落とされ、確度の高い商談に注力することができるようになるのです。

例えば、インテントデータを数値化し、単純な行動数ではなく、セールスインテントの高いところにアプローチした回数をKPIに設定することや、クロスセル・アップセル率を算出することで、効果的な行動や関係構築ができているか計ることができます。

社内連携不足によるリードの見落とし

部門間の連携不足により、有望な商談機会(リード)を見逃してしまうケースが少なくありません。この課題に対し、セールスイネーブルメントでは部門を横断したSFA/CRMの導入により、見込みの高いリードを見落とさないような情報共有を徹底します。これに合わせて、部門間でSFA/CRMへのデータ入力の徹底や活用フローのすり合わせなどを行うことで、課題解決に大きく前進します。

セールスイネーブルメントの施策内容

セールスイネーブルメントを実践するための具体的な施策には、以下のようなものがあります。

  • セールスコンテンツの作成
  • SaaSの活用
  • MAの活用
  • SFA/CRMの活用

セールスコンテンツの作成

効果的なセールスコンテンツは、営業活動の成功に大きく寄与します。セールスコンテンツは下記のものです。

  • カタログ・商品説明書
  • ホワイトペーパー
  • ステップメール
  • 営業提案書
  • オウンドメディア
  • ウェビナー

通常の営業に加え、適宜セールスコンテンツを追加することで、成約率や顧客満足度の向上が期待できます。

また、オンライン上でのセールスコンテンツの展開は、ブランドイメージの担保や質の高いリードの獲得にもつながる施策です。自社の商材やサービスに合わせて、適切なセールスコンテンツを選ぶことが、営業成績の向上に寄与します。

上記セールスコンテンツについては、以下の記事で詳しく解説しているので、ご参照ください。

SaaSの活用|ノウハウ共有の効率化

セールスイネーブルメントにおいて、営業ノウハウの共有は、営業成果を高めるための重要な手段です。そのために、さまざまなSaaSツールが活用されています。

まず、社内のデータやナレッジを蓄積し、検索可能にするツールなどが挙げられるでしょう。これにより、営業担当者は必要な情報に素早くアクセスでき、効率的に業務を進められます。

次に、セミナーや商談の録画、ミーティングや研修の動画を簡単にアクセスできる形で管理するSaaSも有効です。これらのツールを使うことで、ベストプラクティスや成功事例を組織全体で共有しやすくなります。

さらに、案件のワークフローを可視化し、現在の状況や担当者を明確にするツールも活用されています。これにより、営業プロセスの透明性が高まり、チーム全体での連携がスムーズになるでしょう。

これらの他にも、営業予測ツール、資料作成ツールなど、さまざまな機能を持つSaaSが存在します。また、業界や業種に特化したSaaSも多数あるので、自社に最適なツールを選定してみるのがおすすめです。

自社に最適なツールを選ぶ際は、現在の課題や目標、予算、既存のシステムとの連携性などを考慮することが大切です。また、導入後の運用サポートがどの程度あるのかも確認しておきましょう。

MAの活用|ホットリードの質を改善

MAシナリオの一例を表した図

マーケティングオートメーション(MA)は、質の高いリードを確保する上で重要です。パーソナライズされたメール・フォーム営業などの施策により、顧客エンゲージメントを高めることで、効率的な営業リソースの配分が可能になります。これらの取り組みにより、より多くの質の高いリードを生成し、成約率の向上につなげることができます。

SFA/CRMの活用|商談のパイプライン管理や課題を分析

SFAとCRAの活用によるパイプライン管理と課題分析の図解

営業支援システム(SFA)や顧客関係管理(CRM)システムは、先述のMAより後のレイヤーで活用されるツールであり、営業プロセスの可視化と最適化に重要です。予測分析による売上予測の精度向上、カスタマージャーニーマッピング、商談ステージごとの成功要因分析などを通じて、より効果的な営業アプローチを設計し、全体的な成約率を向上させることができます。

これにより、ハイレイヤーでの分析による営業成績の向上や適切なリソース配分が可能となるのです。

徹底した数値管理による評価制度の統一化

セールスイネーブルメントにおいて、適切な評価制度の構築は非常に重要です。従来の営業評価では、売上や予算達成率といった結果のみに焦点を当てがちでしたが、より多面的な評価指標の設定が可能になります。

例えば、SFA/CRMツールの活用によって、顧客満足度、リピート率、クロスセル・アップセルの成功率など、長期的な顧客関係構築に関連する指標や、チーム貢献度や知識共有への積極性など、組織全体の成長に寄与する行動も評価の対象とすることができます。

これらの評価制度や取り組みを、SaaSツールを活用して組織全体で共有・周知することで、透明性の高い評価システムが構築され、公平性が確保されるとともに、組織全体の目標達成に向けた一体感が醸成されるのです。

Sansanを活用して営業組織の生産性向上を実現

Sansanは、名刺や企業情報、営業履歴を一元管理して全社で共有できるようにすることで、売上拡大とコスト削減を同時に実現する営業DXサービスです。

案件管理機能によって、組織は案件の進捗状況や取引先、担当者などの重要情報を一元的に把握することができます。これにより、チーム全体の動きや個々のメンバーの活動状況が明確になり、マネジメント効率の向上が期待できるでしょう。

また、Sansanの「コンタクト機能」を活用することで、成果を上げている営業担当者の行動パターンを分析できます。例えば、顧客との接点回数やタイミング、商談での対話内容、重要な情報のメモの方法、次のアクションの設定など、成功につながる具体的な行動指針を得ることも可能です。これにより、チーム全体のスキル向上や営業戦略の改善を実現でき組織全体の営業パフォーマンスの向上につながります。

まとめ

セールスイネーブルメントは、競争が激化する現代のビジネス環境において、営業組織の競争力を高める重要な戦略です。

しかし、セールスイネーブルメントは、一朝一夕には実現できません。システムの導入だけではなく、継続的な改善サイクルの構築が重要です。PDCAサイクルを回し、常に効果を測定し、必要に応じて戦略や施策を調整していくことが求められます。

本記事で紹介したさまざまな施策を参考に、自社の状況に合わせた最適なセールスイネーブルメントの体制を構築し、効果的な営業活動の実現を目指しましょう。

3分でわかる Sansan営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。

3分でわかる Sansan

営業DXサービス「Sansan」について簡潔にご説明した資料です。

営業DX Handbook 編集部

ライター

営業DX Handbook 編集部

Sansanが運営する「営業DX Handbook」の編集部です。DX推進や営業戦略、マーケティングノウハウなど、営業・マーケティング課題の解決に導く情報をお届けします。